02:隊士と休日



あの出来事があってから。
なぜか不死川さんも粂野さんと一緒に薬園に来てくるようになった。
最初こそ、文句を言っていた彼だけど、仕事の覚えは早かった。
基本的に私はこの薬園につきっきりだけど、二人は鬼殺隊の隊士だから任務とか修行とかの合間に手伝いにやってきてくれる。本当にありがたい。
のだけど、休みの日まで二人で朝から現れたので、少々困ってしまった。

「あの、粂野さん、不死川さん。今日は非番じゃないんですか?」

「?そうだけどどうしたの?」

「とてもありがたいですが、休みの日までここに来なくてもいいんですよ。義務じゃないんですし」

「お前、俺らがくるのが気にくわねェのかァ??」

また今にもかみついてきそうな不死川さん。
怖いけど最近は少し慣れてきた。・・・・少しだけど。

「二人がきてくれるはとてもありがたいんですけど、そのちょっと心配です」

「え?なにが?」

「こんなとこ来てて、ちゃんと休めてるのかなとか」

「お前と違って俺らは体力あンだから気にすんな」

「体力の問題もありますけど、その、ほかの予定とかないのかなとか」

「特にないから大丈夫だよ」

不死川さんは作業の手をとめず、粂野さんは私の顔をみて笑顔で返事をする。

「大体俺は名前のほうが心配だよ」

「え、私・・・ですか?」

「この薬園を一人でやっている限り、年中休みなんかないだろう?そっちのほうが心配」

粂野さんは笑ってそういうけど。
正直、命を懸けて戦いに行っている二人に比べ私の仕事なんて瑣末な事だ。
土いじりは好きだし。体力ないのがたまに傷だけど。

「友達いないんじゃねぇのかァ?」

「・・・・・」

ほぼ図星だったので思わず、下を向いて黙ってしまった。
不死川さんはそんな私をみてチッと舌打ちをした。

「いやだな、実弥。俺と実弥は名前の友達だろ?」

粂野さんがまた笑顔でそんなことをさらりと言ってのけた。
粂野さんは、なかなか恥ずかしいことでもさらりといってしまうのでこちらが恥ずかしくなってしまう。

「え?」

「え?むしろ違った?」

「いえ、私には恐れ多いというか・・」

「はァ!?いつ俺がこいつと友達になったんだァ」

ですよね。不死川さんは正常な反応だと思います。
そんな不死川さんの抗議むき出しの顔も笑顔で対応する粂野さん。

「なんだよ。実弥は照れてるの?」

不死川さんの青筋をみながらそんなこと言ってのける粂野さんはやはり天使なのかもしれない。
今日、私に友達が二人できたのだった。

ーーーーー

今日は朝から二人が手伝ってくれたので昼ごろにはすべての作業が終わってしまった。
なんてうれしいことだろう。
るんるん気分で後片付けしていると粂野さんに声をかけられた。

「さて、作業も一通り終わったし。俺達は食堂に行くけど名前は?」

「私はご飯持ってきているから大丈夫です。お二人で行ってきてください!」

「お前、ちゃんと飯食べてんのかァ?」

心配してくれてるんだか、馬鹿にしているのか、不死川さんが笑う。

「自分でご飯作ってるから大丈夫です!」

ふふんと笑って返すと、意外って目で見られた。ひどい。

「料理できるんだなァ・・・」

「え、私、今すごく馬鹿にされてないですか?」

あ、そうだ!私は昨日カナエ様にもらったおはぎを思い出した。
荷物を取り出し、竹かごで作った箱を開けて二人におはぎを向けた。

「もらいものだけど、よかったらどうぞ」

二人に差し出すと、不死川さんはなぜか目が輝いていて、粂野さんはそんな不死川さんみて笑っていた。

「よかったね、実弥。名前、おはぎは実弥の大好物なんだよ」

「余計なこというなァ、匡近」

といいつつ、おはぎに一番に手を伸ばし食べる不死川さん。

「ん。うめェな」

食べ終わった指先までなめながら、不死川さんがそういってくれたので私は肩をなでおろした。

「よかったです。おはぎさんにけなされたらどうしようかと思いましたー」

「おはぎさんって?実弥のこと?」

あ、間違えた―。

粂野さんが笑って、不死川さんが青筋たてた。
私また余計なこと言ったかも。
怒られる前にもう一つのおはぎを手に取ると、不死川さんの口に詰め込んだ。
目は笑ってないけど、もぐもぐとおはぎは食べてる不死川さん。
その様子をみて残りのおはぎを素早く粂野さんに渡すと私はじゃあ、また!と一目散に逃げかえった。

危なかった。私の命が。


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