06:柱とさみしさ
「名前。俺、柱になることになった」
「は?」
急な話に変な声でた。
粂野さんといい、不死川さんといい、急に私を驚かすの会でもやってるの。
またいつもの土いじりをしていると不意に不死川さんに言われた台詞。
しかもそんな簡単に俺、買い物行ってくるわ、な感じでいうことじゃなくない?
粂野さんが亡くなってしばらく経った。
不死川さんは不定期だけど、時々は薬園にきて手伝いをしてくれている。
粂野さんがいなくなって喪失感が消えないわけではないけど、不死川さんだけでも来てくれるのは本当にうれしかった。
ばっと顔を上げれば、こちらをうかがう様子の不死川さん。
「えぇ・・。そうなんですね・・・」
顔が微妙に引きつった。
なんていうべきなんだろうか。
言葉に詰まる。
柱になるということは、本当に優秀な選ばれた者ってことだから、ここは素直におめでとうなんだろうか。
正直言いたくない。
重い宿命を負うことにおめでとう―なんて。
「複雑な顔してんなァ」
わかっていたように不死川さんはふつふつと笑った。
「またここに来る時間が減るだろうなァ」
「それは仕方ないですよ。もともと私を手伝ってくれてること自体が奇跡ですし」
奇跡って、と不死川さんは鼻で笑う。
彼はよく私のことを鼻で笑うが、それも最近は嫌じゃなくなった。
「また暇で暇でどうしようもなくなった、って時にでも立ち寄ってくださいね」
「・・・そんなこと言わなくても、顔見に来る」
行き倒れてないか心配だしなァ。
縁起でもないことを不死川さんはさらりと言う。
その可能性も否定できない自分もいる。
正直さみしい気持ちが大きかった。
最近、彼の近くにいると大きくなる心臓の音は、多分聞き間違いじゃない。
もっと一緒にいたいなぁなんて不謹慎なこと考えている最中の柱の決定だった。
「さみしいかァ」
横に座っていた不死川さんが意地悪な顔で聞いてくる。
ああ、こうやって気軽に話すこともなくなるのか―。
一気に寂しさが込み上げてくる。
「・・・はい、さみしいです。一緒にいてほしい」
じっと顔を見つめてそう返せば、彼は真顔になってしまった。
あ、私なに言ってんの。
色の見えない瞳に見つめられ、少し正気になって血の気が引いた。
変なやつって思われたらどうしよう。
「不死川さんあの、」
違うんです―と、声かけようとしたら、不死川さんは言葉を遮るように私の頬に手を添える。
「・・・・嫌だったら、全力で押し返せよォ」
近づいてくる不死川さんの顔と、添えられた手が顔を引き寄せるのを感じて。
あ、口づけされたって気づいたのは、彼がすっと顔を離してまた視線が絡んだときだった。
顔から火が出るって、こういうことなんだ。
真面目に見つめてくる不死川さんの目を見ていられなくて、私は視線を伏せた。
MONOMO