「君たちに事件、か」
アルフォンスの連絡を受けてロイたちはリゼンブールへ来ていた。
「あたしよりウィンリィの方がショックを受けている。早く犯人を捕まえておくれ」
そう言うが、ピナコだって相当ショックを受けている。血にまみれた写真の中の人物は、ピナコの息子夫婦でもあるのだから。……犯人は、写真をどうやって手に入れたのか。何故こんなことをしたのか。心当たりのないロックベル家は混乱していた。
両親を侮辱され、ショックで沈んでいるウィンリィにはホークアイが付き添っている。ふたりは女性同士だし、以前会ったことがあるから少し落ち着くだろう。
「全力を尽くします。今部下たちが捜査していますので」
「あの……大佐。僕たちの家にあったのは………」
アルフォンスの言葉にロイは眉を少し寄せながら話す。
「君たちの『母親』ではない。それは断言しよう」
「そうですか……」
あそこにあった人物の、あの髪は。あの手は。あの足は。……欠損している肉体を除けば、ほぼ自分たちの母親、トリシャにそっくりだったのだ。あの栗色の髪、肩より下で結ばれた髪型、少し色白の手足。くすんではいたが服装も似ていた。
トリシャが亡くなってから十年。もう肉体は腐敗し骨だけのはずだが、あそこまで似てたから、まさか、と思ったのだ。
「それで。その写真のことだが……」
ロイはソレの傍に置いてあったという写真の話題を振った。アルフォンスも心当たりがあるようだから、今回の事件に無関係なはずがない。
「前に兄さんに、視察を命令したことありましたよね?その時に会った子なんです」
そうか、あの時の。ロイは当時のエドワードの報告を思い出す。
アルフォンスもまた、手に持っている写真を見つめながら過去の出来事を思い出していた。そこには、一人の少女が映っている。この子とは前に、大佐の命令だからと訪れた土地で出会ったのだ。でも、この子は……。
それ以上話を続けなかったアルフォンスに、ロイは何も聞かなかった。自分は当時の報告書を貰っているし、その子がどうなったのかも知っている。その写真が、この事件に関わるのがどういうことか大体の察しもついた。
「このことは、兄さんから直接聞いた方が……」
「わかった、そうしよう」
実際、深く関わったのはエドワードの方だ。視察を命令したのはロイで、その命令に従うことになったエドワードの方が行動範囲は大きかったのだから。
「……鋼のは大丈夫なのかね?」
いつも憎たらしい生意気な子供がいないこの部屋は静かだ。気を失ったことは聞いているが、気になったロイは声をかけた。
「まだ目覚めていなくて……」
エドワードにとって母親と「あの日」の『罪』という意識は大きい。それは消えるはずもない傷となって、今もエドワードの心に存在している。それはきっと今後も変わらない。
今回、アレが母親に似ているということ、腐敗臭から人に晒さないように隠してきた傷は一瞬で掘り返り、だから意識を失った。
しかし一緒にいたアルフォンスだって相当ショックだった。自分に腐敗臭は分からないが、記憶には残っている。『あの日』を思い出したのは自分もだ。しかし、どんなに辛くても自分は気を失える身体ではないことが悔しかった。
ロイとて「イシュヴァール戦争」という癒えない傷がある。兄弟の苦悩は分からないでもないが、それは彼らが自分で乗り越えていくものだ。あまり口出しするものではないだろう。
「しかし鋼のに確認したいこともあるのでね。…部屋に入っても?」
いいですよ、とアルフォンスが頷くと、ロイはエドワードがいる部屋へ入っていった。