小さな手
赤髪の少年に会った日から数日が過ぎていた。
薄暗い空の中、●●●はいつものように師のところからの帰り道を急いでいた。
今日は家で何か作ろうとスーパーで食品を買った。
鍋の材料と砂肝だ。
●●●ももうすぐ成人だし、
砂肝食べながら少しお酒でも飲もうかなと考えていた。
いつものように建物の角を曲がると明るい街灯の下に見覚えのある赤髪の少年が座っていた。
少年は●●●に気がつくと嬉しそうな顔になった。
少年の手には大きめの紙袋。
前会ったときよりもちゃんと厚着をしている。
「こんばんは、君このあいだの……」
●●●が近づいて行くと赤髪の少年は持っていた紙袋を●●●に差し出した。
「……これ……」
紙袋の中には数日前●●●が少年に巻き付けたマントが綺麗にたたまれて入っていた。
この少年は自分にマントを返すためにこんな寒い中待ってくれたのだろう。
「寒いのにわざわざありがとう」
そう言うと少年は少し頬を染めてニコと笑った。
クマがあっても笑うと可愛い。
「今日お家の人は?」
「…………」
また抜け出してきたのだろうか。
「もう暗くなってるし、お家まで送るよ」
「……もうすぐ来る…」
「じゃあ座って待ってようか」
数日前のように街灯の下に2人で座る。
あの日は2人で美味しい砂肝を食べたっけ…
今日はナマの砂肝しかないな。
「……我愛羅」
「…え?」
「……ボクの名前……」
少年は頬を染めてもじもじとしながら名乗ってくれた。
「我愛羅くんね!私は●●●です」
●●●は我愛羅に握手を求めるように手を差し出す。
冷たくて小さな手がそっとそれに応じてくれた。
我愛羅が●●●の手を離さないので
●●●はそのまま冷たい手を両手で包む。
「こんなに冷たくなるまで待たせてごめんね」
我愛羅は頬を赤く染めて首を振った。
「……こんばんは」
暗闇から声が聞こえて振り返る。
そこには先日、我愛羅を迎えにきた男性が立っていた。
「あ、こんばんは、我愛羅くんお迎えだよ」
「……夜叉丸」
我愛羅に夜叉丸と呼ばれた男性は●●●を見ると軽く頭を下げた。
「先日はマントを貸して頂いたようで、どうもすみません」
「…いえいえ、我愛羅くんが風邪引かなくてよかったです」
●●●と我愛羅が立ち上がる。
夜叉丸は我愛羅と●●●が手を繋いでいるのを見てすこし驚いた顔をした。
「じゃあ、私も帰ろうかな」
●●●はそう言って我愛羅の手を離した。
「お待ちください」
夜叉丸は●●●を呼び止めた。
「いつも、お帰りはこの時間ですか?」
「いえ、いつもばらばらです」
「そうですか……」
「あの………なにか?」
夜叉丸は我愛羅を一瞥してから再び●●●を見る。
「我愛羅様があなたに会うと聞かなくて……」
頬を染めた我愛羅は夜叉丸の足に隠れながら●●●の様子を伺う。
「あの、それはマントの為に?マントはもう返してもらいました」
「それとは別に、あなたと話がしたいと」
●●●が我愛羅を見る。
やっぱり頬を染めて足に隠れている。
「おヒマな時で結構ですので一度お願いできませんか……?」
「では明日のお昼間、近くの公園で……どう?我愛羅くん」
我愛羅はぱっと笑顔になった。
じゃあ約束ね、と我愛羅に笑いかけて手を振ると我愛羅も手を振り返してくれた。
「では、今度こそ失礼します」
そう言う●●●に夜叉丸は頭を下げた。