平手打ち
次の日
我愛羅は昼前から●●●を待って公園にいた。
クマを抱いてブランコに座る。
公園では同い年くらいの少年たちが楽しそうに遊んでいた。
だが少年たちは我愛羅を見ると、悲鳴をあげながら逃げて行く。
1人にしないで、と我愛羅は砂で1人の少年の足を潰してしまった。
「我愛羅くん!」
●●●がその現場に駆けつける。
状況を理解するため周りを見渡した。
我愛羅はなんだか震えているようし、
我愛羅からのびる砂が少年の足を掴んで離さない。
●●●は我愛羅に歩み寄って顔を覗く。
「我愛羅くん?おまたせ」
「……………●●●」
我愛羅がほっとした表情を見せる。
それと同時に少年の足の砂も散っていく。
「我愛羅くん、ちょっとまってね」
そう言って●●●は少年の元へ駆け寄る。
●●●はまず足を潰された少年の手当てを始めた。
チャクラを手に集めてそっと少年の足に当てる。
青白いチャクラが少年の足をじわりと包んだ。
いつのまにか●●●の横でその様子を見ていた我愛羅は終始驚いた表情をしていた。
●●●は額に薄っすらかいた汗を拭う。
「これでどうかな」
「…………」
少年は自分の足を見て驚いている。
「痛くない?」
少年は●●●を見て何かを言おうとするが●●●の横にいる我愛羅を見て悲鳴をあげて走って行ってしまった。
「……………あれだけ走れればいいかな?」
「いまの…なんだったの?」
「医療忍術だよ!まだ修行中だけど……」
「……怪我、治せるんだ…」
「うん、大体はね!我愛羅くんも怪我したら治してあげるよ」
そう言われた我愛羅は困ったように俯いた。
「我愛羅くんは怪我はない?」
「…………」
我愛羅は自分の左胸を抑えた。
「そこ?怪我してるの?」
「……ここ、ずっと痛いんだ」
「見てもいい?」
我愛羅が頷くのを確認してから服をめくる。
出血はない…
だとすると、打撲だろうか。
いろいろ考えていると我愛羅が口を開いた。
「●●●、手………」
そう言って我愛羅は、●●●に手を差し出す。
「手?痛い?」
●●●は我愛羅の手を触って調べる。
すると我愛羅が●●●の手を握る。
「握っててもいい……?」
懇願するような我愛羅の瞳が●●●を見つめる。
●●●はその瞳から目が離せなかった。
2人は手を繋いだままベンチに座った。
無言のまま2人で空を見上げる。
我愛羅が空いた方の手で左胸を抑えた。
「ここ、少し……楽になった」
「……そう?」
「昨日●●●と手を握ってたら、あったかかったから……」
●●●は昨日のことを思い出す。
街灯の下で小さな冷たい手を握っていたっけ
…。
「僕……砂が勝手に守ってくれるから……怪我したことないんだ」
「えっ、一度も?」
「………うん」
「それは……忍術なのかな?」
砂の国にはそんな忍術が存在するのかと●●●は嬉しくなる。
だかそれとは反対に我愛羅の表情は暗くなっていった。
それに気付いた●●●は慌てて質問を取り消す。
「ご、ごめんね、我愛羅くん…変なこと聞きました……」
我愛羅は首を横に降る。
表情が元に戻った…よかった。
「我愛羅くん、私状況がよく分からないんだけど」
「?」
「結果的に怪我させちゃったし、謝りに行かない?私も一緒に行くから」
「………うん」
●●●と我愛羅は少年の家へ手を繋いで歩き出す。
男の子と手を繋ぐのなんてカカシ以来初めてだ。
弟がいたらこんな感じかな、なんて思う。
少年の家は割と近くだったようですぐに着いた。
●●●がドアをノックする。
「こんにちはー」
ガチャリとドアがすこし開き、その隙間から先ほどの少年が顔を出した。
その顔は迷惑極まりないと言っているようだ。
「……………」
「足は大丈夫?もう痛くない?」
少年は●●●を見てコクンと頷いた。
「……さっきは、ごめん」
我愛羅がそう言った瞬間、少年も口を開く。
「帰れよ、バケモノ」
その瞬間●●●は無意識に少年の頬を思いきり引っ叩いていた。
「あ」
「え」
本当に無意識に身体が動いた。
考えることもせず気付いたら引っ叩いた後だった。
「え、…あ!?ごめんなさい!」
怪我させたことを謝りに来たのに
我愛羅たちよりはるか年上の自分が手を出してしまうとは…。
「す、すみませんでした……」
「…………」
ヒヤヒヤした気持ちで少年の元を後にする。
●●●とは違って、頬を染めて嬉しそうな我愛羅が居た。
「叩いちゃった……」
●●●は青い顔で、じんじんする自分の手のひらを見つめる。
我愛羅はケラケラと笑っていた。
カカシが居たらバカにされるんだろうな…
いま、カカシは何をしてるんだろう。
ごはんちゃんと食べてるかなぁ。
会いたいな。
「●●●……?」
「我愛羅くん」
「……?」
「今日の事は、私と我愛羅くんだけの秘密にして……みんなには内緒にしてくれますか?」
●●●は我愛羅の顔の前で手を合わせた。
子どもを引っ叩いてしまった事実を言いふらされたら…ちょっと困る…。
「僕と、●●●だけの……?」
「そう…」
我愛羅は頬を染めてコクンと頷いてくれた。
よかった。
子どもを引っ叩いた事など初めてだった●●●はその日は眠りにつくまでヒヤヒヤしていた。