一欠片の真実






「師、一つ聞きたいことが……」

「なんだ、改まって」

●●●は医療忍術、研究に携わる師匠の元に来ていた。
研究に使う為の巻物や植物、薬物などが所狭しと並べられている。
書物が積み上げられた机に足を乗せて読み物をしている師匠は●●●を見やる。


「そういえば昨日お前来なかったな、何してた?」

「師は自分の意思と関係なく、自動的に砂で身を守ってくれる忍術を知っていますか?」

「俺の質問は無視か…………忍術はしらねぇなぁ」

「そう、ですか……」


やはり術者の意思なく発動する、なんて忍術は存在しないのか。
だとすれば我愛羅くんは何故自動で砂に守られるのだろう。
研究を進めていけば、そんな忍術が現れるのか
そしたらカカシは怪我しなくなるかな…。




「お前、守鶴に会ったのか」

「はい?」

「守鶴のガキだよ」


守鶴とはあの九尾の仲間?
九尾の妖狐が木の葉の里を襲ったと聞いたのは●●●が砂に来てしばらくしてから。
カカシが気になって一度木の葉に帰ろうとも考えたが、今は他国からの者は例え帰省でも木の葉に入れない。
木の葉の里がボロボロに弱っているのを極力秘密にしておく為だろ、と師は言ってたけど…。

木の葉の里をそこまで追い込んだ生き物が砂の里にも?
それに、


「守鶴のガキ、とは?」

「風影様の息子でな、体内に守鶴を埋め込まれてるバケモノだよ」


バケモノ、前日も聞いた言葉だ。
砂の里では人のことをバケモノなどとよく言うのだろうか。


「確か、我愛羅っつったか」

●●●の目が大きく見開いた。

「あいつの砂のガードは守鶴の力だ。守鶴が自分の容れ物を壊されまいとして発動してる」

●●●は固まって動けない。

「だから、術者がいるとすりゃそれは守鶴だ」

師は固まったままの●●●を見て
あんま関わるなよ、と言い捨てて読み物に目を戻した。





我愛羅くんが守鶴の容れ物…。
その事実を知った●●●は、研究修行そっちのけで守鶴のことを調べはじめた。

木の葉にいた時のように何時間も図書館に籠る。
閉館時間になっても、空が真っ暗になっても、迎えに来てくれる人はいない。
カカシ………生きてるよね。
今だけ少し、医療忍術から外れるね。


守鶴についてあまり詳しく載っているものはなかったが、分かったこともあった。
守鶴は尾獣のひとつであること、
尾獣の容れ物となる人は人柱力と呼ばれること、
守鶴の人柱力は睡眠障害、人格障害が起こること。

あのクマは睡眠不足で出来たものだと考えれば合点がいった。
目を瞑って、椅子の背に深くもたれ掛かる。


「我愛羅くんが………」


「●●●………」


突然自分の名前を呼ばれ、驚いて声の方を向くと、我愛羅の姿があった。
その腕の中には、数冊の絵本が抱かれていた。


「あ、我愛羅くんも本を借りに?」

●●●は急いで読んでいた本を片付ける。
我愛羅はその姿をじっと見つめる。


「夜、眠れないから……」


「…………………」


なんとかしてあげたい…。
守鶴を体から出すことは出来るのかな。
誰が、何のために我愛羅くんに……
せめてぐっすり眠らせてあげたい。


「我愛羅くん」

「………?」


我愛羅は●●●を見上げる。
●●●は我愛羅の目をじっと見る。


「私が、きっときっとなんとかするから」

「え?……どういうこと…?」

「ううん、こっちの話!あ、夜叉丸さん」

図書館の出入り口付近に夜叉丸の姿が見えた。
我愛羅の迎えだ。
●●●は夜叉丸に会釈する。

「じゃあ、またね我愛羅くん」

我愛羅は●●●に手を振りながらその背中を見ていた。