天秤







「守鶴を抜く方法だあ?」

●●●の師は頭をポリポリとかく。


「あるっちゃあるが」

「教えてください!」

「お前には無理だ」

「だったら自分で調べます」

「守鶴を抜いたら我愛羅は死ぬぞ」


●●●の動きがピタリと止まる。


「過去に何人か……守鶴を抜いて死んだ奴がいる」

「…………」

「守鶴はお前の手には負えんぞ」


確かに木の葉の里をボロボロにした九尾の仲間ならそれ相応の力があるだろう。
1人の人間、ましてや医療忍術しか使えない●●●がどうこうできるレベルではないだろう。

師は悔しそうにする●●●を見つめる。
そしてタバコに火をつけた。

「まあ……一時的に抑え込むくらいならお前でもできるだろ」

そう言うと師は1つの巻物を●●●に投げ与えた。
ふー、と口から白い煙を吐き出す。


「その忍術と術式を会得してみろ」


●●●は巻物をスルスルと広げていく。
見たこともない術式が長々と書かれていた。


「……これは……どのようなものなのですか?」

「昔俺が開発した術だ。その術で抑え込んでる間は乗っ取られる心配なく眠れるはずだ」

「眠れる………」


ガジガジと灰皿でタバコの火を押し消す。

「ただし、その術は体力と精神力をかなり消費する。いわゆるチャクラをな。その術を使った後お前がどうなるかは運次第だ」

「……それは、死も覚悟しておけという事ですか?」

「心して使えという事だ」


そう言われて、●●●は手の中の巻物を見つめた。
もしかしたら、死んじゃうかもしれない。
カカシにもう会えなくなる?
●●●は怖くなった。


「少し…考えます」


師にそう言い残し、研究所を後にする。
1人になれるところを探して里の外れの砂丘に座る。

見渡す限りの砂漠が目の前に広がる。

この先、ずーっと向こうにカカシのいる木の葉の里がある。


「カカシ……」

●●●は無性にカカシに会いたくなった。


カカシじゃない人の為に命をかけることを
カカシは応援してくれるかな。

●●●はしばらく考え込んでいた。

いま、我愛羅くんに何も出来なかったらきっとずっと後悔するだろう。
やらなかった後悔なんて絶対嫌だ。


太陽が沈んで夜が来た。

砂漠の夜は冷える。

●●●は再び師の元へ訪れていた。


「師、あの術式やってみます」


「…………そうか」


師と●●●は真剣な顔で向き合う。


「気張れよ」


「はい」


●●●は、それから何日間も師の研究所に篭っていた。










「我愛羅様……帰りましょう」


「…もう少しだけ」


我愛羅と夜叉丸はいつか我愛羅と●●●が出会った街灯の下に座っていた。

何日も何日も夕方になると我愛羅はここへ来て、●●●を待つ。

夕方から夜になっても●●●は来ない。
研究所に篭っている事なんて知らない我愛羅はただひたすらに待ち続けた。


「何かあったのでしょうか…またはお引越しでもされたのかな」

夜叉丸は苦笑いしながら呟いた。

「………」

我愛羅は寂しそうな顔で俯いた。
まだ●●●と出会って間もないけれど
我愛羅にとって●●●は特別な存在になっていた。
●●●と手を繋いだ時の感覚が我愛羅を癒す。


「夜叉丸…また明日も来てもいい?」


「……ええ。でも暗くなる前までですよ」


「うん」


我愛羅と夜叉丸は立ち上がり歩き出す。
夜叉丸と手を繋ぐ我愛羅は●●●と出会った街灯の灯りが見えなくなるまで何度も街灯の方を振り返って見た。


●●●、どこに行ったの?何してるの?
会いたいな…