桜花爛漫〈謝罪と嫉妬〉






●●●の生家に数十年ぶりに2人で帰ってきた。
この瞬間をどれだけ待ったか分からない。
カカシは背中で眠ってしまった●●●を愛おしそうに見る。
その目線には気付かず●●●は気持ち良さそうに寝息を立てている。



カカシはそのままベッドに●●●を下ろしてやる。
その拍子に軽く目が覚めたようで、●●●はそのままふらりと立ち上がった。
目が開いてないように見える。

「………歯磨きしてない」

独り言のようにボソと呟くとふらふらと壁や椅子にぶつかりながら洗面台へ向かう。

カカシはその様子を苦笑いしながら見つめる。

洗面台から帰ってきた●●●は
目は虚ろ、頬は真っ赤で今にも倒れそうだ。
カカシを認識しているのかいないのかカカシの前で着ていた服を次々と脱いでいく。


「え、ちょっと……●●●?」


タンクトップと下は下着一枚という格好にカカシは手で目元を覆う。その耳は真っ赤だ。
●●●はそのままベッドにもぞもぞと入っていく。

おいおい…
そんな格好で寝ないでちょーだいよ

カカシは頭以外布団の中に隠れた●●●を見る。
またスースーと寝息を立てている。

カカシはベッドに入ることが出来ないまましばらく暗い部屋で椅子に座っていた。
ひとつ深呼吸をして、自分の家でシャワー浴びて来ようかと椅子を立つ。


「……カカシ」


名前を呼ばれてカカシはピタリと動きを止めて●●●を見る。


「カカシ」


また名前を呼ばれ、●●●のベッドに近づいた。
●●●の目からは一筋の涙が伝った跡。
寝てるのか寝ていないのか、目を閉じたまま喋り始めた。


「…相談…しなくて…ごめんね」

「………………」

「………だいきらいなんて嘘だよ…ごめん………」

「………………」

また●●●の頬を新しい涙が一筋溢れる。
カカシはその涙を指で拭う。

もしかしたら●●●は
あの夜から毎晩こんな涙を流していたのかもしれない。
そう思うと罪悪感と共に何故か嬉しくなる。
俺がそうだったように●●●の中にも毎晩俺がいたんだ。
カカシはまた一つ深呼吸をする。


「……好きだよ、●●●」


●●●が薄っすら目を開けた。
その瞳は潤んでカカシを見つめている。
そのまま●●●はベッドの中からカカシに手を伸ばす。
カカシはその手を軽く握った。


「どしたの」



●●●はモゾモゾと動き、体をすこしベッドの端に寄せた。
まるでカカシの入るスペースをあけて一緒に寝ようと言ってるようだ。
カカシはゴクリと喉を鳴らす。
大丈夫大丈夫、俺も大人になった…。
あの夜みたいな事にはならない。

カカシはベッドに入ろうと片膝をベッドの上に乗せる。
●●●の両親の柔らかなダブルベッドが揺れた。
あの夜、何がなんでも手に入れたいと思った女がベッドへ誘っているかのように俺の手を握る。
あの夜のように心臓が早く胸が熱くなる。
これはお酒のせいだと思いたい。
●●●の潤んだ瞳がカカシを見つめながら呟いた。


「一緒に…おいで、我愛羅くん」


カカシの体から一気に血の気が引く。
熱かった胸はズンと重くなり嫌な感じだ。
自分に向けられた自分でない名前…。

そんなカカシをよそに●●●は潤んだ虚ろ目でカカシの首に手を回す。

「ちょ、ちょっと…」


●●●はカカシの頭を胸の位置で抱え込んだ。
女性になった●●●の香りに頭がクラクラする。
柔らかな感触がカカシの顔に伝わる。

「おやす、み……我愛羅くん……」

カカシの胸がズキズキと痛む。
心臓がドクンドクンと波打っている。
我愛羅とは●●●の恋人か何かだろうか。
一緒に眠る関係ならばその確率は高い。

●●●はあの夜俺を全力で拒んだくせに、我愛羅って奴は受け入れたのか?

カカシの中にドス黒い感情が湧き上がる。
重い気持ちとは裏腹に●●●に抱きしめられているこの瞬間はとても気持ちいい、が
我愛羅って奴も●●●にこうして抱きしめられていたと思うとやはりイライラする。


「……許さないよ……●●●」


●●●はカカシの頭を胸に抱えて
スースーと寝息を立てていた。