予知夢






●●●は木ノ葉の里に居た。

●●●もよく知るいつもの繁華街。団子屋の前。
日は高く、多くの人で賑わっている。

「カカシー!」

聞いたことのある声が横から聞こえ、そちらを見る。
ああ、カカシに忘却術をしかけたと言っていた同級生の女子だ。


「ごめんねっ、待った?」

「………いや」

団子屋の前で待ち合わせをしていたのか、カカシと女子は歩き出した。

デートだろうか…そう言えばこの前、この女子はカカシをデートに誘うとか言っていた気がする。
カカシ…「うん」と言ったのか…。
やはり元気一杯な女子が好きなのかな…。

●●●の姿は2人には見えていないようなので、●●●は好奇心に負けて二人を尾行する。
女子がカカシの腕を組むと、カカシは「引っ付くな」と振り払う。

カカシが女の子と2人きりでいるのなんて見たことなかった。
●●●はなんだか1人取り残された感じがして寂しくなった。


2人を尾行し始めてから数回瞬きをしたら場面が変わった。


次に見えたのは夜になった砂の国。

屋根の上にいる●●●の少し離れたところに、1人で座り込む我愛羅が居た。

寂しそうなその背中に●●●が話しかけようとしたその時、我愛羅の背後に無数のクナイが飛んできた。
不意打ちだったが砂の盾に守られて我愛羅は無傷だ。

我愛羅は自分の背後に立つクナイを投げた忍を砂で圧し潰した。
吹き出した真っ赤な血が我愛羅の砂に混じる。

我愛羅が忍の覆面を剥ぎ取り、顔を確認すると同時に胸を押さえ叫び出した。
●●●の位置からはその忍の顔は確認できない。

我愛羅くんっ…?

●●●は我愛羅を呼んだが、その声は届かない。やはり●●●の姿すらも見えていないようだ。
我愛羅の叫び声と共に、●●●の意識が遠のき、また場面が変わる。


目の前が一瞬暗くなり、次に見えたのは、紅の姿。
最近会った紅とはだいぶ違って髪も伸び、かなり大人になっている。
場所は木の葉の産婦人科の前のようだ。

紅をよく見るとお腹が大きい。
妊娠していると一目でわかった。
●●●は驚きと嬉しさで紅に駆け寄るがやはり、姿も声も届かない。

紅の正面には、見覚えのある金髪と黒髪を1つにまとめた青年の姿もある。

段々とひと場面ごとの時間が短くなっている気がする。
紅の笑顔と同時にまた目の前が真っ暗になる。



次に見えたのはどこか見慣れた部屋に大人の女性とカカシの姿。
2人はソファに寄り添って座り、とても仲が良さそうに見える。
カカシは女性の大きなお腹を、それはそれは幸せそうな柔らかい笑顔で大事そうに撫でていた。

カカシの表情が細かく読み取れるのは、
食事の時以外はマスクを外さないカカシがその女性の前ではマスクを下ろしているから。

●●●は見たことのないカカシの柔らかい表情に驚きを隠せない。
好きな女の前では、こんなに優しい顔をするんだ。
カカシがこの表情を見せているのは私じゃない…。


カカシは……私のことを好きじゃない。


「カカシ……!」


よく分からない気持ちが湧き上がり、涙が溢れそうになって、また目の前が暗くなる。


次はどんな場面だろう、と考えていると
目の前には見慣れた天井…
●●●の篭っていた研究所の2階の天井だ。

「●●●…!」

「起きたか」

我愛羅と玄師が●●●を覗き込んでいた。

「我愛羅くん…師…」

今見ていた全ては夢…か。
●●●はどこかホッとして体を起こす。

「●●●、よくやったな」

師は少しボーッとしている●●●の頭を乱暴に撫でた。
我愛羅は●●●にギュッと抱きつく。
どうやら術式は無事に成功したようだ。
術式の成功より、夢の内容のが正直気になってしまう。
カカシとデートしていた女子、我愛羅くんの張り裂けるような叫び声、紅の大きなお腹と幸せそうな顔、見たことのないカカシの嬉しそうな顔と隣にいるお腹の大きな女性……
こんな長い夢を見たのは久しぶりだ。


「兵糧丸…全部で4つ飲んだな。それだけ飲んでも丸一日寝ちまうのか…お前は本当にチャクラがねぇな」

「…すみません」

「んで、どんな予知夢見た?俺出てきたか?」

予知夢……?
本で読んだことがある…
確か『夢見たことが将来、実際の出来事となって起こること』
じゃあ…今見た夢はすべて未来?
●●●が黙り込んでいると師が急かす。


「4粒飲んでるから4種類の予知夢を見てるはずだが」

しかし、寝てる時に見る夢というのは起きるとすぐに忘れてしまう。
覚えていたとしても、夢の一部だけ。
●●●の予知夢もそのようだ。
もう、思い出せない場面がある。

「師は出てきませんでしたよ」

「……そうか」

師は少し残念そうだ。
我愛羅くんの叫び声が頭に残っているが、あれは何だったかな…。
目の前にいる、自分の身体に抱きつく我愛羅の頭を撫でる。
ハッキリとした夢の内容は、忘れてしまった。

反対に一番最後の夢での、カカシが女性に向ける笑顔だけは忘れられない。

カカシと会うことを目標にして、死ねない覚悟をしてがんばったけれど…
「カカシに恋人がいる」なぜこんな簡単なことがわからなかったんだろう。

心にぽっかりと大きな穴が空いたみたいだ。

自分の気持ちがなんなのかも分からない●●●は、どうすればこの気持ちが晴れるのかも分からなかった。