自分の立ち位置
「ていうか、●●●は今日何してたの?」
「家の…アパートの掃除してたよ」
「誰の」
「私の!…ナルトくんは試験受かった?」
「ナルトとサスケは予選通過」
「す、すごい…!」
「あとは…アスマんとことガイと…紅の部下1人ずつ勝ち残ったな」
「…すごい…本当中忍って狭き門なんだね」
●●●はまるで自分の事のように目を閉じで深呼吸する。
カカシのとこは2人だけど、
各班から1人づつしか受からないなんて…。
そんな中忍試験を6歳で通過した目の前の男は本当に人間の子なの?サクモさん。
カカシは●●●から尊敬の眼差しを感じたようで「俺のこと、見直した?」などと言ってる。
「ガイのとこの合格者って…もしかしてリーくん?」
●●●はリーに逆立ちで荷物を運んでもらったことを思い出した。
あの日の修行は里の外周50周だと言って傷だらけの腕をしていたなあ…。
あの努力家のリーくんなら受かってても驚かない。
ビシッと敬礼をするリーくんの顔が頭に浮かび、●●●の顔に笑みが浮かぶ。
「…………」
カカシからの答えを待って、●●●は何も答えないで伏せ目になるカカシを見る。
ど…どうしたの…
「ピンポーン」
●●●の家のベルが鳴った。
久しぶりに聞いた実家のベル。懐かしい。
「わ、私出るね」
自分の実家なのだから、私が出るのは当たり前か…。
お茶を飲んでいるカカシをおいて、
●●●はトタトタと玄関に向かいドアを開ける。
「夜分遅くにすみません」
ドアの外に立っていたのはカカシと同じ額当てとベストを着た忍。
「火影様直属忍です。火影様からの伝令があります。●●●さんですか?」
「えっ…は、はい…」
火影様の…?なんだろ…火影様から何の用だろう。
心当たりは1つもない。
なにかやらかしたのかなと、内心ドキドキする。
「火影様から、貴女の力を貸していただきたいと」
思っていた事と全く別の内容に安心したが
私に貸せる力があったかな…?
玄関で直属忍と話しているとカカシが●●●の後ろにやって来た。
直属忍はカカシを見ると、なぜのこの2人が一緒にいるんだというような顔をした後、カカシに軽く会釈した。
カカシはそれに「どーも」と返す。
「先日から木ノ葉で行われている、中忍選抜試験での負傷者の治療に貴女のお力を借りたいとのことです」
「あ…それは構いません」
力って医療忍術のことか。それなら1番の得意分野だし、里の為になるなら嬉しい。
「命に関わるような怪我人はおりませんので、出頭は夜が明けてからでかまいません」
「わかりました」
直属忍は、クリップでまとめられた数枚の紙を●●●に渡す。
「負傷者名と怪我状況のリストです。怪我の治療に特別な道具などが必要であればご持参ください」
では、と言い残して直属忍は姿を消した。
●●●とカカシは部屋に戻った。
カカシは椅子に腰掛ける。
「里に帰って来て間もない●●●にも声がかかるとはね。ま、医療忍者は万年人手不足だから…」
「でも嬉しいよ。里の為に働ける」
●●●は立ったまま渡されたリストを真剣に見いる。
二次試験からの負傷者で結構な数だが、命に関わる状態の人がいないだけマシ…と思わないと。
リストは隠れ里ごとに分かれて書かれていた。
●●●は最初に1番上にあった砂隠れの里を確認する。
ビッシリと名前が書かれているがいずれも軽傷のようだ。
探していた我愛羅の名前の横にも『軽傷』の文字。
●●●は、ホッとした。
あれ……?軽傷…?
我愛羅くんは…砂のガードがあるはずなのに…?
「カカシ…カカシは全部の試合見てたんだよね?」
●●●は椅子に座るカカシを見る。
カカシも●●●を見ていたようで目が合った。
「ああ…」
目を逸らして低い声で短く返事をするカカシを見て●●●は違和感を感じる
「どう…だったの…?」
●●●は恐る恐る聞いてみる。
カカシは深く深呼吸する。
「●●●が聞きたいのは…砂の我愛羅の話?」
●●●はコクンと頷いた。
聞きたい事は沢山あったが、1番気になるのは我愛羅のこと。
我愛羅くんが傷を作るほどの試合…何があったのか。
カカシは椅子にもたれかかり、天井を見つめながら話し出した。
「砂の我愛羅は…予選通過したよ」
「そっか…!」
●●●は嬉しくなる。
流石我愛羅くん!すごいな。
「リーくんの怪我の状態はなんて書いてある?」
カカシにそう言われて、渡された書類の木の葉のページを見る。
探さなくてもすぐに分かった。
重症度の高い名前が赤の太線で何重にも囲まれていた。
ロック・リー『重症(高)』
「重症って…!何があったの?」
あのリーくんが…。
重症ということは、不合格だろうか。
試験とはいえ…誰にやられたの…?
カカシはふーっと深くため息をついた。
そして真っ直ぐ●●●を見る。
「リーくんの対戦相手は…我愛羅だよ」
●●●はリストを持ったまま固まった。
身体は固まっても、心臓はさっきよりドクドクうるさい。
我愛羅くんが…リーくんを……
●●●の中では、我愛羅は愛らしい弟のような存在のままで、リーのことはガイの教え子であり、友達だと思っていた。
大好きな2人が殺し合う、そんな場面を想像したくはない。
●●●は、我愛羅の勝利を喜んでいいのか分からなくなってしまった。
立ち尽くす●●●の肩をいつのまにか側に来ていたカカシがポンと叩いた。
「これが忍の世界だから…我愛羅もリーくんも、目指す舞台は本戦…命がけで戦ったんだよ」
「……………」
そう…なんだよね…中忍試験は狭き門。
分かってはいるけど…
それでもどこか納得できない自分がいる。
「恐らくリーくんの身体は…我愛羅にやられた傷もだが…禁じ手を使った代償が大きい…」
「…………」
カカシは黙り込んでしまった●●●を見る。
どこか落胆したような、今にも泣き出しそうな表情だ。
「●●●にはさ…他国を巡り歩いて得た医療忍術がある。怪我をした2人のために何かできるのは俺やガイじゃなくて…●●●だけでしょ」
●●●はそう言われて、側に立つカカシを見上げる。
目が合うとカカシはニッコリ微笑んでくれた。
私がうじうじしても何も変わらない。
スッキリとはしないけど、やれることをやろう。
我愛羅くんもリーくんも生きてる。
それが一番だ。
「ありがとう、カカシ…」
●●●はカカシに微笑んだ。
泣き出しそうな顔から生まれた微笑みにカカシは目が離せない。
胸がギュウと締め付けられた。
「●●●……」
カカシは●●●の頬を優しく撫でる。
●●●はすこしくすぐったそうに首をひねった。
抵抗されないのを確認したカカシは●●●に顔を近づけていく。
「ねえ、私がいいよって言うまで手出さないんじゃなかったの?」
●●●がにんまりとした顔で言うので、カカシの手が止まる。
そうだけど…
「…ダメ?……」
「私明日朝早く病院行きたいから、もう帰るね」
●●●はパパッと少ない荷物を持つ。
「待っ…ここで寝ないの?」
「今日はアパートに帰るよ、医療道具もあるし…ついて来ちゃダメだよ」
●●●はカカシをささっとあしらって、玄関を出る。
力では敵わないカカシが「手を出さない」と言ったのをいいことに●●●は完全にカカシを振り回す。
●●●が出て行った●●●の生家に1人置き去りにされるカカシ。
「手を出さないなんて約束するんじゃなかった……」