視線
次の日
●●●は朝早く起きて支度を始める。
火影様直々に治療の協力要請があった為だ。
医療忍術の巻物と道具を鞄に詰め込み、
靴を履いて外に出る。
アパートから、出頭要請先の病院へ向かう途中に繁華街を通り抜ける。
朝早いからか、人はまばら。
重症度の高いリーくんの状態が気になるので、早く行くために繁華街の屋根を伝って移動していた。
屋根と屋根の間を飛んだ瞬間、ゾワリとする視線を感じた。
「……?」
●●●は立ち止まってぐるりと辺りを見渡したが、視線の主は分からない。
不思議に思いつつも、●●●はまた病院への道を急ぐ。
「……見つけた」
低く小さなその声は●●●に届くことはなかった。
「●●●さん、お待ちしてました」
全身を白衣に包まれた医療忍者が出迎えてくれた。
●●●は控え室にカバンを置いて長い髪を1つに縛り、綺麗に手を洗う。
控え室から廊下に出ると、白衣の男性が立っていた。
「早速ですが、こちらへお願いします」
「はい」
白衣の男性は廊下をまっすぐ歩き出した。
●●●もその後ろに続いて行く。
重症のリーくんが気になる…大丈夫なのだろうか。
「●●●さんの担当入院患者は、下忍のうちはサスケ、日向ヒナタです。入院患者治療以外の時間は外来患者の治療に当たってください」
「あの、昨日貰ったリストに…診たい患者が居たのですが」
「誰です?」
「木ノ葉のロック・リーさんです」
「面会は可能ですが、治療はこちらで行なっていますので不要です」
「……そう…ですか…」
木ノ葉の医療班が見ているなら大丈夫だろうけど…私だってリーくんの力になりたいのにな。
●●●は自分の担当患者の病室へ案内される。
うちはサスケについては特別体制で入院しているらしく、入り口に見張りの暗部が立っていた。
●●●は『肩の呪印には決して触れるな』ということ以外教えてもらえなかった。
うちはサスケは本線出場者なので早めの回復が求められる。まだ意識は戻っていない。
日向ヒナタは一般的な病室だった。
外傷は大したことはないけれど、内臓の損傷が激しいらしい。
命に別状はないが、こちらもまだ意識は戻っていない。
「もう少し日が昇ったら外来の負傷者をお願いします。また呼びに来ますので」
「はい、よろしくお願いします」
●●●は本線出場者のサスケを先に診る為にサスケの病室に向かう。
見張りの暗部に許可証を見せて部屋に入る。
呪印のせいで体力回復に時間がかかるだけで外傷は大したことなかった。
傷を治し、包帯を巻いて病室を出た。
体力が戻ればすぐ退院できるはず。
日向ヒナタは身体中に消えかけの斑点あり…命に別状はない。
●●●はヒナタの胸に青白い光を当てる。
内臓の治療は、外傷よりもチャクラを多量に消費する。
●●●は兵糧丸を1つ口に入れた。
2人の治療が終わり、次は外来だ。
怪我の程度が同じくらいの場合、
本線出場予定の負傷者を優先して治療していく。
皆んな殴られたり、クナイで切られたような傷だらけ…。
我愛羅くんも軽傷のようだし、もしかしたら治療に来てくれるかもしれない。
●●●は我愛羅を待ちながら治療を開始する。
カーテンで仕切られただけの診察室で順に患者を診ていく。
「他にどこか痛いところはありますか?」
「いや…大丈夫っす」
「おう…シカマル。行くぞ」
カーテンからアスマが中を覗きこむ。
「あれ、アスマ?」
「お!●●●じゃねえか」
「アスマも怪我したの?」
「俺はシカマルを迎えに来た…これから修行だからな」
●●●は、治療したばかりの少年を見る。
とてつもなく嫌そうなため息をついてる。
「…めんどくせーけど、やるしかねーか…」
「シカマル…●●●はああ見えて すご腕医療忍者だ。もう全快だろ。いつも通りいくぞ」
「へいへい…」
アスマが●●●を指差すので、シカマルもこちらを向いて見る。
●●●は「ああ見えて」が少し気に入らないが笑みを浮かべて会釈した。
「またな、●●●」
「うん。2人とも怪我しないようにね」
「どもっス」
●●●はカーテンから出て行く2人に手を振った。
2人と入れ替わりに、金髪の少年がやって来た。
ナルトくんだ。
「あっ、いたいた!●●●の姉ちゃん!」
ナルトは●●●を見つけると目の前にある診察椅子に勢いよく座った。
「ナルトくん!久しぶりだね、この間は薬箱ありがとう」
「あんなのどーってことねーし、気にすんなってばよ!」
ナルトはにしし…と笑ってみせた。
「ナルトくん本戦出場おめでとう!」
「おう、サンキュー!ところでさ!この前くれた桜餅、あれ姉ちゃんの手作りだろ?」
「うん、そうだよ」
「俺ってば、あれ気に入った!また作ってくれってばよ!」
「わあ嬉しいな!いくらでも作るよ」
自分の作った桜餅にファンができた!
これは純粋に嬉しいし、それに応えたい。
●●●は早速帰りに材料を買って帰る予定を立てた。
その前に仕事を終わらせないと…
「あ、ナルトくん、怪我は?大丈夫?」
「怪我は全然へーき!あのさ!あのさ!俺ってば、カカシ先生探してんだ!」
「えっと…ここには来てないよ」
「本戦までに修行見てもらわねーと!じゃな、●●●のねぇちゃん!」
ナルトは立ち上がり、カーテンの向こうにタタタッと走って行った。
●●●はもういないナルトにひらひら手を振る。
怪我したんじゃないのに病院にいるって事はサスケくんのお見舞いかな。
結局、我愛羅は外来の時間には現れなかった。
外来が終わり、●●●が昼休憩を貰って外のベンチで休んでいると背後に人の気配を感じた。
「よっ、●●●。お疲れさん…」
振り向くと片手をポケットに突っ込み、もう片方の手で本を広げているカカシが立っていた。
「カカシ…」
「……サスケの傷…どう?」
開いていた本をパタンと閉じた。
カカシは●●●がサスケの担当だと知ってるようだ。
「外傷はもう大丈夫だと思うよ。あとは体力…」
「そうか……で、●●●は何時に帰る?」
「えっと…まだ…わかんない」
「砂の我愛羅には会った?」
●●●は首を横に振る。
「……ヤツには…気をつけろ」
「え?」
●●●と砂の我愛羅は親しい関係みたいだけど…ヤツには普通の人間と違うものを感じる。
「大丈夫だよ、我愛羅くんとは仲良しなんだから」
「あっそ…」
カカシはすこしムッとした感じだ。
「そういえばナルトくんが探してたよ」
「…あぁ、エビス先生に頼んでおいたから大丈夫」
「カカシはいまから何かするの?」
「俺は適当に。…●●●、ちゃんと俺らの家に帰ってよ。じゃ」
カカシはドロンと消えた。
「……私の家だってば」
カカシがいなくなったため独り言になってしまった…。
カカシがドロンしてすぐ、ゾクリとした視線と殺気を感じた。
朝と同じ、あの視線だ。
●●●はベンチから立ち上がり、周りを見渡す。
木の葉がひらりひらりと風に舞っている。
「……なんだろ…誰かいるの…?」
ざわざわと揺れる木々の音も怖いものに感じて、
●●●は病院の中へ逃げ込んだ。
病院の中に入ると視線は感じなくなった。
なんだろう…朝は視線だけだったのに、今のはあきらかに殺気も混じっていた。
怨みを買うようなことはしていないのに…。
誰かに相談してみようかな…。
「あ、もうこんな時間」
●●●は短い時間だがリーの面会の許可が下りたのでリーの眠る病室に向かった。
「我愛羅…怪我はもういいのか?」
カンクロウが外を見つめる我愛羅に声をかけた。
「うるさい…おれに構うな」
我愛羅の視線の先には●●●の座っていたベンチがあった。