おちゆく天使




●●●がカカシとテンゾウの居る飲み屋に現れる少し前…。


●●●は水を入れた瓶に桔梗の花をさした。これで暫くは枯れないだろう。

「●●●姫さま!ご覧ください!」
「わあ、綺麗なお花!」
「●●●姫様にと詰んで参りました!姫様はまことに花が似合いますゆえ」
「ありがとう凛太!」

幼馴染の凛太もよく●●●に花をくれた。
季節ごとに様々な色合いの花を何本も何本も…。

「私、あの花が1番好き」
「姫さまあの花は死人花と言われる花ですぞ」
「…どうして?あんなに綺麗なのに」
「兎に角ヒガンバナは縁起が良くない花です」


●●●は思い出に浸りながら、長い廊下を歩き立ち入りの禁じられた扉を開く。


ない。

ない。


水の国襲撃任務の依頼主の名前がどの書類にも書かれていない。暗部の地位を獲得してからというもの こういった場所に入るのに一々怪しまれたりしなくなったので落ち着いて資料を探せる。

『●●●姫は無事に保護済み』
何のことだろう。現に私は捕まってもないし保護もされていない。

読み進めていくと任務に携わった暗部の名前。その中にはよく知る人物の名前ばかり…。今日も一緒に任務に就いた。

「先輩と…テンゾウ先輩…」

任務とはいえ彼らが●●●の生まれ育った城を焼き、城のみんなを手にかけた張本人。彼らの手には家臣や幼馴染、●●●の両親の血が染み込んでいるのだ。

仲間だと思い始めていたが
城のみんなの事を考えるとどうしてもふつふつと怒りが込み上げてくる。

仇は必ず打つ。必ず。




●●●は騒ついた心を抑えるためにいつもの居酒屋に向かった。薄暗い店内とお酒は色んなものをボヤけさせてくれるからいい。扉を開けるとそこには先輩とテンゾウ先輩がいた。

面は付けていたかと頬に手を当てるがあるのは自分の肌の感触だけ。面を忘れてしまった。

テンゾウ先輩に続いて先輩もこちらを見てる。でも2人は私の素顔を知らないはず。だけどこのまま不自然に引き返すのも…。

●●●はそそくさとカウンターに座り、お酒を注文する。これだけ飲んでさっさと帰ろう。

やたらと静かなこの空気が重い。なんであの2人は喋らないのかな。なんかみられてる気もするし…居心地悪い。

「●●●ちゃん…次飲む?」

マスターが小さな事で私の名前を呼んだ。
この小さな声ではあっちまで聞こえてないだろう。さっさと帰ろ。

お金を払って外に出た。

外に出ると街灯に照らされた綺麗な花が風に揺れていた。

明日も任務だ。