意思と覚悟と






●●●は昨日と同じ時間に担任の元を訪れた。
担任は●●●の顔を黙って見つめるとはーっと息を吐いた。

「やっぱ、かわらねぇか。額当てくらいじゃ」

忍者学校の生徒は額当てを貰うために学校に通っているようなもの。
何年も貰えない者もいるし忍者学校の生徒には喉から手が出る程欲しいものであるはずなのだ。

「お前の目を見た時から思ってたけど半端じゃない思いがあるんだな」

「....昨日先生になにか言われても少しも気持ちが揺らぎませんでした」

「....俺は泣くぞ」

担任は●●●に椅子を薦める。
●●●が椅子に座ったのを見てから担任はゆっくり口を開いた。


「俺は正直おっかない。忍者学校を卒業したての下忍でもないヤツが木の葉を出て単身砂の国に行くなんて、正気とは思えん」

「.......」

「だが、お前は行こうとしている。それ程までに強い意思がある。その意思を、理由を聞かせてくれないか」

「....カカシが」

●●●の口から昨日も出た同じ人物の名前。
やはりカカシが●●●の意思に大きく影響している。


「....怪我をしたカカシを見てるだけの私は嫌なんです」

●●●にそう思わせたのは演習場のそばをカカシと歩いている時のこと。
演習場で修行中の生徒が投げた数個の手裏剣が、●●●に向かって飛んできた。
側にいたカカシは咄嗟に●●●をドンと押しのける。
●●●を守った為に、手裏剣は全てカカシに命中した。
生徒は手裏剣にチャクラを過剰に練りこんでおり、手裏剣の殺傷能力に加え威力も増していた。
カカシの腕や体に手裏剣の姿が半分以上食い込んでいる。
なかには先端しか見えないほど体に入り込んだものもあった。

手裏剣がカカシの皮膚と肉を突き破り真っ赤な血がドクドクと流れ出ていた。
●●●は立ち尽くすことしか出来なかった。
カカシに刺さる手裏剣を見るたび指先から冷えて体が震える。
足もすくんで腰が抜けそうだ。
恐怖と、守られているだけで何も出来ない自分への苛立ちから涙が溢れる。
頼りにしていた医療忍術を用いても安静必須...。
パッと全快する技術があるはずだ。
●●●はこの時、そんな医療忍術を見つけてやろうと強く思った。
必ず見つかるはず。
チャクラは多くの可能性を秘めた力なのだから。
強い忍術も医療技術もない私がカカシのそばにいても意味がない。

何か必ず見つけてみせる。

強くなって、忍術を高めて、
あなたを不幸から守りたい。
あなたの大切な人を守りたい。

それが今の自分にはできない。


あなたが登りつめる強さ、高みまで私も一緒に行きたいの。
お飾りとしてではなく、パートナーとして。
カカシが居て欲しいと思える相手になれるように。

手裏剣を的に正確に当てて、筆記も実技も学年トップで一足先に下忍になったあなたを守りたいなんて、あなたは怒るだろうか。

「....ねえねえ」

「........なに?」



「カカシはどこまでいくの?」


その高みに一緒に行ける友でありたい。

心の底からそう思った。