新学期、高校生になった楓花は一人自分の席で脅えていた。入学式を終え新しいクラスで新しい担任の話を聞いて自己紹介をして、あとは少しでも交流ができるように前後と左右のクラスメイトと個人的な挨拶を…と来たところで問題が発生したのだ。
前は可愛い女の子で左は元気な男の子右は楓花が1番端だからいない。そして問題の後ろは…バレないようにそっと後ろを見る
(異様に背の高い男の子…)
元々人と話すことがあまり得意ではなくコミュ障とオタク、それぞれどちらも拗らせている楓花にとって背が高く髪も金髪で威圧感のある(楓花談)彼、石清水澄明に恐怖を抱いていた。そのため個人的には死ぬほど頑張った挨拶は目も合わせられずに終わり向こうがどんな顔をしていたのかも覚えていない。
(でも顔は良かった気がする…。いや、もしかしたら現実逃避かもしれないけど…)
がしかし、石清水澄明という人間は強面でないし怖い性格もしていない。何より彼女が勝手に怯えて威圧感があると感じているだけで周りからすれば全くそんなことは無い。
けれども楓花は高校初日にまさか人間関係に悩む羽目になるとは…と彼女は1人勘違いしながらその日一日は怯え続けていた。
一方そんな勘違いを受けている石清水本人と言えば、自分の前に座る彼女を見ていた。ただそれは甘い理由ではなく先程の楓花の反応に頭を悩ませていたからだった。
それぞれの自己紹介が終わったあとからだっただろうか、前から配られたプリントを渡される時も彼女がこちらを向いて「これからよろしくね、」と言った時も何故か全く目が合うことがなかった。
そしてどこか怯えているような表情…これは…もしかして、いや、でも…
(僕の事怖がってる…?)
とここまで考えいやいやと心の中で頭を左右に振る。まだ彼女と出会って1日も経ってないのに嫌われることもしてなければ、ましてや怯えられるようなこともしてない。
(だからそんな事は無いはず……うん、多分、きっと…)
他になにか原因が…と考え抜いて石清水はこれはもしかしたら楓花が自分よりも臆病か、もしくは人見知りだからなのではという結論に辿り着いた。それは奇しくも近からず遠からずな答えである。
そんな事に頭を悩ませていれば気づけばHRが終わるチャイム音が学校中に響いた。担任の号令でそれぞれが帰り支度をし家に帰ろうと教室を出ていく。
それは前の席の彼女も同じようで石清水とは違いテキパキと荷物をしまうとそのまま石清水の横を通り過ぎていく。顔を伏せているため本人が一体どんな表情をしているかなんて石清水には分かったものではないし、それがまさか怖さで顔を強ばらせているだなんて夢にも思ってない。
(目をつけられないように…早く教室から出ないと…!)
まさかここまで怖がられているとは知りもしない石清水は彼女を目で追いながら、初日からクラスメイトに嫌われるのは嫌だという気持ちで彼女に声をかけた
「また明日ね、今井さん」
「あッ…ま、また明日…!」
ちゃんと返ってきた言葉に石清水は嫌われてはいなかったという安堵にほっとしながら教室から去っていく彼女の背中を見送り、自分もそろそろ帰らなくちゃと荷物を鞄に入れ始めた。
だが石清水の安堵とは別に教室から出た楓花は先程の石清水とのやり取りに冷や汗が止まらなくなっていた。