話の流れ3

楓花は今神社ではなく珍しく公園にいた。「とりあえず猫娘の補助付きでここまで来てもう1回やってみましょうよ」「そうね」楓花の合図で鬼太郎は猫娘の補助付きでフラフラと安定しない自転車捌きを見せる。その姿にこれはまだまだ練習が必要そうね、と楓花は小さくため息を吐いた。

何故こうなったのか、それは楓花がいつもの様に境内を掃除しているときであった。そこに猫娘と鬼太郎が来て彼女に自転車の練習に付き合って欲しいと頼んだのだ。その他のみを楓花は間髪入れずに断ろうとしたが、彼女の交友関係が広まって欲しいというお節介のありがた迷惑で雛稀がただただ面白がって天音が「一緒に行ってきなさい」と彼女を神社から追い出したのだ。そして今がある

そんな過去を思い出しながら鬼太郎達を見ればどんどんと自分の方から離れていき、最終的にはぶつかりそうになった子供を避け猫娘共々池へと落ちていった。(どうしたらそうなるのよ…)避けた拍子に草の影へと転んだ少年に「大丈夫?」と声を掛け起こし、そのまま申し訳ないが一緒に池に落ちた2人と自転車を引き上げた。「…大丈夫?」「お兄ちゃん達自転車乗れないの?」「あぁ…ごめん…」ベンチの上で萎れた草のように力尽きた鬼太郎と猫娘に苦笑いしていると、その一緒に助けた男の子はそんな鬼太郎を見て「僕も一緒に教えて上げるよ」と提案した。
そこから男の子も含め4人で鬼太郎の自転車の練習に付き合う。バランスを取れるように遊具で特訓をし、上手くスピードを出せるようにアドバイスを貰う。(これで少しは上達すればいいけれど)
男の子、基カズオとの練習は夕方まで続き、その子との別れ際今度は月曜に練習をしようという約束をした。

しかしその月曜日、カズオはあの日と比べ元気がない。どうしたのかと聞けば着いてきて欲しいところがあるという。けれどすぐに来ちゃダメだと、なにかに怯えるように言う。「…何かあったの?」楓花がそう問いかければカズオはついに泣き始めてしまった。そんな彼を落ち着かせるようにベンチへと座らせ事情を聞く。「それでお化けが他の子を連れてこないなら僕の足の裏の皮を食べるって…」「足の裏の皮を食べる…?」そんなことをする妖怪もいるのかと楓花は思わず顔をひきつらせる。とにかく父さんに相談しよう、と言う鬼太郎に頷き目玉親父の知恵を借りることにした。

山の中を歩きながら、あまめはぎというコマ妖怪のことを知る。その説明を聞いていればカズオは楓花達を不思議そうな顔で見る。「どうかした?」と鬼太郎が問えば「お兄ちゃん達もお化けだったんだね」と返ってきた。目玉親父が自分たちは良い妖怪だと説明している横で楓花は(私はちょっと違うんだけどな)と後ろからこちらを覗くねずみ男に気が付きながらそんなことを1人考えていた。
目的の場所に辿り着くと嫌に目立つキノコが生えている何かが目に入った。それを鬼太郎が警戒しながら1本抜くが特に変化はない。しかし残りの2本が不自然な動きをすると地面から声が聞こえた「お嬢ちゃんたちも1本どう?」「間に合ってます!」「私も…」猫娘に同意するように答えればちぇっ、と拗ねたような声が聞こえ地面から勢いよくあまめはぎの本体が出てくる。コマ勝負をするか足の裏の皮を食われるか、と問いかけられた鬼太郎が「どっちも嫌だと言ったら?」と言うと、あまめはぎのしたが突然伸び鬼太郎の左足を絡める。その光景に楓花は生理的な拒否反応を起こし近くにいた猫娘を巻き添いにするかのように抱え瞬時に下がれるだけ後ろへと下がった。鬼太郎とカズオも驚きと拒否反応に後ろに倒れるように仰け反る(数千年この世界にいたけどこいつだけは無理…)

仕切り直しあまめはぎと鬼太郎はコマ勝負をする事に、そして鬼太郎のコマはキノコでもなんでもなくまさかの目玉親父だった。(それで大丈夫なのかしら…)という楓花の心配を他所に目玉親父のコマはあまめはぎのコマを弾き飛ばし勝利を収めた。鬼太郎の勝ち、もう二度と子供を襲うなという言葉と猫娘の木の皮でも食べてなさい!という言葉に逆ギレを起こしあまめはぎは「お前らに足の裏の皮の良さがわかるか!」と叫ぶと地中へと逃げていった「分かりたくないわね…一生…」未だに消えることの無い寒気に腕をさすっていれば、鬼太郎がねずみ男が着いてきていたことに気づき声をかけた。やはりまたしてもねずみ男が今回もやらかしていたのだった。
山から降りカズオを途中まで送り自分たちも帰ろうとした時カズオに呼び止められる「また練習しようね!」という声に鬼太郎が言葉を返すと、それを聞いた目玉親父が何の練習なのかと聞いてきた。(そう言えば今回のことは親父さんには秘密だったのよね…)どう返すのかと見ていれば鬼太郎は苦し紛れにコマの練習なのだと答え、その場で難を逃れていた。すぐ後に目玉親父からの親父ギャグがくるとは予想もしていなかったが。

カズオ達と約束した日楓花が公園へ向かおうとした時猫娘が焦りながら楓花の元へとやってきた。話を聞くとどうやら鬼太郎の姿がないらしい、先に公園に言っているのではと公園に向かうがそこに居たのはカズオだけ。(…嫌な感じがするわね)あの時の妖怪が頭によぎり目玉親父を含めた4人はもう一度あの山へと向かった。その道中楓花はまたねずみ男の気配がある事が分かり猫娘達とバレないように近ずきねずみ男の独り言を耳にする。「やっぱりあんたの仕業か!」「早く鬼太郎の元へ案内せい!」「は、はいぃ!!」ねずみ男の案内で向かうとその先にいたのは今までに見たことない大きなキノコの下敷きとなり、頭からキノコを生やした鬼太郎の姿だった。一体何があったのか、と猫娘達が心配しているとあまめはぎの声が聞こえた。その声の方へ目を向ければまた地面からあまめはぎが出てきて、鬼太郎は自分とのコマ勝負に負けそのままにすれば全身にキノコが生えいつしか腐っていく。というものだった。
鬼太郎兄ちゃんを元に戻して!というカズオにあまめはぎはもう1回コマ勝負しろと言い出した。その言葉にカズオは周りからの制止を聞くも鬼太郎を助けようとその勝負に乗った。その勝負は明日、この場所で行われる。

鬼太郎を楓花の能力で浮かせて、妖怪横丁まで運び入れる。その道中でもキノコの侵食は留まることなく背中にも生え始めていた。そのキノコはとってもとってもすぐに生え、治すことはここにいる誰もが出来なかった。やはりあまめはぎに勝つ方法以外に道はない、かもしれない。けれど楓花はもしかしたら自分よりも何千年も長生きし博識な天音に聞けばなにか分かるかもしれない、と猫娘達にカズオの特訓を任せ1人霊永神社へと向かった。

「きのこ、ねぇ…」「そう。なにか方法はない?」天音に事情を話どうにか出来ないかと相談すれば彼女は少し言葉を濁しながら「あると言えばある…でもね*」と答える。それがなんなのか楓花が問いかければ天音はある方法を教えてくれた。しかしそれは楓花も何故天音が言葉を濁していたのか理解するには十分なことであった。
朝日が登り楓花は鬼太郎の家の前へと降り立ち入口に飾られた簾を上げた。その中に一応鬼太郎も目玉親父もいたが、鬼太郎の方はたった一日でキノコがあたらから背中にかけて覆い尽くすほど生えていた。(うわ、)キノコは好きだがここまで密集して生えているその姿に拒否反応でおこる寒気が襲う。がそれを表に出すことは無い。「楓花ちゃんいい所に…、父さんと一緒に僕をあの山まで連れて行って欲しいんだ…」「…その格好で?」「あまめはぎは強敵だ、ここでじっとしているよりはきっと…」「楓花も鬼太郎を止めておくれ、今の鬼太郎には無理じゃ」連れて行って欲しいと頼む鬼太郎と今の格好では無理だと答える目玉親父、その2人の言葉を同時に叶える方法を楓花は天音から聞いていた。そして楓花は2人にその事を話していれば、何処からか聞き耳を立てていたねずみ男が入口に立ち俺様に任せろ。と意気揚々に言うとそのまま何かをせっせと準備していく(あんたがいちばん信用ならないのよ…それにさっきそろそろ食べ頃とか言ってたしまさかこのキノコを食べる気?)

ねずみ男が用意したのは確かに楓花が言った通り鬼太郎がすっぽり入る入れ物とそれに入れる水、そして水を沸かすための火だった。が、けれどもこれは(鍋ね、しかもちゃっかり具材も用意しちゃって完全に食べるようじゃない…)これで本当に元に戻れるのかと目玉親父に聞かれ楓花自身も今の絵面的に少し心配になってくる。けれど一応天音が言っていた通り鬼太郎をキノコごとお湯で茹でキノコもその菌も根絶やしにする、という方法には変わりない。けれどここまでしろとも言ってないのだ。(…何かあれば私が無理やり止めればいいか)鬼太郎の安否が心配になり渋る目玉親父に鬼太郎が口を開く「やってください父さん」「鬼太郎…」「あまめはぎの勝負に負ければカズオくんは足の裏の皮を食べられてしまう…それにねずみ男は全くと言っていいほど信用できませんが、楓花ちゃんのことは信用出来ます…それにもう時間が無い」「おい」鬼太郎の言葉に目玉親父はやってくれとねずみ男に言うと、彼は戸惑いもなく巻きに火をつけた。

巻に着いた火は轟々と燃え鍋の中にある汁がゴポゴポと音を出す。「熱い…!」(いや、これ燃やしすぎじゃない?)確かに菌もキノコも根絶やしにとは言ったがここまででは無いはずだ。大きな鍋で茹でられる息子の姿に自身の目を両手で隠す目玉親父の姿にいたたまれなくなり楓花は上から鬼太郎の様子を覗き込む。お湯の熱さに苦しむ鬼太郎に楓花はもし私が大嘘つきだったらどうするのよ…と彼のあまりにも人を信用しすぎる性格に少し呆れるのであった。
そのまま数十秒程だろうか鬼太郎のまわりに浮く無数のきのこを楓花は目にする(…天音の言ったことが迷信じゃなくてよかったわ)「鬼太郎、もうキノコは落ちたわ。もう大丈夫なはずよ、ほら捕まって」汁の中で朦朧としている鬼太郎に楓花は上から手を伸ばす。彼女に反応した鬼太郎は楓花の手を掴むとそのまま引っ張り上げられ約1日ぶりともなる地面へと足を下ろした。「おぉ!鬼太郎!無事でよかったわい!」と鬼太郎に泣きつく目玉親父を見ていれば鬼太郎と目が合う「ありがとう」「いいの、それに今回はあんたの生命力が弱かったら出来ないことだったわ」これがそこらの妖怪であったのなら絶対に無理だっただろう、と楓花は前に猫娘から聞いた横丁のなんでもランキングというものを思い出していた。(それにしても、)と楓花は鬼太郎から漂う鍋の出汁の匂いに少し笑いそうになるのだった。

急いでカズオの元へと行こうとカラスを集める鬼太郎を楓花は止めた。「早く行きたいんでしょ?ならカラスより私の能力を使った方が早いわ」楓花の言葉に頷いた鬼太郎の腕を彼女は掴むとそのまま自身と鬼太郎の体を浮かせる。「凄い…空を飛んでるみたいだ」「みたい、じゃなくて本当に飛んでるんだけどね。さて、一応あんたの腕は掴んでるけど振り落とされないよう気をつけてね」「え」それはどう言う、と言葉を放つ前に楓花はいつもの様な速さで山へと向かう。一応風の抵抗などはほとんどないとはいえ初めて彼女の能力で空を飛んでいる鬼太郎にこの勢いはキツく山に着くまで楓花が自分の腕を離さないことを祈り父親が振り落とされないよう残った片腕で抑えることで精一杯だった。

楓花の能力でカラスよりも早く山へ辿り着いた鬼太郎は、今にもカズオに襲いかかろうとしているあまめはぎに向かってリモコン下駄を飛ばした。その威力にあまめはぎは後ろへと飛ばされる。楓花は鬼太郎の腕を離し地面へと下ろすと、その後に続くように猫娘の近くへと降りた。突然の鬼太郎の乱入に邪魔をするなと抗議するあまめはぎだが鬼太郎は邪魔はしない。と断言するとカズオくんが次に使うコマは自分だと宣言した。一反木綿に巻かれた鬼太郎にカズオは「自転車と同じで大事なのはバランスだよ」とアドバイスする声に楓花の頭の上に乗っていた目玉親父は「ん?今自転車と言ったかのぉ?」と反応する。「さ、さぁ…」「回る自転の話じゃないかしら」咄嗟に猫娘と楓花はそれを誤魔化しコマ試合の行方を見守る。

試合は無事に鬼太郎が勝ちを収めた。自分のコマに弾き飛ばされ尻餅を着くあまめはぎを楓花達全員が囲む。そしてカズオが買ったら言うことを聞いてもらう、という約束であったため鬼太郎「子供をもう二度と襲うな」と言う。その言葉に渋つくあまめはぎに囲んだ全員が「いいな!?」と迫ると驚きからか彼の頭にくっついていたキノコは白くなりそのまま力尽きたように地面へと落ちる。それを見たあまめはぎは大きなショックを受け山奥へと帰って行った。「もう二度と来ないで欲しいわ…」「でもまたこの季節になったら出てきそうね」「その時はその時さ」