話の流れ12

最近、子供達が行方不明になっている。楓花がそれを聞いたのはいつも神社で遊んでいる子供達からで、クラスでももう何人も休んでいるのだと言う。彼女自身も確かにここ最近妖怪の気配を感知していた、そして子供が攫われる時全員が指しゃぶりと赤ちゃん言葉を使う…この現象に楓花は心当たりがあった(姑獲鳥…)昔山奥に封印されたはずなのに何故…。しかしそう考えていても何も始まることは無い。楓花は深夜に子供が攫われているという情報を元に薄暗い夜の空を飛んだ

街へと向いその妖怪を探している途中、楓花はたまたまカラスヘリコプターに乗った鬼太郎達と鉢合わせした。どうやら向こうも子供達を攫っている妖怪を探しているらしく、3人はそのまま一緒に妖怪を探すこととなった。そんな中、空を飛んでいて気になるものが目に入った。それは大きな鳥のような足跡で、暗闇の中目立つようにひかるそれは家の屋根や壁に付いていた。鬼太郎もその足跡からかすかに妖気を感じると話し、楓花はやっぱり…と確信した。それは目玉親父も同じで姑獲鳥の仕業だと話す。「姑獲鳥は何故そんな事を…」鬼太郎の問に楓花は今まで黙っていた口を開く「…それは、姑獲鳥の悲しい習性…と言うより業と言った方がいいかもしれないわね」「業…?」楓花が話そうとした時後ろから来る妖気に気づき振り返る。鬼太郎も遅れて気づき体を避けさせればそのスレスレの所を大きい鳥の形をした妖怪…姑獲鳥は飛び去っていく。「追え!姑獲鳥じゃ!」「はい!」楓花も頷くとその姑獲鳥の後を追った。

窓を破り部屋へと入っていった姑獲鳥は近くにいた猫娘を羽で弾き飛ばし赤子帰りした子供をその腕に抱く。その後ろ姿を追って楓花と鬼太郎もその部屋へと乗り込む。「やめろ姑獲鳥、その子を話すんだ」鬼太郎の声に姑獲鳥は反応し窓側に立つ3人に目を向ける。目玉親父は姑獲鳥の体は千年石出できていて物理攻撃がほとんど効かず、唯一の弱点はその体内にある羽を燃やすしかないと説明した。姑獲鳥の腕の中で助けてと泣く子供の姿に鬼太郎はちゃんちゃんで姑獲鳥の視界を封じまずは子供を助けようと飛び込む。「馬鹿!迂闊に近づいたら…!」楓花は鬼太郎へと手を伸ばし自分の方へ引き寄せようとする。しかしその行動も忠告も遅く、鬼太郎は自身の腹を姑獲鳥に蹴られ壁に叩きつけられる。そして直ぐに楓花の方へとその足は向けられたが、楓花は直ぐにそれを避け猫娘の方へと距離をとった。姑獲鳥の足跡が付いた鬼太郎は体が動かなくなり少しづつその大きさを小さくしていく。「鬼太郎!」「まずい…」楓花は直ぐに助けようとするがこの狭い部屋で姑獲鳥の攻撃を避けながら2人を助けるという事は難しく、迂闊に動くことも出来ない。そんな姑獲鳥は鬼太郎を見てもしかしたらこっちが自分の子供かもしれない、と鬼太郎と男の子をどちらも飲み込むと楓花達には目もくれないでまた外へと飛び去っていった。

楓花は猫娘を立たせると目玉親父を頭の上に乗せちゃんちゃんを掴むと窓際へ駆け寄りその飛んでいく方角を見る。そして猫娘もまだ動けると楓花に話し、3人は夜の街を駆けながら姑獲鳥の後を追った。風景は街から森へと変わるがそれでもその中を猫娘は駆け、楓花は飛ぶ。そしてその途中猫娘は勢いよく何かとぶつかった。それは楓花も知っている人物でやっぱりまたこいつか、と顰める。「ねずみ男…」「あんたここで何してるの!?」「猫娘、それに楓花まで!!おぉ、助けてくれよぉ2人ともぉ!!」手を擦り合わせ懇願するねずみ男の話を聞く。その内容は今回の騒動である姑獲鳥の封印を解いたのはやはりねずみ男で、姑獲鳥を使ってまた1儲けを企んでいたのだ。しかし姑獲鳥は自分の子供の事しか頭に入っておらず言うことを聞かなかった。というなんとも呆れる話で怒る猫娘の後ろで楓花は静かに睨みをきかせていた。

ねずみ男も加わり新たに4人となった所で猫娘は改めて姑獲鳥という妖怪は一体何なのかと聞いた。そして、楓花はあの時話しそびれた姑獲鳥の業を語った。その内容は悲しいものであのねずみ男でさえ何処か気まずいような表情を浮かべる。しかし同情していても何も解決することは無い、猫娘は自分が囮になるから楓花とねずみ男は鬼太郎達を助けて欲しいという作戦に1人はしぶしぶながらも乗っかった。姑獲鳥の巣へと辿り着きお互い目を合わせると二手に分かれる。猫娘は姑獲鳥に殺されそうになっていたあの男の子を助け近くの枯れ草の山へと静かに下ろすと、姑獲鳥に語りかける。もうあなたの子供は居ないのだと。そして楓花達はそれを聞き自分の赤ん坊がいない事に気づきたくない姑獲鳥の横をこっそりと通り倒れている鬼太郎の元へと向かおうとした、しかしねずみ男の失態でこの作戦は失敗する。鬼太郎とは目と鼻の先だと言うのに肝心なところで木の枝に足を引っ掛けその場で派手にこけたねずみ男。その声に姑獲鳥はすぐさま反応する「騙したな!!」怒りを露わにする姑獲鳥に猫娘は否定し本当に赤ん坊と共に向こうで幸せに過ごして欲しいと話そうとするが今の姑獲鳥にそれが届くことは無い。

楓花はその状況の悪さにすぐ鬼太郎を起こす。上体を起こし肩を揺らす、すると鬼太郎の閉じていた目がゆっくりと開く「おかぁしゃん…?」「遅かったか…!」「いかん!姑獲鳥の妖術で鬼太郎までもが!」姑獲鳥の術にかかった鬼太郎は精神が幼くなり目の前にいる楓花をお母さんと呼ぶ。その姿にねずみ男は驚き何言ってるんだよ!と叫ぶが元に戻ることは無い。まさかここまで進行が早いとは思わず楓花は姑獲鳥を猫娘1人に任せているこの現状はとても不味いものだと感じる「鬼太郎目を覚ましなさい!」「おかぁしゃん…どぉしたの…?」自分の事を母だと勘違いしている鬼太郎にどうしようかと頭を悩ませていれば、姑獲鳥の相手をしていた猫娘が駆け寄ってきた。どうやら木の枝の隙間に姑獲鳥をはめ込ませ、少しの間だけ身動きを取れないようにしたようだった。猫娘は鬼太郎を楓花から自分に向けさせると鬼太郎!と呼びかける。しかし返ってくるのは同じような返事だ、そして姑獲鳥は嵌っていた枝から抜け出すとこちらに顔を向け声を上げる。すると猫娘はまた呼びかけると鬼太郎に対して強く頬を叩いた「しっかりしなさい!ゲゲゲの鬼太郎!」

鬼太郎は小さく頷いた素振りを見せ再び閉じていた目を開ける。「猫娘、楓花ちゃん…僕は一体何を」それは今度こそ元の精神へと戻った鬼太郎で楓花は小さく一安心の息を吐くとこちらへと向かってくる姑獲鳥を視認し鬼太郎と猫娘の手を取るとその攻撃から避ける。逃げ遅れたねずみ男はそのまま姑獲鳥に蹴りを食らった。「無事で何より…ね」「2人ともありがとう!もう大丈夫!」地面へと着地した3人は改めて姑獲鳥と対峙する。鬼太郎の行くぞ!と言う合図に猫娘と楓花は返事を返すとそれぞれ姑獲鳥へと向かって走る。そしてまた攻撃を避け、猫娘を追いかける姑獲鳥に対して猫娘は攻撃は見きった!と言うと姑獲鳥に対して猫騙しを繰り出す。その後ろから鬼太郎は飛び出すと驚いた姑獲鳥口を毛槍で開いた状態に固定し体内へと潜り込む、そして楓花は姑獲鳥が鬼太郎を吐き出すために暴れないよう札を投げその動きを止めた。体内電気を使って羽を燃やす鬼太郎とその攻撃を受け甲高い声を上げる姑獲鳥を楓花と猫娘は見守る。

体内からはい出た鬼太郎は崩れゆく姑獲鳥を見る。すると自分の横を楓花が通り過ぎ姑獲鳥の方へと向かっていく。一体何を、と鬼太郎が楓花を止めようと手を伸ばそうとした時だ。姑獲鳥の何かを探すように彷徨う羽へと楓花は手を伸ばし三本の指でそれに触れる。すると姑獲鳥はその指をゆっくりと握ると「あぁ、私の…私の赤ちゃん…」と愛おしそうに声を放ち消えていった。その様子を見ていた楓花はその面の下で震える声を消すように言葉を吐く「おやすみなさい……お母さん」後半の言葉は誰にも聞かれることなく宙へと上り消えていった。赤ん坊から元の姿へと戻った子供たちを連れ森から広場へと戻る。楓花は猫娘が男の子に話した「ただいま、心配をかけてごめんなさい、と言える存在がどれほど大切なことか」という言葉に小さく息を吐く。その通りなのだ、自分のように無くしてから、会えなくなってから気づくのはとても遅い…。あの時姑獲鳥から感じた僅かな温もり、けれどもどこか懐かしいものに楓花は忘れないよう強く手を握った。

その帰り4人は星が光る下を歩く。これで姑獲鳥も天国で赤ちゃんと会えたかな?という猫娘の言葉に自分たちはそうだといいなという事を願う他なかった。「でも鬼太郎まで赤子返りした時にはもうダメかと思ったわ」「ごめん…でも、姑獲鳥の腹の中で一瞬母さんに抱かれているような気持ちになってしまったんだ。…死んだ母さんってこんなのだったのかなぁって」そう話す鬼太郎と猫娘の会話に楓花は静かに耳を傾ける。ふと猫娘はあの時の楓花の姿が頭をよぎった「そういえば、楓花はあの時なんであんな事をしたの?」「あんな事…?」「ほら、姑獲鳥に手を伸ばして…」不思議そうに聞く猫娘に楓花はあぁ、と納得したかのように声をもらす。その疑問は鬼太郎達も持っていて視線を楓花へと向けた「…赤ん坊の手ってね多少の誤差はあれども約人の指3本分くらいの大きさなの」だから最後まで自分の子供を探していたあの母親の伸ばされた手を偽物のそれで取った。「…向こうで会えるか分からないけれど、それに辿り着くまでの間は夢を見せたっていいでしょう?」言い方は少しぶっきらぼうとでも言うような言葉だらけではあるもののその中に何となく感じ取れるものがあった。そのため猫娘は「優しいのね」と楓花に返したが彼女はそれに対して少しの間を置いたあと鬼太郎達の方へと顔を向けた。仮面に隠れてその表情は一切読み取れないものの代わりに彼女の後ろに広がる暗闇が隠すように教えてくるそんなものは存在しないと。「そうだったら良かったんだけどね。でも残念あれは優しさなんかじゃなくてただの意地汚い私のエゴよ」自分の行為に相手を思うものはない。手を伸ばしたのだって何もかも思い出せなくなってしまった母親という概念と重ねてしまったからだ。本当に優しさからの行動であればもっと別の道を辿る。本人からの否定に戸惑いを見せる彼等に楓花はこれ以上この話を続けていればボロが出てくるように感じほんの少しだけトーンを上げると「早く帰りましょう」と3人よりも先に進み、もう一度口の中で「お母さん」と呟いた。


ここ最近休まず振り続ける雨のため楓花はずっと自室で本を読み御朱印を書き、あれをしたりこれをしたりと篭もりっぱなしの日々を過ごしていた。本人的にはそれで良かったものの他人からしたらそうではなかったらしく、たまたま散歩へと誘いに来た鬼太郎達に対して外に出るのが億劫なため断りを入れようとした楓花の言葉を遮るように背中を押して追い出すかのように一緒に行ってこいと送り出した。(後で覚えてろ…)その一連の流れを見た鬼太郎達は苦笑いを浮かべたりもしながら3人は並んで夜の街へと出掛けた。「最近雨ばかりね〜」「確かにそうだなぁ」「これが俗に言う異常気象ってやつなのかもね」そうやって3人が話していればふと鬼太郎の足が止まる。つられて猫娘と楓花も足を止めて鬼太郎が見ている先へと視線を移した。高いビルの上層部に大きなモニターがありその中では見知らぬバンドが歌を歌っている、どうやら鬼太郎の意識はそこにあるようだった。「この歌…」何かに引っ掛かりを覚える鬼太郎だったが楓花もそれは同じであった。ぺったらぺたらこ…そんな物珍しい歌詞が頭のどこかでひっかかる。こんな歌詞昔1度聞けば数年くらいは覚えているはずだけれど…確か、天音が……。「50回転ズの歌よ、世紀のニューリズム「ぺったらこ」すごくヒットしてるの」「何処かで聞いた事が…」「あら、鬼太郎も?」「鬼太郎、これは皿小僧の歌じゃ」「皿小僧…そういえば…」「あぁ…だから」やっと思い出せたそれに脳がスっとする。けれど何故人間が妖怪の歌なんかを知っているのか…いやそれよりも気づいたせいで少しめんどくさいことも思い出してしまった。妖怪の歌を盗んだのかと疑問を言う猫娘に目玉親父は楓花と同じ事を危惧する。「いかん歌を盗まれたと知ったら皿小僧が怒るぞ。皿小僧は怒りっぽい上に凄く強い妖怪なんじゃ」「怒りっぽい?」「…ただ怒るだけならいいんだけど、アイツら何やるかわかったもんじゃないわよ」天音がこの歌を楓花に教えたと同時に言った言葉は「アイツら元からほんっっとにめんどくさい妖怪だから怒らせない方がいいわよ。もっと大変な事になる」である。もしかしたらまだ皿小僧の耳には入っていないかもしれない、という話で楓花達はこれ以上この歌を歌わないように忠告するため急いで50回転ズがコンサートをしていた会場へと向かった。

たどり着いた場所では50回転ズが乗り込んだ車に対して大勢のファンと思われる人間が携帯を片手に写真を撮り声を上げていた。その凄まじさに楓花達は少し呆気にとられるがそうしている間にも車は言ってしまうだろう。鬼太郎が慌てて車の窓を叩き話を聞いてもらおうとするものの車内にそれが届くことは無くそのまま車が走り去って行く。「猫娘頼む」「分かったわ、楓花傘お願い」「えぇ」猫娘はピンクの傘を楓花に渡すと走る車を追いかけ車を止めることに成功し、楓花と鬼太郎はその車の元へと向かった。猫娘が車の上に乗っていたことに怒りスキャンダルになったらどうしてくれるんだと怒る50回転ズに対してだったらどうして盗作なんてしたのかと鬼太郎は言葉を挟んだ。「と、盗作やて!?」「なんやお前らは…」「あれはな、皿小僧という妖怪の歌じゃ」鬼太郎の代わりに目玉親父が髪の中から顔を出し答えれば彼らは驚き、その拍子からかその中の一人が「あのカッパの妖怪…」と口を滑らせた。「当たりね…」「歌を盗まれたと知ったら皿小僧が怒りますよ」「な、何を言っとるん!?あれは俺達のオリジナル曲や!」「せやせや」「あれは妖怪の歌です。あくまでも歌い続けるというのなら何が起きても知りませんからね…。行こう」忠告はした。なら後でどうなってもそれは自分たちのせいというものだ。聞いてくれるかはまた別としてだが。鬼太郎の言葉に頷いて楓花は駆け寄った猫娘に傘を返す。雨はまだ止みそうになかった。

その次の日天音の使いの為というのと雨宿りという目的のため楓花はゲゲゲハウスを訪れていた。目玉親父の言う通り雨が続けば心までジメジメしてくる、湿気のせいではねやすくなった髪の毛に触れながら鬼太郎と共に同意していればそこに猫娘が新聞を持って駆け寄ってきた。「大変よ!」「おぉ!どうした猫娘」猫娘の話によれば50回転ズが行方不明になってしまったらしい。ちゃぶ台に置かれた新聞を除きみればそこにはたしかにでかでかと「50回転ズ行方不明」と書かれていた。誘拐事件か!?とも載っているが誘拐は誘拐でも犯人は十中八九人間ではないだろう。「皿小僧の仕業じゃな」「忠告したんですから僕はもう知りませんよ」「私も」これは完全に自業自得だ。私利私欲のために勝手に妖怪の歌を使って勝手に捕まったのだから鬼太郎の言う通り楓花もこれに対して何かもしてやろうだなんて気にはなっていなかった。しかし猫娘は新聞の下に乗っている記事を指す「でもこういうのも載ってるのよ…。ぺったらこの歌を聴いて元気になった病気治療中の少年の叫び「50回転ズを早く返して!」って」「……」「どうする鬼太郎」鬼太郎はその記事を数秒凝視した後小さくため息を吐いた。その意味を理解した楓花は相変わらず他人に優しいんだから…と呆れを持つが、それは今に始まったことではない。ちらりとこちらを見た鬼太郎と目が合う。楓花はその表情を買えないままその言いたいであろう内容の返事としてしょうがないという意味も込めてひらりと1度だけ腕を上げ手を広げた後立ち上がる。その仕草に気づき今度は鬼太郎が立ち上がるのだった。

着いた先は皿小僧が住むと言われる池で、そこにかかった橋の上に楓花達は立っていた。鬼太郎が「おーい!皿小僧!」と呼ぶが返事はなし。そして頭の上に乗っていた目玉親父がダメ出しをした。皿小僧は怒ると何をしでかすか分からない、1度怒りだせば何をしでかすか分からずもしかしたら人質に取られている50回転ズに危害が行くかもしれない。そのため自分たちが下手に出なければいけないのだった。その話に自分とはあまりにも相性が悪いと感じた楓花はやっぱり来なければよかったかもしれないと言う気持ちで顔を顰める。「皿小僧さーん!出てきてくださーい!」返答なし「もっと下手に出ろってさ」「さ、皿小僧様ー!お願いですから出てきてくださいませんか?」ここまで言わすか…と思っていれば池に突然皿がひとつ浮かぶ。そして皿小僧が顔を出した。鬼太郎達に向かって誰だお前?と聞く皿小僧に目玉親父は慌てて鬼太郎の頭の上から手すりの上へと飛び移ると膝をつき鬼太郎と同じように下手に出て名乗りを上げる。そんな自分の父親にそんなペコペコしなくてもと鬼太郎は小さく耳打ちをするが目玉親父に言われ自分も渋々とではあるものの傘を地面に置き膝をついて挨拶をした。そんな姿に皿小僧は機嫌を良くし、近くの岩へと腰を据える。「なかなか礼儀正しいじゃねぇか。で?何の用だ?」「50回転ズはどこにいるんです?貴方がさらったんでしょう?」「なんだ?いきなり犯人扱いか?」「いえいえ滅相もない!これは大変失礼致しました」鬼太郎の失言に目玉親父は慌てて謝るものの皿小僧の切れやすさというものは異常ですぐに怒りを露わにすると鬼太郎達に向けて勢いよく皿を投げ始める。楓花は猫娘ともにしゃがみその皿を回避するが皿は刃物のように手すりにつき刺さりこのままではタダでは済まないだろう。どうすればこの事態を乗り越えられるかと思案していた時隣にいた猫娘がよろよろと立ち上がり手すりから顔を出す「あの〜もし良かったらお茶でも飲みながらゆ〜くりお話でも〜…」「…あんたは?」「猫娘で〜す!それでこっちが、」そう言い楓花の腕を引っ張る。楓花はまさかここで自分も出されるとは思っていなかったため小声で私も!?と聞けば当たり前でしょう!?とまた小声で返され立ち上がらされてしまった。来なければ良かったと今度は確信で思う。しかしだからといってこの状況がどんな意味をなしているのかわかっているため嫌だと理由だけでは帰れない。いつもの楓花の状態で皿小僧と接すればまた期限を損ねるのは目に見えていた。そのため頭の中でいつも笑顔な雛姫を何度か思い浮かべ固まった表情筋と声のトーンが動く事を信じて無邪気な笑顔をつくった。この間わずか1秒足らず。「楓花です!」にっこり。子供のような無邪気な笑顔と無邪気な声そしてそれっぽく見えるようにおねだりをするように両手を合わせる仕草。我ながらよく動いたと、感心していれば鬼太郎達から刺さる視線。それは全て驚きからのそれだった。「貴方そんな表情もできたの…?」「…一応ね」ただし長くは持たない。猫娘と共に「よろしくお願いします、皿小僧せんせ!」と呼べば皿小僧は先程までの怒りを消し上機嫌へと変わり、皿を投げる手を離した。そしてそのまま畳み掛けるように楓花は猫娘と共に皿小僧に対して一つ一つ褒めていき、それと同時に楓花の心の中で色々と軋みヒビが入る音が聞こえてくる。2人の言葉に完璧に機嫌を直した皿小僧は「まぁ話だけだったら聞いてやってもいいかな〜!」と頭に乗った皿を撫でつつ答えたのであった。
川辺に葉っぱで簡易の屋根を作りそこでそれぞれ嫌々ながらも皿小僧をもてなしていく。すぐに買って持ってきた果物や饅頭を置き、鬼太郎は皿小僧の肩を揉み、猫娘と楓花は皿小僧の両隣に座って大きな葉でゆっくりと皿小僧を扇ぐ。さぁさぁ好きなだけ!という目玉親父の言うとおりに皿小僧は饅頭を手に取る。「それであの…50回転ズは、」そう鬼太郎が聞いた途端皿小僧は口に入れた饅頭を喉につまらせそれを咳き込みながら何とか飲み込むとまたもや怒りを顕にしながら鬼太郎の胸ぐらを掴む。「お前俺を殺す気か!?」「あの…お茶を」「おぉありがとうよ」すぐさま猫娘がフォローに入れば機嫌を良くして猫娘と話し出す。そんな皿小僧に目玉親父が下手に出つつ50回転ズのことを聞けば残念なことにその声は届いておらず皿小僧は楓花も巻き込んで話を進める「あんた妖怪横丁に住んでるんだって?」「え、えぇまぁ…」「あんたもかい?」「……そうですよ」嘘である。誰がどう聞いても完璧な嘘である。しかし楓花はこの面倒臭い妖怪を自分の家でもある神社に持って帰りたくなかった。いや、もしかしたら天音達がどうにかしてくれるかもしれないがそれでもこのカッパを連れて帰るのだけは嫌だった。そんな嘘とも知らず皿小僧は「1度行ってみてぇなぁ」とお茶を啜る。自分達の話は何一つ聞いないと知り倒れこむ目玉親父と鬼太郎を横目にこれはいつまで続くのかと楓花は笑みを浮かべる口元を引き攣らせた。

場所は移って妖怪横丁。なかなか賑やかなところだなぁと話しながら先頭を歩く皿小僧の後ろで楓花は先程までうかべていた笑みを全て拭い去り少しむすりとしたような表情を浮かべながらついて行く。なんだったら妖怪横丁に着く前にこっそりバックれてしまおうかなんて思ったもののそれは許されてはいないためまた一つため息を着くと自分の後ろを歩いている鬼太郎を見る。そして小さく「このお代は高く着くわよ」と言えば彼は心の底から申し訳なさそうに「本当にごめん…」と謝るのであった。そんな中その道中でハプニングが起きる。砂かけばばあと話していたアマビエが皿小僧を見て一言「カッパ?」と呟いてしまったのだ。マズいと思ったがもう手遅れまたもや怒りを顕にしながら「俺は皿小僧だ…カッパなんかと一緒にするな」というがアマビエはその違いが分からないため「一緒じゃん」とさらに火に油を注いだ。その言葉にさらに怒った皿小僧は今度はアマビエに向かって皿を投げる。近くの酒瓶が割れ、提灯が割かれ、アマビエが急いで隠れた気にはたくさんの皿が刺さる。楓花達は何とか機嫌を戻そうと声をかけるが投げる手は止まらない。「アマビエお前も謝るんじゃ!」「なんであたいが…!ぴーーー!あうち!」「うわっ痛そ…」皿の1つがしっぽに当たり、楓花は思わず声を漏らす。鬼太郎達は50回転ズを助けたいという意思とそのためにも皿小僧に謝って欲しいと話し、猫娘は妖怪横丁のアイドルらしくにっこりと!とアドバイスを送った。すると幾秒経ってから木の裏から白旗が出てきたかと思えば猫撫で声のアマビエが皿小僧に擦り寄りながらできる限り可愛らしく謝り、その場は何とか丸く収まることが出来た。「父さん…僕なんだか気疲れしてクタクタです…」「わしもじゃ…」「帰りたい…」この先まだ長くなりそうな予感にそう呟く楓花も連れ皿小僧と鬼太郎達は砂かけばばあのアパートの一室へと入っていった。
中では傘化けなどが芸を見せ、楓花を含めた妖怪横丁の女妖怪が皿小僧を囲むようにしてお酒を注いでいく。機嫌を損ねない為に口端を引き攣らせながら嘘で固めた褒め言葉を言い合っていき、そしてバレないように最低だと本音を言うのであった。楓花も笑顔を浮かべるだけではあるものの内心は心の底からの嫌悪感で皿小僧を罵り、思わず口でも言ってやろうかとも思ったもののそれは目の前でひたすら手を合わせて申し訳ないという表情を作り出す目玉親父と鬼太郎の姿で思いとどまる。だから代わりに早くこの地獄のような茶番を終わらせるためにも楓花は口を開く「それで皿小僧先生…50回転ズは何処に…?」「俺しか知らない隠れ里さ」「…それはどこにあるんですか?」「そうだなぁ、相当気分も良くなったし教えてやってもいいかな。最後俺と人間界でデートしてくれたらな」楓花と猫娘の肩に置かれた手に2人は思わず鬼太郎達を見た。彼らはすぐ様また手を合わせる。その姿に楓花は頬が引く付き、猫娘は半泣きになるがそれでもこれもあの少年のためと今度はどこに行きましょうかと震える声で聞けば皿小僧はそんな周りの気持ちも知らず楽しそうにカラオケに行きたいと提案した。

人間に出れば雨はまだ振り続けその量と強さを増し、ついには車が水没するほどとなっていた。歩道橋の上に立ち周りを見渡すが人の気配もなく、これではカラオケ店もやっては居ないだろう。異常気象のせいかと話す目玉親父に皿小僧は違うと反論した。どうやら皿小僧の歌は雨乞いの役目を果たすらしく50回転ズがそれを多くの所で歌ったため雨は降り続いているのだという。しかも50回転ズは拐われて歌えはしないもののその代わりにCDやカラオケがその役目を果たしてしまっているらしい。このままでは歯止めが聞かなくなり日本語のものが水没してしまう可能性がある。「先生雨をやませるにはどうしたらいいのです?」「歌の五番を歌えばいいんだよ」「五番?あと歌は4番までじゃ…」「それがあるんだな俺たちにしか知らない五番が」鬼太郎がすぐ様教えて下さいと皿小僧に頼むが向こうが出した答えはやだという一言であった。その言葉に鬼太郎は先程まで下手に出ていた態度をやめ強めの言葉を放つが、皿小僧は面白そうに笑い「教えて下さい…だろ」と口に出す。このままでは50回転ズを、助けに行けないと察した鬼太郎は小さく頭を下げる。しかし皿小僧はそれでは足りずに頭の上に乗っていた目玉親父を掴むとそのまま地面に落とす。すぐさま鬼太郎が地面スレスレのところでキャッチし、怒りを露わにするがそこを目玉親父が止める。鬼太郎の手の中で手を付き教えて欲しいと皿小僧に乞う、けれど皿小僧は今度は頭も下げろとその足で目玉親父を踏み始めた。人間のためだけにこんなにも我慢する目玉親父を面白がり皿小僧はならもっと人間を酷い目に合わせてやると話す。楓花はもう見ていられないと前へ出ようとした時それよりも早く鬼太郎が動いた。皿小僧の顎目掛けてアッパーしたのだ。(鬼太郎が切れた…)その衝撃で皿小僧は後ろに飛ばされるがすぐに起き、俺には向かうとはいい度胸だと立ち上がる。目玉親父は鬼太郎は皿小僧に刃向かったわけではない、ただ50回転ズを返してくれればそれでいいんだと弁解するものの皿小僧はその要望には聞かず、もっともっと雨をふらせてやると言い放つと瞬時に手すりに登り雨乞いの歌を歌い始めた。すると今まで降っていた強さとは比較にならないほど雨は激しさをまし、水のかさが増していく。「やめろ皿小僧!」「うるせぇ!俺に命令すんな!いいか俺は客だぜ、来いと言うから来てやったのにこの仕打ち。許せん俺は帰るぞ!あばよ!」その言葉を最後に皿小僧は手すりから水の中へと飛び込み、鬼太郎が慌てて身を乗り出し下を見るがその姿はどこにも無かった。「しまったとうとう皿小僧を本気で怒らせてしまったぞ」「2人とも父さんを頼む!」鬼太郎は楓花にそう言うと自分も同じように水の中へと飛び込んで行った。楓花は手すりに近づいて2人の妖気を追う皿小僧は何故か途中で止まっていて鬼太郎はそんな皿小僧の所へとまっすぐ向かっていく。そこまでは言いものの楓花は少しの危惧を抱える。皿小僧は水中を主に生活をしている種族、そして今回の戦いは水の中だろう。水中の中での身体能力としては圧倒的に鬼太郎の方がフリとなっているが果たして大丈夫であろうか。しかし楓花のその思いは杞憂となる鬼太郎が潜って次に勢いよく水から出てきたのはちゃんちゃんこに体を縛られ身動きが取れなくなった皿小僧だった。その勢いは殺されぬまま皿小僧はちゃんちゃんこによって逆さまに落とされ楓花達のいる歩道橋に墜落。頭に乗っていた皿は無惨にも粉々になった。よく見れば他にも甲羅や水かきもひび割れ破られている。(なるほど…歌のとおりにやったのね)楓花が感心していれば鬼太郎も皿小僧に続いて水から飛び出し倒れ込む皿小僧に歌の五番を歌い雨を止めろと迫れば皿小僧は今までの態度とは打って変わって従順になりその言葉の通り五番を歌えばあんなに強かった雨は止み、雲に隠れていた月が顔を出した。

雨をやませて50回転ズの居場所へと案内させればたどり着いなのはあの池の中。鬼太郎と皿小僧だけが潜り、帰ってくれば50回転ズと何故かねずみ男を連れていた。陸へと上がり目玉親父は50回転ズにこれに懲りて恥ずかしいことは辞めるんじゃなと再度念を押し、彼等は一応は反省したようで3人とも「はい」っと返事を返した。「行きましょうか」「やっと終わった…」「頑張ってね」「飛んだ赤字だったよ…」50回転ズに背を向け歩き出す。あぁ早く帰って寝てしまいたい…と心が疲労感でズタズタになっている楓花に対して鬼太郎は申し訳なさが尚残りつつ苦笑いのような笑みを送るしかない。そんな彼の頭の上では目玉親父が腕を振りゲゲゲの歌を歌う。その声が50回転ズにまで届いてしまったらしく彼らはまたしても売れるとか何とかと言葉を漏らす。残念なことに反省はなかったようだ。楓花達はそんな3人に対して振り返り「こら!!」と口を揃えて注意するのであった。


神社の戸を叩く音が聞こえ楓花が戸を開ければそこに居たのは藍坊主。神社にたどり着くなんて珍しいなんて思いつつ、そこそこ長い付き合いでもあるからか楓花は瞬時に嫌そうな顔を浮かべると何事も無かったように戸を閉めようとする。しかしそれよりも早く戸は藍坊主の手によって止まり、男と女の力の差のためまた開かれた。「おいおい急に閉めようとするなんてひでぇじゃねぇか」「あんたがここに来た理由を想像してなんだから妥当だと思わない?」そんな軽口を叩きつつ楓花は渋々と外に出て藍坊主に本題を話させる。内容はやはり妖怪の封印。しかも本人達は無自覚で人間の子供達まで巻き込まれているかもしれないという話だ。それを全て踏まえ藍坊主は楓花に協力して欲しいと頼み、楓花は今回の事に1度考える素振りをしてからわざとらしくため息を吐いた「…いいわよ」めんどくさいだのなんだのと思い、言っているし今回のことだって断るのは簡単だ。しかしそれ以前の問題があることに気づいた楓花は受けるしかない。なんて言ったって目の前にいる藍坊主は楓花が前の世界を含めた中で1番の方向音痴なのだから。まずはクミちゃんに会いに行くといい人伝いに仕入れたであろうその情報だけで彼がその家に辿り着けるとは到底思えなかったのだ。

最近お互いの近況報告をし合いながら街中を歩いていればその姿を鬼太郎達に見られ声をかけられる。そこで楓花と藍坊主は妖怪の事を隠しつつ藍坊主が会いに行こうとしている人間がいて自分はその道案内役だと言えば3人はなんて珍しいんだとそれぞれ驚きを出す。そして話の流れで楓花が前に目を離した隙に藍坊主がたまにふらっとどこかへ行ってしまって困った時があったと言った結果鬼太郎達も着いていくという結果に落ち着いた。「よくどっかに行くから助かるわ…ほんと」「んな子供みてぇな…」「子供より酷い時あるの自覚してくれない…?あの時の事まだ根に持ってるんだからね」楓花の根に持つ発言に藍坊主は思い当たるものがあり、あ、あー…そんな時もあったな…なんて言いながら楓花から目をそらす。そう、あの時は酷かったのだ。藍坊主に連れられて妖怪封印…という所までは良かったものの何故か気がついたら彼は居なく、結局合流したのは楓花が1人で妖怪を倒しボロクソになっていた時であった。本人に悪気はないもののさすがにあれは引き摺る、妖怪の前にお前を封印してやろうかとさえ思ったほどに。そんな出来事は2人しか知るものはおらず何があったのかと聞く猫娘にいつか教えてあげると楓花は藍坊主を睨みながら言い、藍坊主はそれに対してははは…と気まずそうに頭をかいた。そんな相変わらず腐れ縁のように仲のいい(楓花は否定するが)2人と自分の知らない2人だけの話にまたモヤモヤとしたものを抱える鬼太郎。そんな話をしながら4人は探していた少女が住んでいる家へとたどり着いた。「大林久美…おぉここだここだ!いや〜助かったぜ3人とも」「お礼なんていいわ、ほっとけないでしょ?方向音痴の藍さんが人の家を探そうなんてゆうのを」「無謀だよね」「本当にね」私はちゃんとお礼も貰おうかしらなんて冗談半分で言っていればそこにお坊さん!?という別の声が届く。それは藍坊主の目的の1人である少女で、藍坊主はここで楓花にだけ話していた自分と久美達が出会った経緯を鬼太郎達に話した。何回聞いても藍坊主がこの子供達の元にたどり着いたのと目的地であるバスまで送り届けたのは奇跡としか思えない。それは鬼太郎達も同じで3人はお互いに奇跡だねと返した。「おいおい俺は方向音痴だけど目と耳だけはいいんだぜ?霧の向こうにバスのエンジン音がバッチリ聞こえたのさ」「それがいつも発揮されれば苦労しないんだけど…」「ま、まぁそれとこれとは話が別ってもんさ」楓花の小さなお小言に焦りを混じらせながら返せば久美はそんな藍坊主の腕を組んで皆でお礼をしたかったのにいつの間にか消えてるんだもん…と言いつつ一緒にいた2人にもこの事を伝えなきゃと嬉しそうに話す。そんな久美を藍坊主少し濁らせながら同意しつつ最近変わったことはないか、と本題に入った。しかし帰ってきた答えは特に何も無く、楓花はそんな2人のやり取りを見て(なら藍坊主の杞憂…でもこいつの感が外れることなんてあまりないし…)と影すら現れない妖怪の存在に片眉を上げた。
その後少し久美と話してから4人は帰路に着く。その途中で鬼太郎は1人立ちどまりそろそろ本当の事を教えてくれてもいいでしょう?と藍坊主と楓花に問いかけた。「あぁ。気づいてたんだな…実はあの子たちと出会った森に行ったのはそもそも別にあったんだ」「別の理由?どんな」「そりゃあお前、俺の仕事と言ったらよ」「んー…あ、」凶悪な妖怪の封印。

次の日もう一度久美の元へと訪れた藍坊主たちが聞いたのは彼が危惧していた子供たちの1人が病院に運ばれたという話であった。猫娘は一反木綿を連れて病院へ、そして他の3人はその子供の家に1度訪れた後楓花が微かに残された妖気を辿りどこに潜伏していたのかを割り出した。たどり着いた先は学校の一角で、藍坊主は地面に手を着けば確かにここに樹木子がいたのは間違いなかった。一旦5人は妖怪横丁へと戻り古今の力で樹木子の情報を集める。目玉親父が樹木子について説明した後藍坊主は口を開いた「俺はやつを探しにあの森に行ったんだ」「その森の樹木子は…?」「俺が久美ちゃん達を送り届けたあと見回った時にはもう居なかった」「それで彼女たちに会いに来たのね」樹木子と子供たちの関係はただの偶然で気のせいだと良かったのだが今1人が樹木子に襲われた以上やはり藍坊主の感は当たってしまった。「森で見た子供たちをおって街まで来たって事なのかな…なんでわざわざ」「…何かあの3人に共通するものがある…もしくは何かをきっかけにして出来てしまった…そう考えるのが妥当なのかもね」楓花の考えは的を得て居た、しかしその何かも共通するものも分からない。ただ無差別であるのなら学校を拠点にしていた時点でもっと多くの被害があったはずなのだ、それがなかったということはつまりあの3人に何があるということ。それはここにいる全員が気づき初めていたため藍坊主の頼みもありあの子供たちのいる町を虱潰しに探すこととなった。

全員と別れ楓花は一つ一つの木に手を当てて妖気を含んでないかを探す。しかし古今にも載っていたが樹木子という妖怪はその姿を表すまでは妖怪を感じ取りずらく見た目も普通の木そのもので、これは時間がかかるわね…と1人悪態をつく。そして空がオレンジへと染まり何本目かという木に差し掛かった時、突然感じ取れなかった巨大な妖気を感じ取った。何故今まで気づかなかったのかと思うほどのそれに楓花は急いで人目のつかない場所へと走ると人間に見つからないように妖気を纏わせその場所へと飛んだ。
楓花が飛んだ先で見えたものは妖気の元である樹木子と地面に倒れる子供と鬼太郎、そして樹木子の枝が向かう傷だらけの藍坊主の姿。楓花はその勢いを落とさぬまま枝と藍坊主の間に着地するとすぐにその伸ばされた枝を袖から取り出した小刀で切り落とし藍坊主を後ろにさがらせた「楓花!」「あんたはそのまま下がってなさい!」小刀を向ける楓花に分が悪いと感じたのかはたまた目的を果たしたからなのか樹木子は奇妙な声を上げるとすぐさま地面へと潜り込んで行った。慌ててその穴を覗くがもう遅く、見えるの暗闇だけ。もう追っても間に合わないと感じた楓花は今度は倒れている鬼太郎元へと行く。そこでは藍坊主と目玉親父が鬼太郎に声をかけているが彼に反応は無い。その顔は誰が見ても血の気のないものでその原因が鬼太郎の顔や体に刺さった無数のトゲのせいだと分かると楓花は子供のために1度救急車を読んだ後すぐに横丁へと駆け込んだ。

妖怪アパートの1階にある長椅子に横たえられた鬼太郎を砂かけばばあはカワウソに急かされながらもその体に刺さった枝針を1本1本慎重に抜いていく。楓花はその様子を見つめながら藍坊主に話しかける「ねぇ本当に何かないの?子供から聞いた事とか」「久美ちゃん達から…?」そこで考え込み、そしてその顔はハッと何かを思い出したかのような表情へと変わった。そして藍坊主は子供たちが自分と会う前にザクロのような見たことも無い木の実を食べていた事を口に出す。「あの時食べたであろう木の実はやつの体の1部だったんだ」「という事はその実を食べた人間の血を吸うのが樹木子にとっては1番好ましい血の吸い方ってわけね」木の割になんて言うグルメ精神。これで今まで不思議に思っていたことも樹木子の生態も分かった。藍坊主はそうと分かると樹木子を封印するためその場から立ち去ろうとし、それを目玉親父がお前だってやつの攻撃をかなり受けただろうと慌てて止めるが藍坊主は1ついい案を思いついたと返し歩みを進める。そんな彼に楓花は全く、と呆れつつもこの怪我人を放っておけるはずもなく藍坊主の隣まで歩くと私も手伝うわと藍坊主に伝えた。
作戦のため楓花と猫娘達は近くの物陰に隠れ藍坊主は1人捕まった久美を助けに向かう。そして久美の代わりに自分を捉えさせるとわざとその血を吸わせ、それを利用して樹木子の体内にある弱点を見つけ出したのだった。なんて危ない作戦なんだと楓花は眉をひそめるが実際それ以外の方法は思いつかなかったためそれに縋るしかない。(もう時間は充分でしょう)これ以上は本当に危ないと楓花はその場から飛び出し皆!と声を上げた。すぐに子泣きじじいとぬりかべが樹木子に体当たりをし、捕まっていた藍坊主を解放させると地面へとそのまま落ちた藍坊主の元へ楓花と猫娘は駆け寄りその体を起こした「今回は危険な橋すぎるわよ藍坊主…」「サンキュー…」「無茶よわざと血を吸わせて樹木子の急所を見つけ出そうなんて」「だが見つけたぜ」しかし藍坊主は前回受けた傷と今回の作戦にできた傷により満身創痍で立ち上がることがやっとであった。あともう一息…しかしそうしてる間にも樹木子と対峙してるぬりかべは辛そうでそう長くは持たないというのは誰の目にも分かる事だった。「藍坊主御札貸して。私がやるわ」「いや、正確な場所は俺しかわからねぇ」「でも…」「俺の仕事だ」そう言うと藍坊主は樹木子の方へと駆けて手に持っていた札をその急所である部分へと貼り付けた。しかしすぐに枝が藍坊主へと飛んできてその勢いのまま後ろへと飛ばされる。札が浅かったのだ。あと少しという所で今度は枝針が藍坊主を襲い、間一髪で避けたところでそれと交差するように別の針が御札が貼ってある場所へと突き刺さった。楓花がその方向を見ればそこにたっていたのは砂かけばばあとカワウソに支えられ立っている鬼太郎だった。「鬼太郎!」「藍兄さんそれを!」藍坊主は鬼太郎が指していた六角棒を持つと勢いよく御札の中心へと投げ、突き刺した。すると樹木子は苦しそうに規制をあげる。そして間髪入れずに鬼太郎はリモコン下駄でその六角棒を後ろから叩きどんどん体内へと潜り込ませる。そしてついに御札が樹木子の弱点へと触れると樹木子はその体を光らせ破裂するかのように煙をあげると札の中へと封印された。喜びの声が聞こえる中鬼太郎はほっとしたのかくらりと体のバランスを崩す、しかしすぐさま近くに移動していた楓花がその体を自分の方へと引き寄せ支えた「ちょっと…」「呆れたやつだぜお前も…」「まだ半分も回復しとらんというのに目が覚めた途端行くといいだしおってなぁ」「蒼兄さんが無茶すると思ったら寝ていられたくってさ…」「無茶はどっちも同じじゃよ」「その通りよお互い人の事は言えないわよ」目玉親父と楓花の呆れを含んだ言葉にその場にいたものは笑い、楓花も呆れたように小さく笑みを作った。そしてそんな中久美は助けてくれたお礼にと蒼坊主にピンク色の小さな小袋を渡し、蒼坊主は少しの照れくささを含みながらそれを受け取った。

妖怪横丁へと一行は戻ると妖怪アパートの前に置いてある椅子にそれぞれ座り、ぬりかべの塗装の手伝いや傷だらけのため包帯を巻いた鬼太郎と蒼坊主の姿を見て今日はいつもより皆こっぴどくやられたなと話す。ふと鬼太郎は「そういえば久美ちゃんからのお礼ってなんだったの?」と聞けば藍坊主はその袋から一通の手紙とひとつの小さいものを取り出す。楓花はそれがなんとなく気になり蒼坊主の方へと寄ると手紙の内容と送られたものを知る。そして(無知というのはなんて強いのかしら)と子供ながらの考えを感じ取りながら小さく笑いを漏らし、そんな彼女に周りは首を傾げるばかり。「良かったじゃない、大事に使いなさいよ。それは治らないでしょうけど」「だな」久しぶりに面白いものを見たと感じる楓花の横でその大元である蒼坊主は声をあげて笑う。しかしその笑いはすぐに消えた。「…蒼兄さん何か気になることでも…?」「あぁ…いくら樹木子が強敵でも普通はあそこまでの力は無いはずだ…どうも引っかかるぜ」「…そう言われてみれば確かにね。あれは普通とは違ってもっと深い何かに…」何かに似ていた。自分の知っている何かに。しかしその正体がどうしても笑からず、頭にモヤがかかったかのように動くことができない。そんな楓花の思考を止めるようにバケローが口を挟んだ「突然だがその事で気になる妖怪ニュースが入ってるんだ。どうやら暴れだしたのはあの樹木子だけでは無いらしい」「どうゆうことだ?」「何故か各地で封印されていたはずの樹木子が同時に活性化し始めているらしい、飛騨の天狗ポリス達も全国でその対応に追われていると…」「なんじゃと?」「でも蒼さんのおかげで樹木子の血の吸い方や急所が見つかったんだもの、きっと天狗ポリス達が全国の樹木子をやっつけてくれるわ」「そうだよね」「…だと言いけれど何か嫌な予感がするわね…」「あぁ…それこそ何か大事が起きそうな」その予感からか楓花は突然自分の背中を寒気が這い回る。反射的に後ろを振り返るがそこには当たり前のように何も無い。どうかしたか?そんな蒼坊主の声に楓花はなんでもないわと返しさっきの寒気は気のせいだと思い込む。いやしかしきっと気のせいなのでは無いのではあろうだって先程から自分の左腕に寄生する大禍の力が存在を見せつけるように蠢いているかのように感じているのだから。