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近づいてくる敵を片っ端から蛇腹剣で倒していく。普通の人間ならば力加減を考えなければいけなかったが、今彼女たちと対峙している奴らは魔法で作られた人形のようなもの。命なんてもの存在しない。
だからリンカはなんのためらいもなく四肢を切断し首を吹っ飛ばす。

『倒しても倒しても出てくる…』
『なら一斉に倒したらいいんじゃない?私のヒーロースキル使いましょうよ』
『それは駄目。まだまだコントロールが上手くいかないから仲間まで巻き込んじゃう』
『別に良いじゃない』
『私が良くないの』

マリアと念話で話しながらも蛇腹剣を振るう手は止めない。仲間に襲い掛かろうとする敵をセルピエンテ・エリダで引き寄せ倒す。
砲台を見ればどんどん魔力エネルギーが貯まっていく。時間はもうない、しかしきっとナツは止めてくれるはずだとリンカは信じていた。

その時だった。エネルギーをためていた砲台が根元から崩れてきたのだ。みるみる崩壊していくジュピター、ナツが中に設置してあった魔水晶を破壊したという証だった。

「脅威はなくなった…けど」
「リンカどうかした?」
「いや、ちょっとね」

相手がジュピターとこの幽兵だけが手とは思えない。まだ別に何か隠し持っているのでわないか…そう疑わずにはいられなかった。

「おい!なんかおかしいぞ!!」
「た‥立ち上がった!!?」

リンカの予感は残念ながら当たってしまった。幽鬼の支配者のギルドはもともと移動用に生えていた6つの足を立たせると、建物を水平に移動させパーツを変えていく。

そして出来上がったのはリンカが前の世界で見たことのあった戦隊ヒーローに出てくるようなロボット。それが一歩、また一歩FAIRY TAILのギルドに近づいてくる。
すると、ある程度近づいたかと思えば今度は空中に文字を書き始めた。

「魔法陣だ!!!!この建物自体が魔導士だというのかい!!?」
「なにィィ!!?」

しかもあの魔法陣は煉獄砕破という禁忌魔法の一種。さらにはあの巨人のような大きさである建物から生み出される魔法陣のサイズはここら一帯だけでなく少し離れたカルディア大聖堂まで消滅するほどの威力を持っていた。

『ねえボイちゃん…あれが発動するのってどれくらいかかると思う?』
『ソウデスネ…10プンテイドダト ヨソウサレマス』
『…それまでにあの三人が止めてくれればいいんだけど』

今ここを動くわけにはいかない、だから乗り込んだナツ達を信じるしかできない。するとリンカの目にルーシィの姿にまねたミラが外に飛び出していくのが見えた。
自分をエサに時間稼ぎをしようとしたのだ

しかしそれはジョゼに通じることはなくすぐに見破られてしまった。さらにはそれだけに収まらず、ジョゼは自分たちを欺こうとしたミラが許せず建物から生える手で無造作に彼女を掴み上げた。
その光景にリンカはたまらず助けに行こうとするが、その道を何十という数の幽兵が塞ぐ。

(落ち着け…焦るな、今ここで取り乱しても誰も助けられない)

強く挟まれ苦しむミラが見える、今すぐ助けに行きたいのに助けに活けない現状がひどく腹立たしい。

『カピッリンカサン アソコヲミテクダサイ』
『あそこ?』
『ミラ・ジェーン ガイルトコロノ オクデス』

ボイドールが指しているであろう場所を見れば壊れた壁からエルフマンが見えた。
敵と対峙しているようだがなんだか様子がおかしい。しかし遠目では何もわからない。結局何もできないままだ。

(大丈夫…向こうにはエルフマンがいるから)

そう自分に言い聞かせリンカは自分ができる敵の数を減らす。自分には何もできない。でも、きっとエルフマンだったらミラを助けられるし、それをするために敵にだって勝てるはずだ。

倒して、倒して、倒して…減らない敵に苦戦しながらも倒し続けていれば小さくミラの声が聞こえた。また上を見上げれば自由になったミラの姿が、エルフマンが助け出したのだ。よかった、心の底から安堵する。

(あれ、魔法人を書く手が遅くなってる?)

先程までのいら立ちが消え狭まってきていた視野が広くなったリンカは先程までよりも巨人の手が遅くなっていることに気付いた。それは気のせいではなく彼女の周りにいた人たちも気づき始めていた。

それも魔法陣が完成してしまった今関係のないことだが。もはやこれまで、地面に伏せるもの、逃げだすもの、追いつめられた人の行動は様々だった。だがリンカはそれの誰にも当てはまらなかった。
ナツ達を信じてた、きっと彼等ならやってくれると。

その時、巨人の片腕が突然崩壊した。その後を追うように残った片腕、両足、そして魔法陣が形をとどめることなく崩れ去る。ついに彼らがやってくれたのだ。周りの歓声を聞きながらリンカは一つ息を吐いたのだった。



そんな中その歓声を一瞬で消す男の声がスピーカー越しに聞こえた。ジョゼだ。その内容はルーシィを捕獲したというこちらからすれば絶望的なもの。

ルーシィがこの場にいないことはリンカも知っていた、だからてっきり安全なところにいるもんだと思ってしまっていた。ジョゼの後に聞こえる彼女の悲痛な叫びに思わず耳を塞ぎたくなる。

動けずにいる彼女たちの前にまた幽兵が立ち塞いだ。けれどその見た目は先程までとは違い禍々しい見た目に変わっていた。
しかも幽兵が変わったのは外見だけではなく、戦闘能力も先程より格段にアップし、リンカも大勢攻め込まれ苦戦する状況に追い込まれてしまっていた。