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体力と魔力を削り取られていった彼らに先程よりも格段に力をつけた幽兵を多く倒せる力など残っているはずもなく戦況はどんどんリンカ達が不利な状況へと変わってきていた。
無論彼女も魔力が無限にあるわけでもなく、ましてや体力なんて一般人より少し多い程度のため仲間を守りながら敵を倒していくのには限界があった。だがリンカ達の事情なんてものを向こうが理解してくれるなんてことはなく、襲い掛かってくる幽兵に手こずっている間に残りの奴らが巨大な鉄柱を崩れかけているギルドに勢いよくぶつける。
「私たちのギルドに何するの…!」
目の前でこの世界の唯一と言っていいほどの自分の居場所でもあるギルドをこんな人間ですらない人形に潰されたくない。周りから来る攻撃を紙一重でかわしながらセルピエンテ・エリダでギルドを壊そうとする幽兵を引き寄せ倒す。しかしリンカが一つ止めたところで残りの鉄柱が止まることなく打ち続ける。
「駄目だ…間に合わない……」
リンカ達の頑張りは無駄に終わってしまった。
目の前で自分が育った家が崩されていく、それを唖然としながら見ていることしかできない。
敵の残骸を避けながらリンカは地面に膝をつき泣いているカナの側により肩を引き寄せる。今彼女にできることはそれしかできなかったから。
(雲が…)
マグノリアのそれが分厚い雲に覆われていく。雨でも降るのかと思ったが、それはあまりにも不自然に動き巨人の真上に大きな渦を作った。雷鳴が轟き、地面が大きく揺れ、波が荒くなる。
「今度は何が起きるっていうんだよ…!!?」
「カナ落ち着いて」
「でもっ」
「大丈夫、この魔力は…あの人しかいないから」
普通では考えられないマグノリアの天気に、カナ達は混乱する中、一人笑っている彼女に疑問を抱える。あの人…リンカが指すその人物についてカナが重ねて問おうとしたとき後ろに立っていた幽鬼の支配者の巨人が内側から強い光を発した。
その光は一瞬にして辺りを包み込んだがリンカ達にまったくの害はなくむしろ彼女たちを苦しめた幽兵だけが消滅していった。
優しい優しい光…リンカはその光の温かさを知っていた。
「妖精の法律…やっぱりマスターさんだ」
聖なる光を持って闇を討つ。術者が敵と認知したものだけを討つ。伝説の一つともいわれる超魔法を使えるのは限られた人間だけ。
ミラから「倒れた」とだけ聞いていたためマカロフの安否を気にしていたが無事が確認できた、更にはルーシィも助けることができた。リンカはここで初めて心から安堵したのだった。
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レビィ達を初めとする沢山の人が傷つき、そしてリンカにとっても大切なギルドが崩れてしまった。それでも大事な仲間であるルーシィは無事に戻ってきた。傷はいつか直る、崩壊した建物はまた建て直せばいい。
ただ、こんなに派手に戦ったのだ評議員が何もしないわけがなかった。戦いが終わってすぐ評議員傘下にある強行検束部隊ルーンナイトに取り囲まれたリンカ達は一週間近く事情聴取のため君の駐屯地に連行されたのだった。
ルーンナイトから解放された後リンカは新しいギルドを建てる手伝いをしながら、これは下手すればギルドのマスターであるマカロフが禁固刑になるだなんてこともあり得るのでは?と血の気がなくなったが、その悩みは杞憂に終わりFAIRY TAILは無罪に終わった。
そんな彼女は今仮設の受付カウンターの椅子に座りながら普段酒を飲んでダラダラしていた彼等が依頼掲示板に食いついてる姿に、ルーシィと一緒に呆れていた。
「あれ見てるとちゃんとした人間でいようって思えるのなんでかな…」
「リンカさん目が死んでる」
「あはは」
現代日本ほどの社畜に働け、とまでは言わないがこういう時以外も仕事に行けばいいのに。
ここより真面目な世界で生きてきた彼女は思わう思ってしまう
「そういやロキいないのかなぁ」
「あーあ…とうとうルーシィもとうとうロキの魔手にかかっちゃったかのね」
「ルーシィ、ロキはあまりお勧めできないよ」
「違います!!!」
ミラのおふざけに乗っかればすぐに否定されてしまった。女性に対して紳士的な彼だが大の女性好きで、リンカもロキに幾度となくナンパをされてきた。見た目はよくて優しいがチャラ男のような性格、ちゃらちゃらした軽い人がそこまで得意ではない彼女がその誘いに乗ることはない。それに彼を人として見るには少し違和感があった。
「なんか…鍵見つけてくれたみたいで…一言お礼したいな…って」
「うん…見かけたら伝えとくわ。それより星霊に怒られなかった?鍵落としちゃって」
「はは…そりゃあ…もう…怒られるなんて騒ぎじゃなかったデスヨ……」
顔を青くしながらお尻に手を当てるルーシィ、中々に手厳しい方が向こうにはいるらしい。
リンカの場合召喚させる道具は唯一持っていたスマホ。たまに置いた場所を忘れるときや家に置いていってしまう時もあったが、それがなくとも念話で繋がれていたため特に支障はなく少し注意されるぐらいだった。戦闘狂が何人か紛れ込んでいるが何だかんだ優しい人が多いことに安心する。
「冷やしてやろうか?」
「さりげないセクハラよそれ」
「堂々としたセクハラよそれ!!」
「もっとヒリヒリさせたらどんな顔すっかなルーシィ」
「鬼かおまえは!!!!」
「こら、ルーシィを虐めようとしないの」
ナツ達の本気か冗談かわからないルーシィに対しての弄りに待ったをかける。すると突然大きなテーブルが飛んできてナツが巻き込まれてしまった。狙ったのではないかと思うほどクリーンヒットしたそれにリンカは罰が当たったのではないかと思ってしまうほどだった。
「もう一ぺん言ってみろ!!!!」
テーブルを吹き飛ばした張本人であるエルザの怒鳴り声にその場にいた全員が目を向ける。なぜ彼女がここまで声を上げたのか、その原因がわかってしまったリンカも嫌々ながら視線を動かした。
(やっぱり…)
向けずとも気づいていた。彼等の隠しきれていないイラつきが念話で伝わってきた。でも知らないふりをし続けていた、怖かった。いつ仕事が終わったのか、椅子に座りながらエルザと対峙するラクサス。大方向こうが何か彼女の気に障る事でも言ったのだろう。
「この際だハッキリ言ってやるよ。弱ェ奴はこのギルドに必要ねェ」
「貴様…」
「ファントムごときになめられやがって…恥ずかしくて外も歩けねーよ」
膝の上に置いていた拳を握る。彼の心はこの数年でどこまで腐り果ててしまったんだ。