「仲間が作れなかった?」
思い返した苦い過去を、全て彼に言うのはためらわれた。倉持くんは今チームのことでいっぱい気を使っているって話を聞いていたから、私のことまで聞くのは酷だと思った。
「人間関係、うまくやれなくて」
あれから1年か。もっと果てしないように思える。
そうだ。1年前は私にだって夢があったんだけどな。日本で1番天文学を学べる大学に入るんだって。そのまま天文の道に進むんだって。だからあの学校の受験も頑張ったんだ。
もうそんな力はどこにもない。
「そーか?」
「はい」
「意外だな」
「いえいえ」
もう夜の風は肌寒さすら感じる。かすかに聞こえる秋の虫の声。
「俺とはうまくやってんじゃね?」
「は」
ヒャハハ、と倉持くんが笑った。何を言っているんだろうと思って顔をうかがうと倉持くんもこちらを見ていて、暗い中でも目が合ったことがわかった。
「まー俺が勝手に話しかけに来てるだけだけど。いつも普通に話せんだろ?」
「倉持くんとは、そうですね」
「別に俺だけじゃなくて、そのうまくやれなかったヤツらと相性悪かっただけっしょ。田中いいやつだと俺は思ってんよ」
自分の興味ある話になる途端いきいきし始めたり、表情に全部出てるからわかりやすいしな、と続けながらまた笑う。
膝を抱えた手に力が入った。いいやつだと思っている、なんて曖昧な言葉でも、嬉しかった。こんなふうに誰かの温かい言葉をもらったのはいつ以来だろう。
「つーか学校行ってないのに星座とか宇宙の仕組みとか知ってるのすごくね?」
「倉持くんだって野球のルール、学校で習ったわけじゃないでしょ?」
「いや、それとこれとは話別だろ」
「一緒ですよ」
きっと私が泣きそうなこと、バレているんだろうな。だからこうやって少しずつ話をずらしてくれているんだろうな。
星を見るふりをして顔を上げた。秋の気配が交じる風をめいっぱい吸い込んで、吐き出す。
「あそこ、1つ強く光る星があるの、わかります?」
「・・・多分?」
「1番明るいのが、ベガです。織姫様」
ベガ、アルタイル、デネブ。夏の夜空で一際目立つこの3つの星を1つ1つ指さしてみせる。一生懸命に見てくれる倉持くんが嬉しい。
「この3つをつなぐと、夏の大三角形」
「なんでこの3つを繋ぐんだよ?」
「なんでって・・・明るいから?」
「ヒャハ、単純だな」
倉持くんに彼女がいなければいいなと思った。倉持くんは本当に友だちになれたらいいのにって。