#7
日曜日に久しぶりに休みが取れて部屋で一人ダラダラ過ごしている。
杏寿郎さんに連絡したいけど、瑠火さんの病室で会ったお見合い相手さんのことが頭から離れない。
あの日以降私から連絡出来ていないし、自分で思っていた以上にダメージがあるようだ。
「あーいーたーいー……」
部屋に虚しく響く声は会いたさを余計に増幅させた。
「んー、よし。考えても仕方がない」
女は度胸だ。気持ちを切り替えてスマホを手に取って杏寿郎さんにメッセージを送る。
《今日休みなんですけど会えますか?》
会えるって返信が来たときのために、服は何を着ようか考えていたら時間を置かずに返信が来た。
《すまない、今日は別な用事があって外出している》
最近は土日ずっと仕事だったし、なんなら昨日も仕事だったから今日も仕事だと思って予定を入れてても仕方ない。
《こちらこそ当日にすみません。また今度!》
とメッセージとスタンプを送って大の字になる。
ものの五分で暇になってしまった。何しよう。
買い物に行こうかな。もうすぐクリスマスだし、まだ杏寿郎さんへのプレゼント買ってないんだ。
贈るものは決めているから、あとは現物を見てみるだけ。
お目当てのものを取り扱っている店はネットで確認している。杏寿郎さんとこの前行ったショッピングモールに行こう。
そうと決まれば早速行動だ。ダラケたい自分を奮い立たせて洗面所へ向かった。
* * *
店に行って実物を試してみると、写真で見るよりも鮮やかな発色で思わず「おお」と言ってしまう。
なにこれ。予想以上に想像通りだ。
これはもう迷うことなんてない。杏寿郎さんへ贈る分と自分の分を即決してレジに向かう。
私のは杏寿郎さんとモノは同じだけど色と少しのデザイン違い。
「クリスマス用にお包みしますか?」
「こっちだけラッピングお願いします」
「かしこまりました。今でしたら名入れサービスも無料で出来ますがいかがしますか?」
見本を見せてもらったけど、文字が大きすぎて折角のデザインが台無しになりそう。
「大丈夫です。名入れは止めておきます」
店員さんはそれ以上薦めてくることもなく、手際よく包装をしてくれた。
綺麗にラッピングされた包装紙はクリスマスらしく真っ赤。
杏寿郎さんのイメージカラーも赤だからピッタリだなーなんて、貰ったばかりのプレンゼントの入った紙袋をぶんぶん振る。
プレゼントを開けたとき、杏寿郎さんどんな反応をしてくれるかな。使い方知らなさそうだし、私も同じものを買ったから一緒に楽しもう。
考えただけでなんだか楽しくなってきて、部屋で一人過ごさずにやっぱり外に出てきて良かった。
そのままウィンドウショッピングをしながら自分へのご褒美とばかりに、服を何着か買って歩いていると前通った不動産屋が目に入る。
「あー、そろそろ本格的に探さないと」
駅チカは譲れない。会社にアクセスしやすい沿線がいいけど、煉獄家に行くときにも便利なところがいい。外の窓に貼られている賃貸情報を見ながら独り言を言う。
そうなると今のところに結局落ち着くのかな?
「むぅ」
なんて杏寿郎さんの口調を真似する私はだいぶ浮かれていた。
店に行って実物を試してみると、写真で見るよりも鮮やかな発色で思わず「おお」と言ってしまう。
なにこれ。予想以上に想像通りだ。
これはもう迷うことなんてない。杏寿郎さんへ贈る分と自分の分を即決してレジに向かう。
私のは杏寿郎さんとモノは同じだけど色と少しのデザイン違い。
「クリスマス用にお包みしますか?」
「こっちだけラッピングお願いします」
「かしこまりました。今でしたら名入れサービスも無料で出来ますがいかがしますか?」
見本を見せてもらったけど、文字が大きすぎて折角のデザインが台無しになりそう。
「大丈夫です。名入れは止めておきます」
店員さんはそれ以上薦めてくることもなく、手際よく包装をしてくれた。
綺麗にラッピングされた包装紙はクリスマスらしく真っ赤。
杏寿郎さんのイメージカラーも赤だからピッタリだなーなんて、貰ったばかりのプレンゼントの入った紙袋をぶんぶん振る。
プレゼントを開けたとき、杏寿郎さんどんな反応をしてくれるかな。使い方知らなさそうだし、私も同じものを買ったから一緒に楽しもう。
考えただけでなんだか楽しくなってきて、部屋で一人過ごさずにやっぱり外に出てきて良かった。
そのままウィンドウショッピングをしながら自分へのご褒美とばかりに、服を何着か買って歩いていると前通った不動産屋が目に入る。
「あー、そろそろ本格的に探さないと」
駅チカは譲れない。会社にアクセスしやすい沿線がいいけど、煉獄家に行くときにも便利なところがいい。外の窓に貼られている賃貸情報を見ながら独り言を言う。
そうなると今のところに結局落ち着くのかな?
「むぅ」
なんて杏寿郎さんの口調を真似する私はだいぶ浮かれていた。
* * *
ショッピングモールをあとにして、明日の朝食はパンがいいなって思ったから帰りにかまどベーカリーに行く。
「いらっしゃいませ、こんにちは! 今日は早いですね」
何回か通っているうちにかまどくん以外にも妹さんも私の顔を覚えてくれたみたい。
妹さんの屈託のない笑顔に癒やされていたら、兄のかまどくんと店番交代の時間らしくて引き継ぎみたいことをし始めた。
それを横目に今日はなんのパンを買おうかと悩んでいたら他のお客さんの声が耳に入る。
「今回のテストどうだった?」
「歴史がヤバい」
話の内容からすると高校生っぽい。テストなんて懐かしいなんて思っていたら、聞き覚えのある名前が出た。
「私は数学がやばくて不死川先生に呼び出されそう。あ、歴史といえばさぁ、煉獄先生結婚決まったって聞いた?」
「え! レンキョ結婚!? フライデーの彼女とついに!?」
「それが違うらしくて。お見合いだって」
「なにそれ? 彼女は?」
「そこらへんはよく分かんないけど、この前家族で顔合わせして両家合意したらしいよ」
「えー、じゃあ彼女と別れたってこと? レンキョそういうことしなさそうなのにショックかも」
「煉獄先生の家そういうしきたり厳しそうだしね」
「竈門くん何か知らない? レンキョと仲良いよね?」
「流石にそんな話はしないかな……。それにただの噂だろ? 根も葉もない噂を本当のことみたいに軽々しく口にしたら駄目だ」
「竈門くん真面目〜」
「俺はいつだって真面目だ」
あの子たちの話している“フライデーの彼女”は十中八九私のことだろう。
煉獄先生ってば学校の外でも噂されちゃって人気者じゃん。
お見合い結婚決定が生徒たちの噂になるほどって、相当信用できる根拠があるんじゃないの?
話をしていた子たちはパンを買い終えると私の後ろを通って店から出ていって、さっきまでウキウキで買い物していた私の急激にテンションが下がっていった。
「あの、大丈夫ですか?」
パンを選んでいる振りをしているけど、手の止まっていたらしい私はかまどくんの呼びかけで現実に戻ってくる。
「大丈夫! ごめんね。ぼーっとしてたみたい」
間 に立たせちゃって悪いことしちゃったな。
高校生に気を使ってもらう二十代社畜ってなかなか悲しいものがある。自分で食べるには多い量のパンを買うことでお詫びとさせてもらおう。明日の朝ごはんだけでなく、今日の夕食もパンに決定した。
かまどくんは店内を見回して他にお客さんが居ないのを確認すると、意を決したように私に向いた。
「俺、煉獄先生はいつも生徒思いで、嘘をつかない人だと思います」
「え? あ、うん。そうだね。いつも相手のために思ったこと言う人だよね」
急に杏寿郎さんのことを言い出すかまどくん。私の杏寿郎さんに対する評価とかまどくんの評価が近くて、杏寿郎さんは学校でもいい先生なんだと思う。
「だから、煉獄先生本人が言わない限りは彼女さんと別れたとか……その、ないと信じています!」
うんうん、分かる。でも大人の事情もあるんだよかまどくん。
「かまどくん優しいね。ありがとう」
かまどくんなりに気にすることないと励ましてくれてるのが分かって少し元気が出るけど、私は自分のことなのに曖昧に笑うしか出来なかった。
「もうこのパン屋さんにも来れないなあ……」
買ったものを受け取って店をあとにして一人呟く。
杏寿郎さんも常連らしいし、生徒とか居るところにばったり会ったら気まずいだろうなあ。
最近は休みの日に外に出るとあまりいいことがないから、しばらく休みの日は引きこもりになろう。
冷たい風で冷えた顔をマフラーで鼻元まで埋める。
視界がなんとなく滲むのは冷たい空気が目に染みたからだ。決して泣いてなんかいない。
ショッピングモールをあとにして、明日の朝食はパンがいいなって思ったから帰りにかまどベーカリーに行く。
「いらっしゃいませ、こんにちは! 今日は早いですね」
何回か通っているうちにかまどくん以外にも妹さんも私の顔を覚えてくれたみたい。
妹さんの屈託のない笑顔に癒やされていたら、兄のかまどくんと店番交代の時間らしくて引き継ぎみたいことをし始めた。
それを横目に今日はなんのパンを買おうかと悩んでいたら他のお客さんの声が耳に入る。
「今回のテストどうだった?」
「歴史がヤバい」
話の内容からすると高校生っぽい。テストなんて懐かしいなんて思っていたら、聞き覚えのある名前が出た。
「私は数学がやばくて不死川先生に呼び出されそう。あ、歴史といえばさぁ、煉獄先生結婚決まったって聞いた?」
「え! レンキョ結婚!? フライデーの彼女とついに!?」
「それが違うらしくて。お見合いだって」
「なにそれ? 彼女は?」
「そこらへんはよく分かんないけど、この前家族で顔合わせして両家合意したらしいよ」
「えー、じゃあ彼女と別れたってこと? レンキョそういうことしなさそうなのにショックかも」
「煉獄先生の家そういうしきたり厳しそうだしね」
「竈門くん何か知らない? レンキョと仲良いよね?」
「流石にそんな話はしないかな……。それにただの噂だろ? 根も葉もない噂を本当のことみたいに軽々しく口にしたら駄目だ」
「竈門くん真面目〜」
「俺はいつだって真面目だ」
あの子たちの話している“フライデーの彼女”は十中八九私のことだろう。
煉獄先生ってば学校の外でも噂されちゃって人気者じゃん。
お見合い結婚決定が生徒たちの噂になるほどって、相当信用できる根拠があるんじゃないの?
話をしていた子たちはパンを買い終えると私の後ろを通って店から出ていって、さっきまでウキウキで買い物していた私の急激にテンションが下がっていった。
「あの、大丈夫ですか?」
パンを選んでいる振りをしているけど、手の止まっていたらしい私はかまどくんの呼びかけで現実に戻ってくる。
「大丈夫! ごめんね。ぼーっとしてたみたい」
高校生に気を使ってもらう二十代社畜ってなかなか悲しいものがある。自分で食べるには多い量のパンを買うことでお詫びとさせてもらおう。明日の朝ごはんだけでなく、今日の夕食もパンに決定した。
かまどくんは店内を見回して他にお客さんが居ないのを確認すると、意を決したように私に向いた。
「俺、煉獄先生はいつも生徒思いで、嘘をつかない人だと思います」
「え? あ、うん。そうだね。いつも相手のために思ったこと言う人だよね」
急に杏寿郎さんのことを言い出すかまどくん。私の杏寿郎さんに対する評価とかまどくんの評価が近くて、杏寿郎さんは学校でもいい先生なんだと思う。
「だから、煉獄先生本人が言わない限りは彼女さんと別れたとか……その、ないと信じています!」
うんうん、分かる。でも大人の事情もあるんだよかまどくん。
「かまどくん優しいね。ありがとう」
かまどくんなりに気にすることないと励ましてくれてるのが分かって少し元気が出るけど、私は自分のことなのに曖昧に笑うしか出来なかった。
「もうこのパン屋さんにも来れないなあ……」
買ったものを受け取って店をあとにして一人呟く。
杏寿郎さんも常連らしいし、生徒とか居るところにばったり会ったら気まずいだろうなあ。
最近は休みの日に外に出るとあまりいいことがないから、しばらく休みの日は引きこもりになろう。
冷たい風で冷えた顔をマフラーで鼻元まで埋める。
視界がなんとなく滲むのは冷たい空気が目に染みたからだ。決して泣いてなんかいない。