やうやう積もるは恋う色:6
一ヶ月ぶりくらいに杏寿郎さんに逢えて、もっと話がしたくてコンビニのカフェコーナーに誘えば優しい声で返事をしてくれた。お酒も入って気分が高揚している私は一人で話をしている。
それでも逢えない時間で考えていたことを聞いてほしかった。
私は杏寿郎さんに助けてもらったから。本人にそのつもりはなかったとしても、仕事に前向きに考えられるようになった。
私は助けてもらったけど杏寿郎さんはどうなんだろう。煉獄家で聞く話は昔剣道大会で優勝したとか杏寿郎さんの頑張ってきた話ばかり。
人は早々他人に弱みを見せたりすることはないけど杏寿郎さんは輪を掛けてそれがないように思った。
私に返せるものはなんだろう。だから素直に伝えてみることにした。一方的で独りよがりだと言われてしまえばそれまでだけど、杏寿郎さんはきっと聞いてくれる。
それで杏寿郎さんのことを気にしてくれている人がいるんだよ、って知ってくれればいい。
私がそうやって教えてもらったように杏寿郎さんに伝えたかった。
* * *
「一人で沢山喋っちゃってすみません」
沢山喋ったら酔いもほぼなくなって、さっきの勢いとは反対に反省の念が押し寄せてきた。私は自分の仕事も完璧にこなせないのに何を偉そうに話していたんだ。
「……今更だが番号交換してもいいだろうか?」
初めて送って貰った日に杏寿郎さんがスマホを持っていなくて番号交換しなかったあの日から機会がなく、未だにお互い知らないままの連絡先。
家に着いたら瑠火さんに連絡する、がデフォルトになってしまっていたからあれからどちらからもその話題は出すことはなかった。
「お互いのことを知る一歩だ!」
どんな見合い文句だって思うけど、言葉にすると恥ずかしい言葉も杏寿郎さんらしいといえばらしくて笑ってしまう。
「これが私のIDです」
「む?」
あまりスマホを使うことがないのか、彼の大きな手の中にある機械を私の説明を聞きながら操作する杏寿郎さんがいじらしい。
「登録できたぞ!」
「何かスタンプ送ってもらっていいですか?」
「すたんぷ?」
「“よろしく”とかの文字だけでもいいですよ」
「むぅ。最初のやり取りが文字だけだと味気なくないだろうか?」
なにその可愛い発言。酔っぱらっているわけじゃないよね? スタンプってどうやるんだなんて、またスマホをいじり始める杏寿郎さんをニコニコしながら見てしまう。
「あ、じゃあ折角なので最近撮った写真送ってください!」
「写真?」
「杏寿郎さんがどんな写真を撮っているのか知りたいです」
杏寿郎さんの手元を覗き込みながら送り方を教えて、ついでにスタンプはここのボタンですよと伝えれば目に見えて楽しそうにした。
「千寿郎からたまに送られてくるぞ!」
「千くんもスマホ持っているんですね」
この兄弟のメッセージのやり取りを想像してみたけど業務連絡と言っていい内容に近い気がする。それでたまに千寿郎くんがスタンプで返信しているってところかな。
杏寿郎さんのスマホ不慣れぶりを見るに、写真を撮っていたとしても家族や風景が多そう。あわよくば瑠火さんの写真送られてこないかなって今か今かと待っていたらメッセージ受信のお知らせ。
「来ました! うわっ!」
隣に座っているのに何を送られたかは分からないからワクワクしながらメッセージの添付画像を開いて驚いた。
写真は笑顔の眩しい杏寿郎さんと、毛量たっぷりのイケメンだと思われる人が写っている。思われるなんて曖昧なのはその人が仏頂面かつ半目だったから。
「この隣の人誰ですか?」
「ん? 学園の同僚だ。さっき話した買い物を手伝ったときに生徒に撮ってもらった」
「えー、なんですかこの学園。イケメンの先生いいなあ」
「……」
思ったことをそのまま口にしながら写真をまじまじと見る。平日の放課後だから杏寿郎さんネクタイをしている。写真のアングル的にそれが少ししか見れないのが残念で、どうにか見れないかとスマホを傾けるけど見れない。
「君は……」
「ん? あ! また飲み込もうとしていますね?」
「むぅ、」
指摘すると分かりやすく反応する杏寿郎さんに、目を合わせて言うまで待つぞという姿勢を見せる。
「……冨岡が好みなのか?」
「トミオカ?」
「一緒に写っている人物だ」
「トミオカ先生って言うんですね」
「熱心に写真を見ているから冨岡が気になるのかと思った」
観念した杏寿郎さんは飲み込もうとした言葉を全部吐き出すと、恥ずかしかったのか言葉の代わりにコーヒーを啜るように飲んでいる。写真には杏寿郎さんも写っているのに、自分じゃなくて他の人を見ていると思われていたのか。
「違いますよ、杏寿郎さんのネクタイ姿見たことないのでどうにかもっと見れないかなって」
「見たことなかっただろうか?」
「ないですねえ、私服か着流しだけですねー」
まさかこんな形で見ることになるとは思っていなかったから拡大したりまた傾けたりしていると、私たちの他にいたグループが帰っていくのが見えた。
「だいぶ長居してしまったな。俺たちもそろそろ帰ろうか」
「すみません、時間を取らせてしまって」
「ん? いや、構わない。久しぶりに喋れて楽しかった」
コンビニから出ていつものように杏寿郎さんを見送ろうと向き合う。
「また来週」
「……はい、また来週」
今が夜で良かった。
優しい声で言われて赤くなる顔を隠しながら別れて、家に着いてすぐに杏寿郎さんに家に着いたとメッセージを送る。すぐに既読になって初めての返信は「本当に近いんだな」って言葉だった。
「一人で沢山喋っちゃってすみません」
沢山喋ったら酔いもほぼなくなって、さっきの勢いとは反対に反省の念が押し寄せてきた。私は自分の仕事も完璧にこなせないのに何を偉そうに話していたんだ。
「……今更だが番号交換してもいいだろうか?」
初めて送って貰った日に杏寿郎さんがスマホを持っていなくて番号交換しなかったあの日から機会がなく、未だにお互い知らないままの連絡先。
家に着いたら瑠火さんに連絡する、がデフォルトになってしまっていたからあれからどちらからもその話題は出すことはなかった。
「お互いのことを知る一歩だ!」
どんな見合い文句だって思うけど、言葉にすると恥ずかしい言葉も杏寿郎さんらしいといえばらしくて笑ってしまう。
「これが私のIDです」
「む?」
あまりスマホを使うことがないのか、彼の大きな手の中にある機械を私の説明を聞きながら操作する杏寿郎さんがいじらしい。
「登録できたぞ!」
「何かスタンプ送ってもらっていいですか?」
「すたんぷ?」
「“よろしく”とかの文字だけでもいいですよ」
「むぅ。最初のやり取りが文字だけだと味気なくないだろうか?」
なにその可愛い発言。酔っぱらっているわけじゃないよね? スタンプってどうやるんだなんて、またスマホをいじり始める杏寿郎さんをニコニコしながら見てしまう。
「あ、じゃあ折角なので最近撮った写真送ってください!」
「写真?」
「杏寿郎さんがどんな写真を撮っているのか知りたいです」
杏寿郎さんの手元を覗き込みながら送り方を教えて、ついでにスタンプはここのボタンですよと伝えれば目に見えて楽しそうにした。
「千寿郎からたまに送られてくるぞ!」
「千くんもスマホ持っているんですね」
この兄弟のメッセージのやり取りを想像してみたけど業務連絡と言っていい内容に近い気がする。それでたまに千寿郎くんがスタンプで返信しているってところかな。
杏寿郎さんのスマホ不慣れぶりを見るに、写真を撮っていたとしても家族や風景が多そう。あわよくば瑠火さんの写真送られてこないかなって今か今かと待っていたらメッセージ受信のお知らせ。
「来ました! うわっ!」
隣に座っているのに何を送られたかは分からないからワクワクしながらメッセージの添付画像を開いて驚いた。
写真は笑顔の眩しい杏寿郎さんと、毛量たっぷりのイケメンだと思われる人が写っている。思われるなんて曖昧なのはその人が仏頂面かつ半目だったから。
「この隣の人誰ですか?」
「ん? 学園の同僚だ。さっき話した買い物を手伝ったときに生徒に撮ってもらった」
「えー、なんですかこの学園。イケメンの先生いいなあ」
「……」
思ったことをそのまま口にしながら写真をまじまじと見る。平日の放課後だから杏寿郎さんネクタイをしている。写真のアングル的にそれが少ししか見れないのが残念で、どうにか見れないかとスマホを傾けるけど見れない。
「君は……」
「ん? あ! また飲み込もうとしていますね?」
「むぅ、」
指摘すると分かりやすく反応する杏寿郎さんに、目を合わせて言うまで待つぞという姿勢を見せる。
「……冨岡が好みなのか?」
「トミオカ?」
「一緒に写っている人物だ」
「トミオカ先生って言うんですね」
「熱心に写真を見ているから冨岡が気になるのかと思った」
観念した杏寿郎さんは飲み込もうとした言葉を全部吐き出すと、恥ずかしかったのか言葉の代わりにコーヒーを啜るように飲んでいる。写真には杏寿郎さんも写っているのに、自分じゃなくて他の人を見ていると思われていたのか。
「違いますよ、杏寿郎さんのネクタイ姿見たことないのでどうにかもっと見れないかなって」
「見たことなかっただろうか?」
「ないですねえ、私服か着流しだけですねー」
まさかこんな形で見ることになるとは思っていなかったから拡大したりまた傾けたりしていると、私たちの他にいたグループが帰っていくのが見えた。
「だいぶ長居してしまったな。俺たちもそろそろ帰ろうか」
「すみません、時間を取らせてしまって」
「ん? いや、構わない。久しぶりに喋れて楽しかった」
コンビニから出ていつものように杏寿郎さんを見送ろうと向き合う。
「また来週」
「……はい、また来週」
今が夜で良かった。
優しい声で言われて赤くなる顔を隠しながら別れて、家に着いてすぐに杏寿郎さんに家に着いたとメッセージを送る。すぐに既読になって初めての返信は「本当に近いんだな」って言葉だった。