― 誓いのあともまた誓う ―

20250615オフイベ無配のボツ案/6月ジュンブラっぽく

 ふわふわとした気持ちが昨日からずっと続いている。
 夫婦となって初めての夜を過ごした式場併設のホテルの一室、ベッドから抜け出して厚いカーテンを少しめくると外はまだ日が昇る前だった。カーテンを元に戻すときに目に入るのは自分の左手。誓いの証の銀がはめられた指をなぞったら自然と顔が笑ってしまう。
 緊張で指輪が入らないとか、前情報で知っていたあるあるエピソードを自分たちもやってしまうなんて。
 そのときの杏寿郎の必死さを思い出すとまたふわふわした気持ちになってきた。
 あとで友だちがたくさん送ってくれた写真を杏寿郎と見よう。そう思いながらベッドに戻ろうとすると、昨日のもう一人の主役がベッドの端に座っていた。
 部屋の空調が寒いのか、それとも寝ぼけているのか。たぶん後者だろう。頭から薄い布団を被ったままの杏寿郎に近づき、屈んで目線を合わせる。
「今日は杏寿郎がお嫁さんだね」
「……む?」
 昨日、私がされたように、杏寿郎の頭にかかる白をゆっくりめくる。顔は最初から見えていたけど、布団を取り払って全身を晒す杏寿郎に、そっと触れるだけのキスをした。
「……俺は昨日、ナマエの服をそんなに丁寧に脱がせたか?」
「もー! ベールアップの真似だったのに!」
「はっはっは!」
 絶対分かっているくせに、わざとそういうことを言う杏寿郎に抱きついてそのままベッドに倒れ込む。
「昨日はナマエの緊張が凄まじかったな!」
「杏寿郎だって顔がカッチカチだったくせにー」
「……あんなナマエの顔を見られるなら何度してもいいかもしれんな」
「じゃあ2回目やろっか」
「どういうことだ?」
「煉󠄁獄杏寿郎、あなたは愛を誓いますか?」
 私の言葉になるほどなと言いながら、手探りで指輪に触れてくる杏寿郎。くすぐったさに身を捩らせながら、杏寿郎の体を乗せたまま覗き込んで続きを促す。
「ナマエと2人で重ねていく日々に、恋愛の情だけじゃなく家族愛も上乗せされていくだろうな」
 楽しそうに、嬉しそうに笑う杏寿郎は私の左手の薬指を取るとそのままキスをしてきた。まだ朝日の昇らない、ベッドの足元だけにしか照明の灯っていない部屋の中で私たちの唇が触れては離れてを繰り返す。
 私の髪を梳きながら耳からうなじへ、少しずつキスが深くなって小さな声が漏れ始めた。
 種類は一つじゃない。たとえその意味が今日とは変わっていたとしても、私たちはこの先何度でも今のキスのように同じ言葉を繰り返す。


「 あ な た に 愛 を 誓 い ま す 」

2025/06/13:X初出
2025/06/29:サイト用に修正