妄想、愉悦。





  


 埃の臭いがした。そして、若い男たちのざわめきが聞こえた。

「此処は…?」

 蘭丸は辺りを見回した。どうやら何処かの廃墟らしい。ここが本能寺でないことだけは確かだった。

(明智軍に捕まった…?)

 蘭丸の手首は頭の上で組まれ、きつく結ばれていた。見下ろすと、自分が半襦袢と下帯だけの格好であることに気付いた。

「目、覚めただな」

 背後で男の声がした。しかし、この体制では振り返られない。男は蘭丸の体を掴み、起こしてこちらを向かせる。ごつごつとした大きな手だった。

「ほう、やっぱり織田信長の小姓だけあって、めんこいだ」

「ああ、別嬪だ」

「しかし、本当に男だか?」

 好き勝手述べて、卑しい視線を送る男たちは、見たところ百姓のようだった。三人とも体は大柄で、二十代程の若者だろうか。蘭丸は状況が飲み込めず、ただ睨むことしか出来ずにいた。

「心配するな。おらたちは、お前を助けただ」

「本当に?」

 蘭丸は口を開く。

「ああ。可愛い声だな」

「あの、これを…」

 蘭丸は手を曲げて、解いて欲しいと訴えた。

「慌てるな。ちゃんと解いてやる。ただし、おらたちの言うことを聞いたらだ」

「後で聞きますから、解いて下さい」

 一人の男が後ろに回り、蘭丸の体を前のめりに倒した。

「何をする!」

「綺麗なあんよだなあ」

 もう一人の男が蘭丸の脚を撫でた。太腿や脹ら脛のしなやかな線と、引き締まった足首に這う熱い掌に嫌悪を感じた。

「離せ!」

 男は蘭丸の髪の結び目を掴み、首を上げさせた。

「言うことを聞いたら離してやるだよ。分かるな?」

 背後の男が襦袢を捲り、下帯に手をかける。

「止めろ!」

 蘭丸はすり抜けようと必死に体を揺するが、二人がかりで止められ、とうとう下帯がはぎ取られてしまった。
 人に見られることがない場所を晒され、不覚にも蘭丸は顔を赤らめてしまった。

「可愛いお尻だ。楽しませてくれそうだ」

「見るな!」

 蘭丸は必死で抵抗する。しかし、体を拘束され、大きな男三人では適わない。

「あ!」

 背後の男の熱くぬめった先端が、後孔にあてがわれた。

「止めろ!止めろ!」

 蘭丸が叫び続けていても、侵入者は蘭丸を遠慮なく押し開く。

「ああああ!」

 蘭丸の悲鳴が上がった。男の物は、太く、蘭丸を切り裂くように埋め込んできた。
 蘭丸の引き締まった体は、何度交わっても初物のような締め付けを与えていた。しかし、それは蘭丸にとって、負担が掛かる行為でもあった。まして、準備も用具もない。

「おお、こりゃあええ」

「本当か?」

「ああ」

 涙が零れた。今までも、此からも、信長だけと決めていた。なのに、急にそれは奪われた。蘭丸は、早く終わるように抵抗するのを止めた。男は奥まで突き、腰を前後に揺すり始めた。

「ほら、おめぇも腰を振れ」

 濡れている訳ではないから、滑らないのだろう。男はやりづらそうに腰を打ち付けてきた。

「う、うっ」

 痛い。強引でも、快楽を導き出してくれた信長とは全く違う。

「腰振ったら、信長のもとに帰してやるだよ」

 背後の男が言った。

「信長様は、ご無事なのか?」

「ああ。おらたちを満足させたら、信長のとこへ帰れるだ」

 男はそう言って、片手で服を脱ぎ、褌をずらした。蘭丸の顔を座した太腿の間に置き、蘭丸の口へいきりだったものをくっつける。

「本当に、約して下さりますか?」

「男に二言はないだ」

 蘭丸は、迷いながらも唇に触れているものを咥えた。背に腹は変えられない。早く終わらせて、すぐにでも信長に会いたい。
 口を窄めて、腰を前後に揺すった。舌に残る味は苦く、変わらずに蕾は破れんばかりに痛む。

(信長様…、蘭の体は汚れてしまった。また、蘭を愛して下さるだろうか)

 涙が止まらない。それでも良い。嫌われても、無事な姿を見ることが出来るなら。

「く、おおー!」

 まず、後ろの男が放った。そして、前の男が続けざまに。前と後ろをそれぞれ別の男の体液で汚しながら、蘭丸は顔をあげた。

「お願いします、解いて下さい」

「だめだ。おらの相手もしてもらうだ」

 傍観していた男が蘭丸の背後に立つ。そして、体を被せてきた。

「綺麗だな、あんた」

 男は蘭丸の項を舌先でゆっくり舐める。

「そんなに、信長に会いたいか?」

「ひっ!」

 男は襦袢の襟を開き、蘭丸の乳首を指の腹で撫でた。軽く触れただけで堅く尖って、つまんで捻る。

「は、離せ!」

「乳首が起ってるだ。気持ち良いか?」

「気持ち良くなど…」

「ひひ…、なら、気持ち良くしてやるだよ」

 男は蘭丸の白濁液を滴らせた蕾に自身を挿し込んだ。ぐちゅりと体液が弾け飛び、潤滑油代わりにゆっくりと労るように腰を進める。

「う、ああっ」

 胸を弄る手を蘭丸の股間へずらし、慣れた手付きで揉みしだいた。

「やめろ…!」

 蘭丸の声に覇気が失われ始めた。次第に反応をし始めてゆく。それを見た周りの者が、固唾を飲んだ。

「おい、田子作…」

「見るだ。このお小姓、今までたっぷり可愛がられてるだよ。優しくすれば、ちゃんとおらを受け入れる。だな?」

「だ、誰が!」

 田子作と呼ばれた男は、蘭丸の後孔に負担をかけぬよう腰を進めた。すると、何かを見つけて其処を押すように攻めてきた。
 蘭丸の首が仰け反る。

「や、嫌だ!」

「ここだな?ここが、気持ちええだな?」

 田子作の手の中に、大きくなった蘭丸の下肢があった。

「可愛い顔して立派なもん持ってるだな。だが」

「くっ」

 田子作が根元の膨らみを揉んだ。

「ふぐりはちっちゃいんだな、ひひ…」

 別の男が、蘭丸前に廻り、蘭丸の顎を掴みあげた。さっき、後ろを突いてきた男だ。

「いいか、お嬢ちゃん。これが終われば、あんたは信長の元に帰れる。上手くやるだよ?」

「…!」

 信長の優しい笑みがちらつく。蘭丸は、口を開けた。

「いい子だ。綺麗にするだよ」

 蘭丸の口の中に先走りを既に滴らせたものを入れる。そして、後ろの田子作は、己を蘭丸の中に出し入れさせて、一点を集中的に突き続けた。

「いいだよ、そこらのおなごより、ずっと…」

「ああ…」

(信長様…。こんなことになって、蘭はどんな顔をして会えばいいのでしょうか。蘭はもう、信長様にお仕えする権利などないかも知れません)

 嫌悪から涙が次から次へと溢れては、頬を伝い、床に落ちる。

 男たちはまたもや前と後ろに放出し、蘭丸を汚した。
 蘭丸は、口内に残った体液を吐き出し、白い水溜まりを見下ろした。汚い。それに塗れ、体を反応させている自分も。だが、今は帰るべき場所へ戻らなければ。

「お願いします。縄を解いて下さい」

「それは出来ないだ」

「まだ、足りませぬか?謝礼は後程、必ず払います、どうか…」

 汚らしい百姓風情に、頭を下げる。額を床にこすりつけた。田子作が髪を掴み、上を向かせた。

「そげん、信長に会いたいか?」

 此処までさせて、今更何を言っているのか。蘭丸は頷く。

「なら、お前を帰す必要はないだな」

「え…?」

「信長は、死んだからだ」

 蘭丸の頭の中は真っ白になった。涙も止まる。

「だから、お前は此処に残るだ」

 田子作は蘭丸の髪を撫で、無防備な唇に口付ける。小さく柔らかい唇の極上の感触。しかし、前の男の体液の名残があった。清めるように啄む。

(信長様…)

 ぼんやり頭の片隅に、最後に見た信長の笑みが過ぎる。これから起こる波乱を楽しむような、そんな顔だった。

(信じるものか、この目で、確かめるまで!)

「いっでえ!」

 田子作が蘭丸を突き飛ばし、自分の口を抑えた。手には血が付いている。

「大丈夫か、田子作!」

「唇を噛みやがっただ…」

 突き飛ばされ、仰向けに倒れた蘭丸が、田子作を睨む。

「許さねえ!」

 口から血を流した田子作は馬乗りになり、蘭丸の頬をひっぱたいた。頬が赤く腫れ始めても、蘭丸は田子作を力強く睨み続ける。

「貴様の言うことなど、誰が信じるか!縄を解け!」

 田子作はにやりと笑った。

「おめえ、自分の立場、分かって言ってるだか?おめえら、手伝え!」

 男たちが蘭丸の足を掴み、広げる。何時の間にか柔らかくなった下肢と、赤く腫れた結合部が晒される。田子作は蘭丸の体から降りると、太腿の滑らかな皮膚を撫でる。

「もう、優しくなんかしてやらねえ」

「離せ!舌噛んで死んでやる!」

「死んだら、もう本当に信長に会えなくなるど?」

「私は、本能寺で既に一度死んだ。惜しむものか!魂だけになって、信長様の安否を確かめる!」

「よく喋る口だ」

「何を…!」

 田子作は、蘭丸に布を噛ませ、縛る。

「んん!」

 田子作は蘭丸の下肢を掴み、後孔を剥き出しにした。指を強引に入れ、狭い腸内を乱暴に掻き回す。

「んー!んー!」

 蘭丸は痛みで悲鳴を上げた。それでも、田子作は止めない。続けていると、次第に蘭丸の声は掠れ始めた。

「女は大人しく抱かれてればいいだ」

 腫れた窄まりに、田子作は強引に自身を打ち込んだ。

「んっ」

「なあ、お前、女なんだろ?入れられて、気持ちいいんだもんな?」

 田子作は快楽を得る為に腰を前後に揺らし、打ち付けた。
 蘭丸はもう声も出ずに、泣き続けている。愛らしい泣き顔は、男たちの加虐心を掻き立てる。

 田子作は、引き抜いて、蘭丸の顔や体に体液をかけた。幾らか鮮血が混ざっているようだった。

「また後で来るだ」

 田子作は、蘭丸を置き去りにして、その場を離れた。

 一人になった蘭丸は、残された痛みを感じながら、信長と過ごした夜を思い出していた。
 綺麗だと誉めてくれた。女みたいだと揶揄されるのが嫌だった。しかし、信長に言われると素直に嬉しかった。かけられたままの体液が鼻につく。

 汚い。蘭はもう、綺麗じゃない。
 暗い室内に、哀れな嗚咽だけが響いていた。






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