妄想、愉悦。


拾壱


  


 源太郎は鳥の囀りと、太陽の光りで目覚めた。眠る蘭丸を腕の中に包み込んでいる。蘭丸の首の下に敷いた腕は痺れ、すっかり感覚を失っていた。

「お…」

 起こそうと声をかけようとするも、安らかな寝顔を見て躊躇った。源太郎は暫く寝顔を眺めてから、肩を揺すった。

「んっ…」

 蘭丸は寝返りをうって源太郎の腕を解放した。寝足りないのか目覚める様子はない。
 一糸纏わぬ後ろ姿は中性的で、膝を折り、体を丸めた体制で、金色の光りを白い背中に浴びていた。割れ目の奥の秘孔が紅く腫れている。何度となく、強引に突かれたからだろう。昨晩の交わりを思い出すと、胸が痛くなる。
 源太郎は其処を舌でなぞり、唾液を塗した。蘭丸の皮膚が鳥肌を立て、体をびくつかせた。

「あ、何…!?」

 目覚めた蘭丸の尻肉を掴んで広げ、顔を埋め込む。

「お蘭、じっとしてるだ。手当てが出来ないだ」

「源太郎様、手当てなど、そのような…」

「唾液は傷を治すんだべ。さ、尻を上げるだ」

 源太郎は俯せにさせ、腰を軽々と持ち上げ、再び顔を尻に埋め込んだ。窄まりが更に締まり、解すように舌を擦り合わせる。丁寧に皺に唾液で濡らし、舌先をあてがう。

「やっ…」

 蘭丸が熱い吐息を漏らすと、源太郎は動きを止めた。痛いか?そう言おうと顔を離そうとすると、蘭丸が腰を突き上げた。源太郎は舌を粘膜に押し込んだ。

「源太郎様…」

 柔らかい舌先が僅かに侵入し、蘭丸の中で蠢く。蘭丸は体をわなわなと震わせた。中心部の膨張が、寝起きのせいなのか、それとも快楽のせいなのかが分からない。

「源太郎様、もう、大丈夫ですから、いっ…!」

 深く入り込むと、蘭丸は体を仰け反らせた。源太郎はすぐさま作業を中断し、蘭丸を解放した。

「痛かったか?」

「少しだけ…」

 蘭丸は腰を下ろして源太郎に向き直る。源太郎の視線は、蘭丸の中心部を捉えていた。先端が濡れていた。蘭丸は慌てて恥ずかしそうに隠した。

「源太郎様の優しさを…、蘭は何と…」

 源太郎は蘭丸を冷たい床にゆっくり倒した。

「お蘭がおらを求めてくれるのが、嬉しい」

「源太郎さ…、んっ」

 蘭丸の唇を吸い、片手を中心に添える。滑りやすいそれを上下に扱いた。

「っ…ふっ…」

 快楽を声に出せないもどかしさ。角度を変える度に息を吸っても、すぐさま塞がれてしまう。蘭丸は源太郎の肩にしがみつく。

「………っ」

 蘭丸の体が強張ると、源太郎は先端を掌で包み込んだ。温かい体液を受け止める。

「お蘭、こんなに出たど」

「んっ…」

 濡れた拳を蘭丸の顔の上に翳して広げると、濁りが滴り落ちて額や鼻、口内に流れ落ちた。蘭丸が拭おうとすると、手首を掴んで再び唇を塞ぐ。唾液と体液を吸い上げ、解放した。
 源太郎は蘭丸の体液を音を立てて飲み込む。

「お蘭、無理をしたら駄目だ。お蘭にも気持ち良くなってもらわなきゃ、意味ないだよ」

「ごめんなさい、ほんとはずっと痛かったんです、でも、あの者たちに残された痛みが嫌で…」

「ああ」

「源太郎様から貰った痛みなら、辛くなどないから…」

「嬉しいだよ、お蘭。お前の気持ちが。だが、余計に自分を痛めつけるのはいぐねえ」

 源太郎は蘭丸を抱き締めた。肋の浮いた脇腹が腕に当たる。

「守ってみせる」

「え?」

「おら、お前みたいに強くねえ。でも、強くなるだ。お前を守れるように」

 蘭丸は首を横に振る。

「源太郎様は今のままで良いのです」

「だが、それではお前を守れないだ。それどころか、守られてばかりだ」

「蘭は、守られています。源太郎様のお側にいると、春の日差しのように暖かい。源太郎様は、蘭をこうして救って下さいました。矜持を取り戻せました。ですから蘭も、源太郎様を守りたいのです」

「矜持?」

 蘭丸が体を離して、ごつごつとした源太郎の手を取った。骨太で逞しく、長い指の腹は堅くなっている。その手を愛おしそうに自分の頬に当てた。

「この温かい手で沢山の作物を育み、蘭を愛でて下さいました。この手が、蘭の矜持。汚してはなりません」

「おらは、おめえが犯された時、自分が一番許せなかった。なのに、おめえはおらを守ってくれた。そんなおらを…」

「過ぎたことです、ご自分を責めないで下さい。いいのです、源太郎様が、蘭のお側にいてくださるのなら…。この手を離さないで下さるのなら」

 蘭丸の瞳が熱を灯し、僅かに潤んでいた。
 村人がこの森を訪れる前に、ここを離れなければならない。早く服を着て、支度をしなければ。そんな考えを巡らせながらも、自身を膨らませていた。花弁のような唇を、この滾りによって塞いでしまいたい。源太郎は蘭丸の後頭部に手を添えて、静かに下腹部へと促した。

「源太郎様、蘭に、委ねて下さいますか」

「ん?」

 源太郎の体を壁に押し当て、広げた足の間に正座をする。蘭丸は源太郎に口づける。舌は使わず、強く吸ってから、首筋、鎖骨へ移動し、胸板へ。蘭丸は先端へ舌を当てた。

「くっ…」

 源太郎は大きく反応した。蘭丸は左右の手を源太郎の手に絡ませ、二人は手を握りあった。

「ここが、弱いのは、蘭だけではないのですね」

 そう言った蘭丸の瞳が魅惑的に輝き、源太郎は頭に血が上る。
 蘭丸は乳首の周りを円を描くように舐め、優しく噛んで、舌で転がした。

「お、お蘭…、お、お、おら…ん」

 舌を動かす蘭丸は相変わらず情熱的で健気で、愛くるしく淫らだった。源太郎の中心は既に筋を立て、角度が増してゆく。
 そんな源太郎に気付かず、蘭丸は唇で咥えて、ちゅ、と音を立てて吸った。

「…うっ…」

「や」

 前触れなく放出し、勢い良く出された体液は、蘭丸の顎を濡らした。驚いた蘭丸は顔を離す。体液は二人の間から溶岩のように落ち、二人の髪や体を濡らした。
 放ち終えると、握りあったままの手を引き寄せ、源太郎が蘭丸を抱き寄せる。背中や腰にまで白濁が付着しているが、蘭丸は嫌がるようでもなく、寧ろ愛おしそうに抱き返してきた。

「いっぱいでましたね」

 蘭丸が源太郎の髪に滴る白濁を撫でながら言う。

「やっぱ、隠し持ってただな」

「え?」

「おら、あんな風に乳首を弄ると気持ちいいだなんて、知らなかっただ。他にどんな手管持ってるんだ?」

「そんな…」

 蘭丸は頬を赤らめる。

「源太郎様こそ、いつも蘭を…」

 蘭丸は恋を知ったばかりの少女のような表情で、瞳を伏せた。

「あー、だから、それが狡いだ!」

 源太郎は体液塗れの手で蘭丸の頬に触れ、親指を唇に添えた。蘭丸は唇で指を包み込む。源太郎が指を押し込むと、口内で舌になぞられる。

「こんな可憐な顔で、やることは色っぽくて…」

 源太郎は指を抜いて、蘭丸を抱き上げる。

「ほんとはもっとしてえけど、時間がそろそろないだな。体、洗ってやる」

 源太郎は残念そうに呟いた。

「また、幾らでも出来ます。私たちが、共にある限り…」

「そうだな」

 蘭丸は源太郎の肩に抱き付いた。源太郎は細い腰を、滑らかな太腿を抱き寄せた。
 偶然めぐり逢い、手にした美しい少年。この少年といる限り、自分のこの先の人生は平坦ばかりではないだろう。三年前まで、美しいと評判の妹を守ってきた源太郎には良く分かっていた。幸い、蘭丸は自らを守る術を持っているが、もしもその力を上回る者に狙われたら?

「守ってみせる」

「え?」

 源太郎は誓いを呟いた。

「強く、なるだ」

 蘭丸を、そして自分自身を守る為に。蘭丸を不幸にしない為に、自分の大切な存在を、二度と失わない為に。

「源太郎様、先程申しましたように、私が…」

「ああ。だが、おらはもう、お蘭しかいないだ」

「源太郎様…?わっ」

 扉を開け、源太郎は走り出した。

「いくぞ!」

 源太郎は蘭丸を強く抱いたまま、清らかな水面に飛び込んだ。




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