妄想、愉悦。


肆拾捌


   


 体が火照っていた。

「ん、く…っ」

 口を吸われる。息苦しい。蘭丸は逃れようと首を背けるが、頬を掴まれ、固定されてしまう。

「や、あ…」

 目を開けると、青みがかった灰色の瞳がゆっくりと遠退き、菊之助の綺麗な笑顔が見えた。

「ふふ」

「菊殿…」

「ね、あなたが欲しいんだ。おれにちょうだい?」

「ちょうだいって…、んっ」

 唇を押し当てられ、舌を挿し込まれる。苦しいのに抗えない。蘭丸は抵抗を示す為に左手で菊之助の肩を押した。力が入らないせいで、ただ手を添えているだけになってしまった。
「ふっ、あ」

 乳首を摘まれる。菊之助はくすりと笑った。

「やっぱりここが好きなんだね。それとも、ずっとしてないから敏感になってるのかな?」

「止めて、菊殿…」

 菊之助は体を起こした。互いに全裸で、蘭丸は右腕の包帯さえも取られていた。蘭丸は辺りを見回した。ここは、いつも蘭丸が休んでいる部屋だ。何故こんなところにいるのだろうか。確か唐八と庭にいたはずだ。

「源太郎様を探しに行かなければ…」

「源太郎さんは、死んだんだよ?」

「違ったんです、あのご遺体は、源太郎様のものではありませんでした」

「嘘。乱太郎さん、悲しくて現実が見えないだけだよ」

 菊之助が蘭丸の腰に跨って体を被せてきた。哀れむような顔をして額に口付けてくる。

「あの無惨な死体は、別の誰かだって自分自身に言い聞かせてるんでしょう?」

「違います…っ」

 首筋に唇を押し当てられた。蘭丸は反射的に体を捩ってしまう。体が熱い。裸でいるのに、寒さを殆ど感じない。寧ろ、菊之助のひんやりとした柔肌が心地良くさえある。

「可哀相に。おれが忘れさせてあげる」

「菊…!」

 口に匙を入れられた。とろりと甘いものが舌に、喉に流れていく。匙からきらりと光る糸が垂れていた。

「蜂蜜…?」

「そう。美味しい?」

 菊之助は、蜂蜜の入った小鉢に匙を入れ、掬った。それを蘭丸の胸へ垂らした。冷たい蜜が肌を泡立たせる。

「ううっ…」

 抵抗したいのに出来ない。体を拘束されている訳でもないのに。何故、力が入らないのだろうか。

「や、あっ…」

 菊之助は、蘭丸の乳首に匙を押し付けた。蜜のぬめりで匙を擦り、滑らせて遊んでいる。
 弱点を刺激され、疼いて蘭丸は身悶えた。更に体が火照ってきて、中心に熱が集まる。

「可愛い…」

 菊之助は耳を舐りながら、もう片方の乳首を匙と蜂蜜で弄んでいた。

「止めて、菊殿…」

「止めて欲しいの?」

「はあうっ」

 菊之助は匙を放って、蘭丸の下腹部に手を伸ばし、掴んだ。

「凄い…、今初めて触れたのに…。脈打ってるの分かる?してあげようか?それとも、胸だけで気持ち良くなっちゃう?」

 菊之助が耳元で囁く。吐息がくすぐったい。

「やっ…!」

 その時、何かが割れるような、大きな物音が響いた。

「な、何…?」

 菊之助が顔色を変えて振り返った。どかどかと、大きな足音が聞こえる。それも、一人や二人ではない。
 蘭丸の上にいる菊之助は怯えながら蘭丸の肩を抱く。遠慮のない足音が近付て来る。

「!」

 障子の前にぞろぞろと数人の影が出来た。手前の人物が、刃物を振りかざす。枠が容易く破壊された。
 小汚い格好をした大柄な男たち五人。男たちは裸の少年を見詰めながら卑しく薄ら笑いを浮かべた。

「菊殿、逃げ…!」

 蘭丸が伝えるよりも先に、手前の男が菊之助の髪を掴んで持ち上げ、顔を覗き込んだ。

「あうっ!痛い、止めてっ」

「可愛い顔してんな。俺はこいつにする」

「じゃあ、俺はこっちだ」

「あっ」

 すぐ横の男が、蘭丸の髪を掴んで引き上げた。

「乱太郎さん!」

「菊、殿…」

 菊之助の白い首もとに鉈があてがわれている。震える柔肌に鋭利な刃先が触れた。

「いいか?従えば命まで取らねえよ、お前も、お友達の方もよ」

「分かったから、乱暴しないで…」

 菊之助は泣いて懇願した。

「いい子だな。こっち来い」

 襖を乱暴に開け、菊之助は隣の部屋に転がされた。

「いいか、歯を立てるなよ?お友達がどうなるか分かってるな?」

「菊殿…っ」

 菊之助の姿が見えない。菊之助はすすり泣きながら、何かを呟いていた。それは、途切れ途切れの悲鳴や喘ぎに変わりながら、部屋に響いた。

「お前はどうすんだ?」

 蘭丸の頬に、大振りの鉈が触れた。こんなことに構っている時ではないのに。しかし。

「従いますから、菊殿を…」

「いい子だな」

「へへっ」

 男は蘭丸の下半身に視線を落とした。

「可愛い顔して、いいもん持ってんな」

「だが綺麗な色して、使い込んでねえみたいだ」

「こっちはどうだ?」

「あっ」

 二人がかりで、足を広げられ、顔を近付けて奥を覗き込まれる。

「処女孔みたいだな」

「いっ…!」

 準備も施していない乾いた窄みに、指を埋め込まれた。

「乱暴するな。処女なら優しくしてやらなきゃな、こっちも気持ち良くなれねえ」

「んっ」

 目の前の男が、蘭丸の口を吸った。荒々しく舌が入り込んで、口内を舐め回される。
 嫌なのに、再び体が熱を灯した。唇を押し当て、舌をほぐすようにさすられる度、蘭丸は無意識に足裏を布団にこすりつけていた。
 別の男に乳首を舐められる。

「甘いな」

「どれ」

 更にもう一人が、もう片方の乳首を口に含んだ。男三人に、唇と左右の乳首を吸われる。小さな突起を歯で挟みながら、先端をざらついた舌で押しつぶし、蹂躙された。

「ん、ふっ…」

 蘭丸は、もじ、と腰を捩った。乳首を舐る男が、蘭丸の震える内腿をさする。その手が小さな実の入った袋を撫で回した。

「ん?気持ち良いか?」

「あぅ…!」

 唇を解放され、声を抑える為に蘭丸はきゅっと口を結んだ。代わりに目の縁から涙が溢れた。

「はは、気持ち良いの我慢してら」

「ふぐりがそんなにいいか?それとも、ここか?」

「んん!」

 真上よりもやや斜めに上がった中心を握られる。幹に筋を立て、桃色の先端を濡らしていた。力が入らず、耐えることもままならない。精が上がるのが分かった。
 乳首を吸われ、指で転がされ、袋を揉まれ、茎を擦られ始めて蘭丸はすぐに放ってしまった。温かい液は、蘭丸の腹や男の肩を濡らした。

「濃いのが出たな」

「今度は俺達を気持ち良くしてもらおうか」

 足元にいる男が蘭丸の腹に付着した白濁液を指で掬って、下の孔に埋めた。達して、息づいていたせいで、殆ど抵抗もなく埋まった。

「おい、孔が柔らかくなってるぞ」

「お前、処女じゃなかったのか?ん?」

「ああっ!」

 更に指が深く入り込む。太い指が内側の弱点を掠った。

「はは。柔らかいのに締め付けてきてら」

 男は指を抜き、蘭丸の両足を担いで、自分のいきり立ちを持ち、添える。蘭丸の覚悟が恐怖に覆された。

「や!嫌!」

 また汚されてしまう。

「ん?嫌なのか?」

「嫌…!」

「残念だな、お友達はお前の為に頑張ってるのに。いいよ、俺達は。おまえたちを殺して、体があったかいうちに犯してやるからよ」

「死体なら抵抗しねえからな」

「どうすんだ?俺達はどっちでもいいんだぞ?」

 顔の前にいた男が、腰紐を解き、蘭丸の顔に太く肥えた肉棒を突き出した。

(……菊殿……)

 襖一枚向こうの菊之助の切ない喘ぎ声が耳に貼り付く。蘭丸は、自らその熱い先端を口に含んだ。不快な味が舌に触れる。

「へへ、小さい口だな」

「んっ!」

 無理やり押し込まれたものが喉奥に届いた。頭を押さえつけられて、苦しさから小さな悲鳴を漏らした。すると、今度は下の孔を貫かれる。

「んぐっ」

「いい孔だ。すげえ締め付けてくる」

「う、ううっ」

 腰を押し付けられる度、蘭丸の華奢な体が揺れた。口を塞いだ男は後ろからの振動がもどかしいのか、蘭丸の顔を跨ぐようにして上になり、再度口に挿し込む。

「う、うっ」

 えずいてもまた塞がれる。もう一人の男が、蘭丸の右手首を取り、自分の熱いものを握らせた。

「しごけよ。友達殺されたくなかったら、俺達全員満足させろ」

「んうっ」

 上と下で激しく揺すられて、返事が出来る訳もなく、しかし不自由な右腕は動かせない。蘭丸は精一杯力を込めたものの、右手はただ小刻みに震えていただけだった。

「やっこい掌だな」

 握力が足りずに、男は蘭丸の手に手を重ねて、強く握らせた。
 最初に放ったのは、蘭丸の口を犯していた男だった。どろどろとした熱い体液が喉の奥を通っていく。

「残さず啜れ」

 蘭丸は従い、出し終わると通り道に残ったものを吸って飲み込んだ。満たされた男は腰を上げる。快楽を遮る息苦しさから解放されると、下腹部からの刺激で昂ってきた。

「やっ、あ!」

「ん?気持ちいいのか?」

「ここ、持ち上がってきてすっげえ締めてるな」

「あっあ…!」

 全身が熱くて、血液が沸騰しているようだ。快楽に抗えない。

(源太郎様…!)

 締め付けられ、男は蘭丸の中で吐き出した。それと同時に、蘭丸も白い精を撒き散らしていた。

「ほら、今度は俺の番だ」

 蘭丸の右手を使っていた男が、蘭丸の手から自身を抜いて、蘭丸の体をうつぶせにし、自らの股間を蘭丸の顔に押し付けた。

「早くしろ、お友達は頑張ってるぞ」

 菊之助の存在を思い出して、蘭丸は咥えて左手で擦った。満足させなければ菊之助まで殺されてしまう。先端を舐めて、大きな袋を握ったり、裏筋をなぞったりしていると、どんどん大きくなってくる。

「へえ、技、持ってるじゃねえか」

「ん…!」

 水が零れ、そこから白濁液が勢い良く溢れた。蘭丸は耐えられずにむせてしまう。

「ほら、変われ。次は俺の番だ」

 尻を犯した男が、蘭丸の顔の前に座った。

「やるよな?」

 蘭丸は、白濁塗れのものをまた口に入れて、手で擦る。口の中のものが垂れて、上下運動が遣りやすくなった。

「お、上手だな」

「…っ!」

 尻をぺしりと叩かれる。

「ほら、尻、あげろ」

 蘭丸が腰を上げると、同時に中に無理やり押し込まれた。内部の弱点を圧迫され、反射的に顔を上げてしまう。

「んあっ…、あっん…」

 口が自由になり、鼻に掛かった声が出てしまった。菊之助を助けるために尽くしていたのに、大きな快楽が押し寄せてくる。

「尻ほじられて感じてら」

「はは、本当にすっげえ締めてるな」

 腰を穿たれると、溢れて蘭丸は抑えられなくなった。

「や、止めて、そこ、触ったら…!」

 内側を擦られる。こんなに嫌なのに、菊之助を助けなければいけないのに、意識ごと快楽に傾きそうになる。

「ほら、なめろよ!」

「んぶっ」

 頭を押さえつけられ、口に押し込まれる。苦しい、嫌だ、なのに…。

「あ、あんっ、いやあ!」

 蘭丸の口が塞がれると、菊之助の声と、肌と肌がぶつかり合う音がやたら大きく響いた。

(菊殿…)

 菊之助も同じように嫌悪と恐怖で惨めに犯されている。蘭丸は男の快楽を促す為に、えずきをこらえて口をすぼめた。

「健気だな」

 男は喉奥の締まる箇所まで押し込んで、蘭丸の頭を抑え付けた。

「おい」

 前の男が、蘭丸が前後を犯されている姿を笑って眺めている男に声をかける。

「首を絞めろ。殺さねえ程度にな」

「こうか?」

「ぐっ」

 蘭丸の細い首を大きな両手が絞めた。重苦しさが重なって、蘭丸は息が出来なくなった。

「いいぜ、よく締まる」

「尻もだ」

 男らは抜き挿しを加速させた。苦しい。いっそもう殺して欲しい。けれど、菊之助を助けて、源太郎を探しに行かなければ。心の中で葛藤しながら、意識が遠退いていく。

「もういいぜ」

 首から手が離れる。息をついて束の間、男は蘭丸の口内に吐き出した。蘭丸はこらえられず、咳き込んで零してしまう。

「ほら、来いよ」

「あうっ」

 後ろに嵌めたまま、男は蘭丸の体を起こして自分がしゃがみ、蘭丸の膝裏を担いで寄りかからせた。体の重みで、結合が深くなる。

「お前もまた気持ち良くなるか?ん?」

「うあっ!」

 乳首を摘まれる。蘭丸は力なく手を添えて拒んだ。

「気持ち良いんだな?中がきつくなってるぞ」

 蘭丸は顔を背ける。しかし、腰を激しく揺すられ、中の弱点を刺激され、男の腕の中で身悶え、結果的に相手の欲情を煽っていた。
 嘲笑っていた二人が、隣室に消えていく。

「待って、菊殿にはもう…!」

 蘭丸が身を乗りだそうとすると、乳首に爪を立てられ、制される。びくっと痛みで体が揺れる。

「俺はまだ終わってない」

 蘭丸を抱えたまま腰を突き上げた。耳元に直接かかる息遣いが気持ち悪い。早く終わるように、蘭丸は目を閉じた。
 蘭丸の狭い空洞を往復してから、滾りを蘭丸の中に残し、男は蘭丸の体を解放した。

「ふうー」

 男は満足気に深呼吸をして、立ち上がる。体液の染み込んだ布団の上で、蘭丸は男の足首を掴んだ。

「お願いします、菊殿には、もうこれ以上…」

 男は冷たく笑う。

「大丈夫、お前にもすぐ来る」

 そう言って、蘭丸の手首からするりと足を抜いて、隣へ消えた。

「菊…」

 体に力が入らない、腰が立たない。蘭丸が布団の上で体を震わせていると、隣から別の二人の男が現れた。今まで菊之助を犯していた男だ。

「ひっでぇざまだ」

「だが、こっちも可愛いな」

「あいつに比べると子供っぽいな尻も乳首も小さい」

「男っぽいの間違いだろ。ここを見てみろ」

 後ろから肩と手首を掴まれ、体を仰向けにされた。体液で汚れた体を、舐めるように見回している。

「ああん!」

 再び菊之助が嬌声を上げ始めた。

「こっちも楽しむとするか」

「も、嫌だ…」

「ん?嫌なのか?分かった。友達の首、かっ斬ってやるよ」

 男は立ち上がって、壁に掛けた鉈に手を伸ばした。

「ま、待って下さい!ちゃんとやりますから!」

 蘭丸は泣きながら声を張り上げた。男は笑って、伸ばしかけた手で蘭丸の頬に触れる。

「何か言ったか?」

「好きにしていいですから、殺さないで下さい…」

 蘭丸の頬に触れた男の手が胸板に伸び、小さな豆粒に触れた。蘭丸は唇を噛んだ。しかし、肌はぴくりと反応してしまう。

「しっかり仕込まれてら。おい、お前、どっちにする?」

「口だ。可愛い顔が見れるからな」

「じゃあ、俺はこっちだ」

 乳首を弄んでいた男が下に移動し、蘭丸の脚を広げる。孔からは白濁液が滴っていた。

「お前はどんな味がするかな?」

 柔らかい肌をした袋に、男は既に汚れていた自分の先端をこすりつけて遊んでいた。

「立派なもんぶらさげて、ここは小さいんだな」

 何度か当てているうちに、堅さが増す。準備が整うと、男はその下の窄まりに挿し込んだ。

「ああっ」

 内壁をめくるように擦られ、中から出口に向けてこみ上げてきた。

「ほら、俺のことも忘れるな。友達は上手だったぞ?」

 もう一人が胡座をかいて、蘭丸の頭を膝にのせ、先端を顔に添えた。蘭丸は舐めながら、左手で幹を磨く。下腹部の熱に押し流されないように、集中しなければ。

「上手だな」

「それに、締まりのいい名器だ」

 男達が卑しく笑った。早く終わらせなければ。終わらせて菊之助を助けなければ。そして、源太郎を探しに行かなければ。しかし、腰の振動が激しくて、上手く口に収まらない。

「おい、もっと静かにやれよ」

 前の男が不満を漏らすと腰を揺すった男が、上半身を傾けて、蘭丸に腰を押し付けた。そして、両の乳首を摘む。

「あうっ…」

「ほら、締めろ」

 男は蘭丸の中で吐き出した。途中で抜いて、蘭丸の肌にわざと残りの白濁液を撒き散らす。身悶える蘭丸は、もう一人に無理やり男根を口に押し込まれた。

「よがるのも良いけどよ、俺のことも満足させてくれや」

 蘭丸は先端を舐めまわした。握ったものの硬度が増す。吸い出しながら幹を磨く。次第に震え、放出された。

「飲め」

 前の男よりは少なく、薄い。蘭丸は、こくりと飲み込んだ。

「ふうー」

 男たちは満足そうに立ち上がり、服を着始めた。
 終わった。何時の間にか、菊之助の声も聞こえなくなっていた。菊之助も終わったのだ。けれど、蘭丸は体を動かせずにいる。それなのに感覚ははっきりしていて、後口や右腕は痛く、体液の匂いが鼻を突き、舌に苦味が残っていた。

「あっ」

 男の一人が、蘭丸の体を担いだ。

「随分汚れちまったな、洗ってやる」

 男は蘭丸を抱えたまま歩きだした。襖の向こうの生白い菊之助の脚だけが見えた。

「待って、菊殿が…」

 蘭丸の声に構わず、男は部屋を出て、廊下を歩き出した。そして、縁側を降りて、庭に出る。どしゃ降りの雨だった。

「そらっ」

「あっ」

 男は蘭丸を草の上に放った。体液が大粒の雨で流れ落ちる。

「その雨で体を洗うんだな」

 捨て台詞を吐いて、残酷な男たちは使い古しのぼろ傘を差して雨の中へ消えて行った。蘭丸は草の上で雨に打たれながら、震える体を起こした。

「菊殿…」

 菊之助の安否を確認しなければ。けれど、体が思うように動かない。

「菊…」

 冷たい雨が、蘭丸の体温を緩やかに奪って行った。






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