妄想、愉悦。





  

 蘭丸が目を覚ましたのは、綺麗な和室の豪奢な寝台の上だった。

「ここは…?信長様は…」

 蘭丸は辺りを見回した。部屋は広く、窓はない。前後は壁で、左右には美しい絵を施した襖がある。

「これ…?」

 蘭丸は自分を見下ろした。女物の着物を着させられ、触れてみると髪も綺麗に梳いてある。状況が把握出来ない。

「目、覚ましただか」

 やって来たのは田子作だった。見覚えのある二人の男を連れている。

「ぐひひ…やっぱり綺麗だな」

 田子作は蘭丸の肩に触れようとしたが、ぴしゃりと叩かれる。

「触るな!私をどうするつもりだ」

「決まってるだ。また、みんなで楽しむだよ」

「拘束せず、どうやって?」

 蘭丸は寝台から体を下ろし、田子作の眼前に立ちはだかる。

「こうするだよ」

 田子作が自分が入ってた場所と違う襖を開ける。その向こうは鉄格子で、中には頭から血を流し、椅子に太い鎖で縛り付けられた源太郎がいた。背後には覆面の黒ずくめの男が、源太郎の首に、短刀を突きつけている。

「源太郎様!」

 蘭丸は源太郎に駆け寄ろうとしたが、田子作に腕を掴まれる。

「お蘭、すまねえだ…。おらのせいで、こんな…」

 源太郎の声は悲しみに満ちている。瞳からは涙を流していた。

「分かるな?源太郎の命は、お前次第だ」

「だめだ、お蘭…」

 蘭丸は、拳を握り締め、源太郎を見つめた。そして、満面の笑みを浮かべる。その愛らしい顔に、田子作たちの胸は高鳴る。緊迫した状況とは思えない笑顔だった。

「源太郎様、蘭の命は、源太郎様の為にあるのです。源太郎様をお守りする為なら、辛くなど、ありません」

「お蘭…」

「いい覚悟だ」

 田子作は綺麗に留められた帯を外し、くるくると巻き取る。別の男は蘭丸の体を羽交い締めにし、着物を乱暴に剥がした。髪は乱れ、薄い襦袢と足袋だけになった。

「やめるだ、お蘭!」

 乱れた襦袢から、肩と脚が剥き出しになる。獣たちはその肌にむしゃぶりついた。田子作は蘭丸を強引に貫き、ある者は蘭丸に咥えさせ、ある者は蘭丸の肌を舐りまわす。

「やめるだ、やめるだよ!おらを殺してええから!」

 入れ替わり立ち替わり、蘭丸は三人の男たちに犯され続けた。しかし、蘭丸は表情を乱すことなく、声ひとつ漏らさない。

 半刻後、蘭丸を味わい尽くした男たちは満足げに部屋を出て行った。
 源太郎はみっともなく泣き続け、蘭丸の名前を呼んだ。

「源太郎様、どうか、泣かないで下さい。私は、平気ですから」

 蘭丸はゆっくり立ち上がる。強引に貫かれた箇所がずきずき痛むが、蘭丸には源太郎しか見えない。

「お蘭ー。おらは、おらは…」

 後ろにいた黒ずくめの男が短刀をしまい、鉄格子の鍵を開け、蘭丸に歩み寄る。源太郎を解放したと思い込んだ蘭丸は、源太郎にかけ寄ろうと走り出す。乱れた襦袢で躓き、黒ずくめの男に抱き止められてしまう。

「離して、源太郎様…」

「ふっ」

 黒ずくめの男は鼻で笑った。蘭丸は、息を飲む。

「あなたは、まさか…」

 男は覆面の口元だけを剥がし、顎を持ち上げ、蘭丸に口付けた。口髭が上唇に当たる。そして、口移しで何かを口内に入れられる。蘭丸は抵抗するも、男は器用にそれを喉の奥に放り込む。

「な、何を飲ませたのですか?」

 男は覆面を外した。
 端正な顔立ちをした男だった。目や鼻の造りのところどころは信長に似てはいたが、全くの別人で、信長よりも若い。

「見上げた根性だ、気に入った」

 低く、通る声も信長に似ている。
 信長だと信じていた蘭丸は、自己嫌悪と精神的な打撃で、男にすがりつくように、屈み込む。

「信長様じゃ…ない」

「いや、信長だ。お前が信じるのなら、我は信長となろう」

 男は蘭丸の襟を掴み、襦袢を剥がす。足袋だけ残し、全裸になった蘭丸の薄い胸に歯を立て、乳首を舌で撫でる。

「お蘭、乳首が傷付いておる…、誰がやったのだ?」

「それは…」

「まあ、良い。愛でてやる、どうして欲しい?」

「お好きなように、信長様」

 蘭丸は男の頭をぎゅっと抱いた。
 源太郎は田子作の時のとは別の、心理的な衝撃を受けた。自分に仕えると、瞳を輝かせた蘭丸が、他の男に体を預け、自由にさせている。

「お蘭、そいつは、信長じゃねえだよ!」

 源太郎の悲痛な叫びは、蘭丸の耳に届かない。
 男は傷の残るそこを、丁寧に舐め回した。

「ああ、信長様…」

 舌を出し入れさせ、唇で包み、表面を舌の力で押し潰す。
 蘭丸は、自身を大きくさせて、先走りを零してしまった。

「申し訳ありません、信長様」

「くく、愛らしい。乳首だけで感じてしまったか」

 蘭丸の頬が紅潮する。
 男は白濁を滴らせた先端に人差し指を載せ、小刻みに動かした。

「あ、ああ!いけません、信長様!」

 蘭丸は男の肩にしがみつく。

「くうう…」

 蘭丸の先端から、噴水のように体液が溢れ、蘭丸の顔や体、男の黒ずくめの服に撒き散らした。この華奢な体からは信じられない量だった。たった、指一本で。

「くっく。気持ちよいか」

「ら、蘭は何てことを…、んむっ」

 男は蘭丸の頬を濡らす体液を指でなぞり掬い取り、そのまま蘭丸の口内に入れる。すぐさま指を抜き、蘭丸の体を床に倒し、口付ける。部屋の中は淫らな水音が響く。長く濃い口付けをし、唇を離すと、細い透明な糸が二人の唇を繋いだ。

「汚れてしまったな、湯浴みをしよう」

 男は襦袢で蘭丸の体を包み込み、抱き上げた。

「い、嫌です!」

 蘭丸は男の肩にしがみつき、肩口に顔を埋める。まるで、小さな子供が大人に甘えるように。

「どうした?」

 蘭丸は顔を少しだけ上げ、潤んだ大きな瞳で男の顔を見つめる。頬の赤がより濃くなる。

「ら、蘭は…、信長様が欲しいです…」

「くっく、はっはっはっ。よいよい、くれてやるぞ、たっぷりとな」

 蘭丸は嬉しそうに、男に抱きついた。極上の笑みを浮かべて。
 男は絶望の表情の源太郎を一瞥し、蘭丸を抱え、部屋を出て行った。

 広い和室の片隅に、源太郎は一人、取り残される。鉄格子は開いたままなのに、体を拘束され、動けない。
 畳に残された体液の染みが視界に入る。
 源太郎はすすり泣いた。自分が不甲斐ないせいで、蘭丸をまた傷つけてしまった。そして、蘭丸をあの男に奪われてしまった。蘭丸のあの男に向ける恍惚の表情が蘇り、源太郎は顔をぐちゃぐちゃにして泣いた。
 時間が経ち、涙が乾いた頃には泣き疲れ、ぱたりと眠ってしまった。





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