拾陸
帰宅し、源太郎は残りの栗を剥きながら食べ、蘭丸は夕餉の支度をした。支度と言っても朝炊いた冷飯の残りと細かく刻んだ野菜を鍋に入れ、囲炉裏に設置するだけですぐに終わった。
「ごめんな、一人でさして。旨かっただよ」
栗を食べ終え源太郎は皮を纏めた。
「いえ、簡単なものですから。栗は冷めていませんでしたか?」
「まだあったかいだよ。それに、冷めたって旨い」
「良かった」
支度を終えた蘭丸は、源太郎の隣に座って身を寄せた。
「暗くなる前に帰宅出来たのは初めてですね」
「そうだな」
「少しだけですが、源太郎様の仕事しているところを見られて良かったです」
「そうか?」
「はい。果樹園も楽しそうですね」
「まあな。米や野菜とは勝手が違うこともあるが、やっぱりもの作りは楽しい」
蘭丸は源太郎の手を握った。少し湿っていて温かい。
「……」
源太郎は横目で蘭丸を確認し、蘭丸は頬が熱くなるのを自覚しながら見上げた。源太郎の顔が近付いて、唇が触れ合う。蘭丸は源太郎の肩に腕を巻き付けて身を乗り出した。
「…お蘭、まだ早い。だって、飯も風呂もまだだ。お蘭が汚れちまう」
源太郎は帰宅して手と顔を洗っただけだった。服は埃を纏い汗も随分吸っている。
「分かりました」
蘭丸は立ち上がって源太郎の前で服を脱いだ。源太郎は蘭丸が素肌に近付くにつれ顔を真っ赤にしながら凝視している。
「これで服は汚れません」
蘭丸は下帯一枚の姿になると、源太郎の手を取って自分の腹に当てた。
「ここ、しまった栗が当たっていて、まだ少し温かいです」
「ほんとだ、赤くなってて湿ってる」
「わっ」
源太郎が手を蘭丸の腰に当て、性急な動きで抱き寄せた為、蘭丸は膝を崩してしまった。床に当たる直前で源太郎に支えられ、蘭丸は打つことなく膝を着地出来た。
「びっくりしたか?」
源太郎が子供のように悪戯っぽく笑うと、熱を持った蘭丸の肌に口付けた。吸いあった時温かかった唇が、今は冷たく感じる。蘭丸は源太郎の頭をそっと抱き寄せた。
「んっ」
源太郎が口を開いて啄み、歯が当たった。くすぐったくて、蘭丸は体を捩ってしまう。
「気持ち良くないだか?」
「少しくすぐったいです」
「ふむ…」
源太郎は刻んだばかりの赤い跡を指でなぞった。蘭丸の肌を見て、二日前の跡に再度口付ける。
「んっ…」
びくりと反応しそうになって、源太郎に腰を押さえつけられる。段々と源太郎は首を上げて、顔の距離が近くなってきた。蘭丸は、自分の鼻先が触れていた源太郎の耳を口に含んだ。
「わーっ」
源太郎は思いもよらない声を上げ、驚いた蘭丸は口を離した。
「今のはくすぐったかった」
「では、気持ち良いところに触ります」
「んっ」
源太郎の唇を塞ぎ、まだ着たままの短袴に手を入れ、下帯の中をまさぐる。少し固くなっていて、下の袋を揉みしだきながら源太郎の口の中に舌を押し入れると、源太郎が反応を返す。少し甘い唾液を吸い上げ、唇を開放し、頬や輪郭に口付けていく。
「お蘭…」
口が自由になると名を呼んでくれた。蘭丸は持ち上がって濡れていた肉茎を握り、源太郎の首筋を甘噛みする。源太郎が震えている。これ以上肌を吸ってしまったら、日焼けた肌でも目立ってしまうだろうか。
「お蘭っ…」
蘭丸は源太郎の首に食いついたまま、手の上下運動を始めた。源太郎は息を荒げている。顔を確かめたかったが、この息遣いも心地良くて、もう少し下の皮膚にまた噛みついた。
「うあっ…」
蘭丸の手の中で熱が弾けた。蘭丸は顔を上げ、力の抜けた源太郎から見えるように手の汚れを舐め取った。源太郎は上気した頬をして、瞳を潤ませながら呟いた。
「…服、汚れちまっただ…」
「大丈夫です、蘭が責任持って洗いますから」
蘭丸が微笑むと、源太郎は目を見開いて決まり悪そうに唾液で濡れた自分の首筋に触れた。
「お蘭は見えるとこは嫌がるのに、なして…」
「それ程目立ちませぬ」
「そっか…」
源太郎は立ち上がり、汚れた服を脱いで全裸になった。肢体の美しさに蘭丸は見とれてしまう。源太郎は照れくさそうに蘭丸の眼前でしゃがむと、蘭丸の肩を抱き寄せた。
「あっ」
源太郎に耳の下に食い付かれ、同時に乳首を弄ばれる。更に空いた手で蘭丸の腹をなぞってから、反応した性器を握り、扱き出した。
「あっ…痛っ」
歯が当たる箇所や、引っ張られた繋ぎ目が痛む。けれど、それ以上に快楽がぞくぞくと腰や背筋を駆け巡り、痛みを訴える声が鼻に掛かって説得力がない。先端が濡れ、手の動きに加速がついて抗うことが出来ない。
「やっ…」
蘭丸は手を突っ張って、源太郎の体を押し出そうとしたが力が入らず、そのまま源太郎に寄り掛かって身を委ねる。一気に上昇して、あっという間に果ててしまった。源太郎がちゅっと音を立てながら唇を離した。
「お返しな」
源太郎が汚れた手を舐めながら言った。蘭丸は恥ずかしくて直視出来なかった。
「どした?さっきはあんなに積極的だったのに、いつもの恥ずかしがりに戻っちまっただな」
「そ、そんなことないです」
蘭丸は源太郎からよく見えるように自ら膝を開き、指で白い汚れをかき集めて小さな孔に埋めた。
「くっ…」
「駄目だよ、そげんいきなりしたら」
「あっ」
源太郎は蘭丸の手を取り、搾まりから指をゆっくり抜くと、二本指の片方を折り、少しゆとりの出来た中に一本だけ入れた。
「急にしたら痛いからな、一本ずつ慣らしていくだよ」
「え…」
「こうして中で角度つけてな」
「あっ」
源太郎は埋まった指の付け根を押し、内側の落とし所を圧迫させた。蘭丸の体は条件反射で体がびくりと揺れた。
「で、ちっとずつ周りを引っ張るみたいに動かしてな、ほら、今ならもう一本入るだよ。入れてみな?」
源太郎が隣の指を取り、孔に添えてゆっくり押し入れる。
「このままさっきのとこ押してみ?」
源太郎がまた埋まった指の付け根を押し、中の弱点に触れさせた。
「柔らかくなっててまだ指入りそうだな。お蘭の指は細いから、四本入るかも」
「んん…」
本当は誘い出そうとしたのにこんなに恥ずかしい気持ちにさせられるとは思わなかった。けれど羞恥がより体に熱を与え、欲して蘭丸は指を増やして押し入れた。源太郎の存在感までにはまだ至らず、指を拡げようにも縁が痛くて出来ず、もどかしい。
「う、様…」
「え!?」
掠れ声で呼ぶと、下ばかりに釘付けになっていた源太郎が真っ赤な顔を上げた。
「もう苦しくて…、上手く出来ません」
「ん…」
源太郎は蘭丸の手首を取り、指をゆっくり抜いた。
「ぱっくり開いてるだ」
源太郎は顔を近付けて拡がった入り口を指の腹でなぞった。痛みが痺れに変わっていてあまり表面の感覚はない。早く中に欲しい。源太郎の興奮した態度に余計煽られ、けれどもこれ以上は言えずに固く目を閉じて待った。
派手な水音が立つ。
「え…?」
中にいつの間にか楔が埋め込まれ、奥の敏感な箇所が一気に圧迫され、目を開けると源太郎の顔が目の前にあって、頬に口付けられる。
「あ…」
蘭丸の腰を掴んで源太郎は抜き挿しを始めた。濡れた接続部が卑猥な音を立て素早い動きで内部を擦り立てられる。
「あ、いい…源太郎様」
「お蘭…っ」
源太郎の変化を蘭丸は見逃さず、脚を巻き付けて源太郎を捕らえた。
「ね、一緒に…!」
「ああ、お蘭…!」
源太郎の熱が蘭丸の中を満たして行く。中から溶かされてしまう程に熱い。その熱が、二人が繋がった箇所から蘭丸の尻に伝い落ちた。
「おお…」
達した源太郎は蘭丸と繋がったまま上半身だけ起こすと、力尽きた蘭丸が精を吐き出している様を見ていた。勢いが弱くなると握り、しごいて紐状になった白濁を絞り出した。合わせて蘭丸の喘ぎも細くなっている。
「可愛い。腹に出た精も、いってる時の顔も、声も」
蘭丸が焦点を合わせようとすると、源太郎は蘭丸に口付けながら両の乳首を指の腹で転がした。ただでさえ敏感な箇所がまた甘く鋭く刺激され、身を捩ろうにも源太郎と繋がったままで爪先を丸めることしか出来ず、快楽を受ける容量はいっぱいだった。
「お蘭、乳首触るとぎゅってなって、中が震えてる。おらのがまたおっきくなってんの分かるだか?」
「んんっ…」
源太郎の指が離れても赤くぴんと起った豆粒はじんじん腫れていた。源太郎は顔を上げ、蘭丸の腿を持ち上げて再び腰を突く。
「すげ、中の精が、お蘭の中で動いて…!」
「んあああっ」
体液が中で掻き回され、二回目とは思えない激しさで繰り返し内側から擦られる。蘭丸の限界はとうに越え、頭の中が自分の甲高い声が響いていた。
「お蘭」
ぐっと腰を押し付けられ、根元までくわえた状態で源太郎は止まった。
「今度は外にするか?」
「嫌ぁ…っ」
蘭丸は源太郎の肩を夢中で抱き締めた。再び内側から満たされ、溢れて肌に零れていった。
行為の後は気だるく食欲も湧かない。蘭丸は素肌に羽織を掛けただけの格好で、勢い良く雑炊を流し込む源太郎を見つめた。
「この焦げが旨いな」
行為に及んで鍋の管理も出来ず、少々焦がしてしまったが、源太郎はそれがお気に入りのようだ。
「お蘭は食べないだか?」
「はい。今、いっぱいで」
「まだ腹に残ってるだか?なら、出して…」
「いえいえ、そういったことでなく、胸がいっぱいで…」
「んー。やっぱり、するのは全部終えてからのほうが良かったな」
「…誘ったのは此方ですから」
「どうして、急に誘ってきただか?」
「こんなに早い時間に二人きりになれたので、舞い上がってしまいまして」
それも本当だ。しかし、今あの意地悪な顔をした少女が頭の片隅にちらついた。一人で待っていた蘭丸に見せつけるように我が物顔をして源太郎の隣にいた少女。
「どうした?具合、悪いのか?」
「え?」
源太郎が心配そうにこちらを見つめてくる。顔に出ていたらしい。
「今、また源太郎様とくっつきたくなって…」
「え!?」
源太郎は顔を赤くし、空の椀と匙を落とした。
「蘭は浅ましいですね…」
「そげんことないだよ、ほら」
源太郎は腕を広げて蘭丸を迎えた。蘭丸はその中に飛び込んだ。あの時、隣に居たのはあの少女だけれど、源太郎とこうして肌を合わせられるのは自分だけなのだ。
「大丈夫だか?おらは飯食って元気出たけど…。お蘭をまた気絶させちまうかも」
「構いません」
こんな気持ち、源太郎に悟られたくない。蘭丸は源太郎の唇を自らので塞いだ。
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