妄想、愉悦。


弐拾陸


  


 蘭丸と源太郎が部屋へ戻ると、桃太と少年は帰宅し、皆は養生所を開く準備をしていた。蘭丸は業務をこなし、時間を貰って昼と夜の食事は母屋の掃除をしていた源太郎と二人で作った。

「凄いわ。こんな手間の掛かる料理、久し振り」

 康が夕餉の魚の煮付けを皿に移しながら呟く。

「時間が沢山ありましたから。以前康殿にご教示いただいてからずっと挑戦しようと思っていました」

 最後の料理を運びに部屋へ戻ると、源太郎は顔を赤くして中哉と笑っていた。

「源太郎様、飲まれたのですか?」

「ごめんね、蘭丸君。まさかここまで弱いだなんて知らなかったから」

 まだ素面な中哉が気まずそうに謝った。

「中哉を叱るなー。おらが飲みたかったからだ」

「叱りませんよ」

「旨そうだな」

 源太郎は蘭丸の盆から直接指で柔らかい魚の身を摘まんだ。

「お行儀が悪いですよ」

「旨いなあ。柚子がよく効いてる」

 会話が成り立っていない。しかし、源太郎の機嫌も良さそうなので蘭丸は見逃すことにした。

 皆が出揃い、食事を始めると、源太郎は盆の上の食事を一気に平らげ、食事中の蘭丸の肩に寄り掛かって眠ってしまった。酒が回っているようで、頬が熱い。

「少し寝かせても宜しいですか?」

「ああ。休ませてやれ」

 康太郎の許しを得て、中哉に手伝って貰いながら源太郎の体をゆっくり壁に沿って倒した。康が用意してくれた布団を上から掛ける。

 皆が食事を終え、蘭丸は中哉と後片付けを、康は明日の朝食の仕込みをした。終えて三人で部屋へ戻ると、源太郎は布団にくるまりながらぼんやりと灯りを眺めていた。

「源太郎様、目覚めたのですね」

「ん」

「お顔がまだ赤いですが、起きられます?」

「ん」

 まだ酔っているのかと思いきや、源太郎はゆっくりではあるが起き上がった。

「おい、今ならちょうどいいぞ」

 康太郎が湯気を纏いながら、寝間着姿で健吾と部屋へ入ってきた。それを見て、康が頬を膨らませた。

「兄さんたら、飲んだ後はお風呂は駄目って言ってるでしょ?」

「沸かしてるうちに酔いも醒めた」

「まだ息が酒臭いよ」

 不満を言いながら、康は兄の為に布団を敷き始める。

「ありがとさん。さ、湯冷めしないうちに寝るか」

 康太郎は健吾と一緒に敷かれたばかりの布団に横たわる。源太郎は立ち上がって、借りていた布団を二人の体の上に掛け、康に向き直る。

「すまね、世話になった」

「今日は泊まって行ってもいいのに」

「いやいや、今日は帰るだよ。有難う」

 康の親切な申し出を断り、源太郎と蘭丸は外へ出る。見送ってくれた中哉と康は着替えを持っていた。
 帰り道、源太郎は温かい手で蘭丸の手を握る。

「これから二人で風呂に入るんだな」

「康殿と中哉殿ですか?」

「うん。もしかしたら、先生は二人きりになれるように気を遣って健吾と先に入ったのかもな」

「そうかも知れませんね」

 短い会話をしながら帰宅した。源太郎は提灯の灯りを囲炉裏に移し、布団を敷く。

「湯浴みはなさいませんか?」

「うん。いい」

 やはり、まだ源太郎の頬は赤い。蘭丸は茶碗に水を汲んで、布団の上の源太郎に差し出した。源太郎は蘭丸の腰をゆっくり抱き寄せた。

「飲ませてくれ」

「…今朝のように?」

「うん」

 蘭丸は水を口に含んで、源太郎の頬を両手で支えて口付け流し込む。こくりと飲み込むと、源太郎は蘭丸の口内に舌を忍ばせた。水で冷えた粘膜がすぐに温められる。

「んん…」

 角度を変えてまた塞がれ、舌で口内をかき回された。分泌された唾液を啜り、源太郎は蘭丸を解放した。

「可愛い」

「わっ」

 源太郎が蘭丸の体を倒し、頬や首筋を小刻みに吸ってくる。そして、大きな手でおもむろに蘭丸の股間を握り、服の上から揉み立てる。

「ちょっと…」

「お蘭の体、少し冷たい」

「源太郎様が熱いのですよ?」

「おらのここな、いつもよりもっと熱くなってるだよ」

「え?」

 源太郎は手の位置を変えずにここ、と言って、膨らみを弱い力で握った。

「あん…」

「試してみないか?」

 源太郎は蘭丸の体を強引に起こすと、雑な動作で蘭丸の服を剥いでいく。足から抜き取った袴を放り、白帯の盛り上がりを見て満足そうに笑った。

「お蘭の肌をあっためなきゃならん」

「十分温まっていると思いますが…」

「否、まだまだだ」

 こつんと額を合わせてきた。源太郎の目は潤み、頬は赤く、唇が腫れ、扇情的な顔が気恥ずかしく、蘭丸は視線を逸らしてしまった。

「ですから、それは源太郎様が酔って火照っているからですよ?」

「そうかー。お蘭がこげん可愛いのも酔ってるからか」

「蘭は飲んでいませ…」

 口内にまた舌が入り、言葉が途切れる。舌を擦り合わせ、源太郎は蘭丸のを噛んで、顎を舐め、首筋へ移動し、吸って、耳に強く歯を立てる。

「痛っ」

 源太郎は蘭丸の声に「すまね」と謝りながら顔を上げ、耳たぶの歯形を舐めた。

「んっ…ん…」

 蘭丸はくすぐったさに爪先を擦り合わせた。

「痛いんじゃないだか?」

「ひゃっ」

 蘭丸がくすぐったがっていることに気付くと、源太郎は楽しそうに蘭丸の耳に生暖かい風を当てる。

「もう止めて下さい」

 蘭丸が掌で源太郎の口を塞ぐと、源太郎は悪戯が見付かった子供のように笑った。その手を取り、蘭丸の首筋に顔を埋める。

「声、聞かせて欲しいだ」

 きゅうっと歯を立て、吸い付く。蘭丸は痛みで短い悲鳴を漏らした。すると、源太郎は凸凹した歯形をぺろぺろと舐め、肩や胸へ移動していく。蘭丸が条件反射で腿を擦り合わせかけた時、脚の間に源太郎の手が伸び、股間を覆う布の中に手を入れた。

「濡れてんな」

 源太郎は先走りで湿らせた指で小さな袋を揉み、その下へ人差し指と中指を忍ばせた。

「んんっ」

 中に指がひっそりと入って来て、内側をなぞった。

「朝したのに閉じてんなあ。痛むか?」

 蘭丸が再び手で口を塞いで顔を隠していると、源太郎は指を抜き、顔を上げた。

「お蘭、声も、顔も隠したら駄目だ」

 源太郎は体を起こして、蘭丸の両手を取ると、手拭いを捻り蘭丸の頭上で縛り上げた。

「これで恥ずかしいとこ隠せないだ」

「あ、あの…」

「ん?」

「蘭だけが裸なのは不公平だと思います」

「んーそうだなあ」

 源太郎はようやく自分の服に手を掛けて脱いでいく。いくら見慣れていても、均整の取れた美しい形の筋肉と、夏よりも少しだけ薄くなった健康的な肌色に、蘭丸はどきりとしてしまう。しかし、それ以上に気になる下腹部は、瞬きを忘れてしまう程凝視してしまった。

「起ってる…」

「え?」

 蘭丸自身も口にしてから驚いてしまった言葉に、源太郎は目を丸めた。蘭丸は恥ずかしくなって片方の二の腕に顔を埋め隠した。今朝は源太郎の反応が悪く、内側から指で刺激してそうさせたのだ。今夜ももしかしたらと心配していた。けれどしっかり反応を見せてくれたことが嬉しくて思わず声に出してしまった。

「可愛い顔隠せてないだよ」

 源太郎が蘭丸の頬に手を伸ばし、口付けた。相変わらず、掌も唇も吐息も熱い。あの大きく隆起した物も、果たしていつも以上の熱を持っているのだろうか。
 源太郎は体を起こし、蘭丸の片足を肩に担いで尻を浮かせて入り口に濡れた先を宛がった。

「あっ、いっ…」

 急速に中を拡げられて、痛いと口にしそうになり、蘭丸は唇を噛んだ。中断されたら嫌だ。

「ぎゅって握られてるみたいにきつい。痛くないか?」

 思えばいつもは慎重なくらいだったが、今回は酔っているせいか準備が短い。しかし、伴う痛みや引きつれは、耐えられない程ではない。蘭丸は顔を左右に振り源太郎を受け入れる為に深呼吸をする。本当に、いつもより熱く感じる。

「痛いだな?こっち触ってやるから」

「平気です。あっ…」

 源太郎は顔を近付けて蘭丸の胸に吸い付いた。硬くなった粒を舌先で転がし、押し潰す。

「ん…乳首触ったら、可愛いふぐりが張り出したぞ」

 今度は自身の侵入した箇所のすぐそばにある膨らみを指で弄ぶ。

「可愛い」

 源太郎は再度蘭丸に口付けをして、ゆっくり腰を進める。そして、最奥に辿り着くと、顔を上げて勢いをつけ腰を弾く。

「あっ…!」

 肌のぶつかりあいと、水気を含んだ抽送音と蘭丸の悲鳴が同じ律動で繰り返された。

「待って、もっとゆっくり…!」

 内側が濡れ出すと、動作が素早くなり、込み上げてきて、快楽が伴っていた痛みを越えてきた。

「んっ…ああー!」

 蘭丸は耐えられずに精を放った。源太郎は蘭丸の腰を押さえ、ぴたりと止まった。

「……」

 達した蘭丸は目を開く。瞬間瞼に雫が落ち、片方だけ遅れた。目の前に歯を食いしばった汗みずくの源太郎の顔がある。

「源太郎様…?」

「お、お蘭の中、すげくて…、ぎゅうって震えてて、今も、柔らかくなってんのに、ずっとうねってて、まだ、この中にいたい…」

 絞り出す声が切実で、蘭丸は胸が締め付けられた。この汗を拭ってあげたいのに手を拘束されている為出来ない。

「まだ、したい…」

「え?」

「ぐぅっ」

 源太郎は緩慢な動きで顔を上げ、また抜き挿しを再開した。明らかに腰使いも大人しくなっている。

「源太郎様、無理なさらないで…我慢はお体に障ります」

「嫌だ、おらはまだ…!くうっ…」

 源太郎が停止し、体を大きく震わせた。段々中から熱が運び出され、蘭丸の内側を満たして行く。すると、源太郎の体から力が抜け、ふらりと倒れた。

「源太郎様っ」

 蘭丸は固定された両手を上げ、源太郎の肩をどうにか支え、ゆっくり自分の体に寄りかからせるようにして寝かせた。達して気を失ってしまったようだ。酷く汗をかいて、相変わらず熱い。蘭丸は手拭いを探したがそれは自分の手首を拘束している。仕方なく自分の下帯を拾って極力肌に触れていない面を使って源太郎の汗を拭いた。

「あ…」

 出口から源太郎の精が零れた。蘭丸は汗で湿った下帯で自分の体を拭いた。

「お蘭…」

「はい」

 振り返ると相変わらず源太郎は寝ている。寝言で名を呼ばれて胸が疼いて、足元に放置された布団を掛けて隣に横たわって寝顔をじっと観察した。艶っぽさが消え、今は子供のようにあどけない。蘭丸は無防備な額に口付けた。源太郎が蘭丸の体に身を擦り寄せてきた。拘束された腕が邪魔で、腕を上げると源太郎は蘭丸の胸に頬を貼り付けた。

「ひゃっ」

 源太郎は蘭丸の冷たい肌が心地いいようで、腕を絡み付けて全身をくっ付けた。蘭丸は源太郎を抱くようにして腕の間に源太郎の頭を置いて、熱い体を抱きしめた。




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