妄想、愉悦。





   


 遅めの昼食を済ませて片付けを終えると、蘭丸は教材を床に広げた。

「何してるだ?」

「これから生徒さんに配る手本を作成します」

「あの手本、やっぱりお蘭が作ってただな。だが、一人で九人分もか?大変だな」

「ええ。けれど、結構楽しいですよ」

「そうだか」

 蘭丸は硯を擦ってその墨で文字を書く。源太郎は寛ぎながら、凛とした横顔や真っ直ぐな背中を見詰めた。

「はあ…やっぱり綺麗だな」

 蘭丸の動作がぴたりと止まった。源太郎は思わず口に出していたことに気付く。

「よく、字のことは誉められました」

「字もだけど、お蘭自身が」

「改めて言われると何だか恥ずかしいです」

「そうかな。多分、記憶なくす前からそう思ってたと思う。だって綺麗だし。見た目もそうだけど、仕草とか動作が。お蘭が持ってると、筆先まで綺麗に見えるな」

「……」

「ん?」

 蘭丸は顔を赤くしながら、筆を置いてしまった。

「止めるだか?」

「これは源太郎様がいないときにします」

「なして?」

「恥ずかしくて、集中出来ません」

「そうか。残念だ」

「蘭が未熟者なのです。けれど、失敗しては紙が勿体ないですから」

 蘭丸は今まで書いた手本を並べ、筆を洗いに土間を下りた。耳まで赤くしている。

「お蘭て恥ずかしがりだな」

 蘭丸は小さな水桶に筆を浸した。

「自覚はしておりますが、こんなに気を乱されるのは源太郎様ぐらいだと思います」

「そっか。それは嬉しいな」

 おらも同しだから…。源太郎は、その言葉を飲み込んだ。

「今日な、おらの隣に座ってた子が、兄ちゃんは蘭丸先生と仲良しなんだって言ってた。何でだと思う?」

 蘭丸は筆の水気を払い、軒に干しながら答えた。

「それは、わざわざ連れて来る程仲が良いのかと」

「それだけじゃないだよ」

 蘭丸は手を拭いて襷を外し、袖を直す。

「お蘭がいつもと感じが違うって。嬉しそうで可愛いって言ってただ」

 蘭丸は指先の赤い両手で顔を抑えた。

「あんな小さな子に勘づかれたと言うことは、他の方も気付いているのでしょうか?」

「うーん。普段のお蘭がどうなのか分からんけど。だが、気付かれたとしてもちゃんと立派な先生だっただよ」

「……」

「そいでも、気付かれたのが嫌だか?」

 蘭丸は顔を上げ、板間に腰を下ろした。

「嫌と言うか…やはり恥ずかしいものです。蘭がどれだけ源太郎様を好きか、周りの方に知られてしまうのは」

「えっ」

 今度は源太郎が赤くなる番だった。

「普段通りにしていたつもりでしたのに、次からどんな風にしていたら良いのか…」

 源太郎は蘭丸の湿った手を握り、擦り寄った。間近で見るとより濃く肌を桃に染めていた。源太郎は頬に唇を当てる。熱い。蘭丸はその動作に驚いたのか、はっと振り返る。唇同士がくっつきそうな程近付いた。

「源太郎様、寺で口付けをしましたが…」

「うん」

「欲求を消化したいのなら手伝います。けれど、ああいうのは好きだと思った人にするべきです」

「え?」

 蘭丸が俯いて、唇に距離があいてしまった。
 自分なりに伝えていたつもりだったが、届いていなかったようだ。ならば、言葉にして伝えなくては。

「お蘭は、おらのことを一途って言ってくれたけど、違うのかも知れん」

「何故?」

 源太郎は背を真っ直ぐにして手を胸に置いた。

「おら、今日お志津のこと思い出さなかった。あんなに好きだったのに、もうこん中にお志津はいなくて、過去の思い出みたいになってる。がっかりしたか?」

 蘭丸の瞳が潤み始めた。期待と歓喜と少しの不安。綺麗で見とれてしまいそうだが、まだ告白の途中だ。

「お蘭の言った通り、不器用でこん中には一人しかおらん」

「ええと…志津殿はもういなくて、けれど、一人いて…」

 何故すぐに答えに結び付かないのか。源太郎は蘭丸の口を自らの唇で塞いだ。重ね合わせたままでいると、蘭丸が膝を板間にのせ、腕を源太郎の肩に回して体を密着させてきた。やはり、見かけによらず力強い。

「…っ」

 舌が入り込んで来た。歯をなぞられ、開くと、源太郎の舌の上に舌がのる。促されるまま縺れ合わせた。こんな接吻を十五歳の源太郎は知らない。けれど、当惑しながらも己の舌や唇は意思を持って動き、蘭丸の感触を貪っている。この体は知っている。この味も形も。
 息苦しくなって離すと、蘭丸の睫毛が濡れていた。

「嬉しいです。傍にいられるだけで良かったと思っていました。けれど、それは強がりだと気付きました」

「不安にさせてすまなかった。記憶はなくなったけど、お蘭に対する気持ちは変わらなかったみたいだ。だのに、おらは認めようとしないで…」

「いいえ」

 蘭丸は源太郎の腕の中で首を左右に振った。

「あの…苦しくないですか?」

「え?」

「いえ、先から蘭の膝に当たっているもので…」

 服の上から隠しきれない程股間が膨らみ、足の間に正座している蘭丸の膝小僧に押し付けていた。

「あんな接吻したらこうもなるだろ…」

「では…今朝こうなってしまったのは?」

「お蘭の着替え見てたら…」

「そうだったのですか。嬉しいです」

「嬉しい?」

「はい。今朝は蘭がしたいから一方的に致しましたが…」

「わっ」

 蘭丸が服の上から隆起した股間を手で押さえた。

「源太郎様は今、して欲しいですか?」

 蘭丸は頬を紅潮させたままにこりと笑った。こんなに妖艶な表情をするとは。源太郎は固唾を飲み、袴の腰紐をほどいた。蘭丸は源太郎の袴をずり下ろし、白布を避けた。解放された源太郎の愚息が一気に持ち上がり、先走りが跳ねて蘭丸の顔を濡らす。

「凄い…」

 蘭丸は根元を掴むと、体を屈め、まるで小動物を愛でるように頬擦りをした。先端が柔らかな頬を押し返す。

「うっ」

 頬の感触で、一気に達してしまった。もう止めることも出来ず、蘭丸の綺麗な顔が白く汚れていくのを呆然と見ていた。前髪から伝った白い線が蘭丸の鼻筋に落ち、我に返る。

「す、すまん!」

「いえ、私の方こそ」

「今、拭くから」

 源太郎は素早い動作で立ち上がり、裸の下半身のまま台所に掛かっている綺麗な布を取り、蘭丸の顔を拭った。

「髪にもいっぱい付いちまったが、服には付いてねえみたいだな」

「良かった」

「だが、着たままだとまた汚れちまうかも知れんな」

「……」

 源太郎の意図を汲み取った蘭丸が押し黙る。

「これ以上するのは嫌か?」

「…嫌、何てことはないです」

 蘭丸は畳んだままの膝先をもじもじと擦り合わせた。源太郎は蘭丸の股間に手を置く。

「ひゃあ!」

「ああ、やっぱりお蘭も起ってるだ。もしかして、今朝も口でしながら起ってただか?」

 蘭丸は下唇を噛みながら頷いた。

「悪かっただな。気付かないで」

「…いいえ、言いましたが、今朝は蘭がしたかったからそうなっただけで」

「でも、隠すの大変だったろ?すぐに中哉も来ちまったし」

 蘭丸はまた黙って俯いてしまった。ここまでの恥ずかしがりに合わせていたら進まない。源太郎は、残っていた衣服を全て脱いだ。蘭丸は、顔を赤くしながらも上目でその行程をしっかり見ていた。

「汚れちまうからな」

「……」

 蘭丸も足に引っ掛かっていた草履を取り、自分の服に手をかける。ゆったりとした手つきで、よく見ると微かに震えていた。手伝った方が良いのだろうか。迷っていると、蘭丸は一度手を止めた。

「あの…」

「ん?」

「病み上がりの今の源太郎様の体と比べても私の体は貧相ですけど、がっかりなさらないで下さいね」

「しないだよ。昨日、風呂入ってる時に布越しで見ただ。影だけでも、体の線はくっきり見えてた」

「え」

「胸が平らなおなごだと思ったが、綺麗だと思っただ。それに、今朝自分でしたのはお蘭の着替えの後ろ姿を見たからだ。綺麗な脚と尻で…」

「もう良いです!」

 蘭丸は両手で源太郎の口を塞いだ。

「もう、分かりましたから…」

 源太郎は蘭丸の震える手を優しく剥がした。

「おら、記憶失う前はお蘭の体のこと、何て言ってただ?」

「同じことを仰っていました。綺麗だと誉めて下さって…」

「なら、自信持てばいい」

「志津殿との記憶が新しい十五歳の源太郎様の目に、二十四歳の時と同じように映るか分かりませんから」

「十五か、そうだな…」

「あっ」

 源太郎は蘭丸の襦袢を開き、肩を露にした。蘭丸の体はまだ震えているが、隠したりはしなかった。

「白くて綺麗な肌だな。鎖骨の形も…」

 源太郎は偽りない感想を述べた。決心したか蘭丸は立ち上がり、腰紐を解いて袴を脱ぎ、足から抜いた。小袖を襦袢ごと脱ぎ、膨らみを隠した下帯を外すと、先走りを垂らした肉茎が解放され顔を出す。源太郎は、蘭丸の顔と下半身を交互に見比べた。こんな可憐な顔をして予想外の持ち物だった。大きさも申し分なく幾つも筋を立て、腹にくっつきそうな程持ち上がっている。しかし、色は淡く、先端はまるで食べ頃の果実のようだった。

「お蘭はこんなとこも綺麗だったか」

「……」

 蘭丸は返事をしない。羞恥が限界まできて目に涙を浮かべていた。

「い、今、布団敷くから」

 源太郎は畳んだままの布団を広げた。振り返ると、背後にいた蘭丸は布団の上にちょこんと座った。

「源太郎様を貰っても、良いでしょうか」

 羞恥と欲求がせめぎあったような表情。源太郎は固唾を飲んで頷くと、蘭丸はいつの間にか持っていた小瓶の蓋を開け、甘い香りの液を指に落とし、後ろへ手を伸ばして後孔へ塗りつける。

「何してるだ?」

「受け入れる準備を…」

「準備?」

 くちゅっと液が鳴った。蘭丸は苦しそうに息を吐く。

「大丈夫か?」

「平気です…。久し振りなので少し手こずっているだけで…」

「おらがしてもいいか?」

「いえ、お手間はかけさせません」

「おらがしたいんだよ。こっち、尻向けて」

 蘭丸は無言で従う。枕に顔を埋め、腰を高く上げて源太郎に尻を突き出した。源太郎の股間に血が集まってきたが、こちらの準備に集中しなければ。源太郎は白い尻たぶを開き、濡れて光る搾みに指を添えた。ゆっくり押し入るが、熱く締め付けて、こんなに膨張した己が収まるのか心配になってくる。

「痛かったら言ってな?」

「はい…んっ」

 拡げる為に指を動かしてみる。収縮が強くなり、間を見てもう一本侵入させた。同じように繰り返し回したり上下に動かしていると、蘭丸が足指をきゅっと握っていることに気付く。

「力、抜けるか?」

「抜いたら、もう…」

「ん?」

「早く、源太郎様が欲しいです」

 蘭丸が枕に埋めていた顔を半分こちらに向け、懇願してきた。なるべく丁寧に、負担をかけないようにしていたが、互いに限界だ。源太郎は指を抜き、自身の怒張の先端を蘭丸に添えた。

「えっ、あの…」

 一気に腰を進め、貫く。あまりの締め付けに達してしまいそうだが下腹に力を込め、前後運動で蘭丸の体に打ちつける。蘭丸の悲鳴と喘ぎの混ざった叫声が、後孔に感覚を奪われてあまり聞こえない。

「お蘭、お蘭、お蘭…!」

 源太郎は予想以上の熱と感触に無我夢中で腰を振った。蘭丸の体の震えが大きくなっていることに気付き、腰を押さえていた手を布団を握る蘭丸の手に左右とも上から手を重ね、指の間に指を滑り込ませて握った。

「あっ、あっあん…!」

 段々と甘さを増した声が耳に届く。蘭丸も上りつめているのだろうが、源太郎は限界だった。ぬるぬるの自身を引き抜き、白い肌により白い液を吐き出した。

「すまね、またおらだけが」

 蘭丸が真っ赤な顔をして起き上がると、源太郎の肩に腕を巻き付け引き寄せながら膝を広げた。源太郎は蘭丸の足の間に体を入れ、深い口付けをした。蘭丸の熱い吐息ごと包んで口を吸う。

「また大きくなりましたね…」

 蘭丸が源太郎のそれを撫で上げた。源太郎は腰を上げ、蘭丸の片膝を持ち上げた。縁が少し赤く色付いた搾みが息づき、源太郎は其処へ押し入って行った。

「んんっ」

 入った勢いで蘭丸が吐精し、自分の腹を白く汚した。その時、内部で小刻みに収縮し、源太郎は絶え間ない快味に浸る。果てて間もないのに再び大波に呑まれ、袋が精を蓄えている。

「い、いかん…!」

「止めないで下さい」

「しかし…」

 切な気に懇願され、理性が吹っ飛んだ源太郎は蘭丸の腰を押さえて、自身を打ち込んだ。

「あっ!ああー!」

 蘭丸は敷布を掴み、腰を浮かせながら叫ぶ。源太郎は波に浚われないように何度も腰を弾きながらも抗う。変わらず蘭丸の中は強く源太郎を締め付け、長い間をあけずに源太郎は蘭丸の中で果ててしまった。

「あったかい…」

 蘭丸の呟きの後、柔らかくなった源太郎が抜け落ち、開いた孔から白濁が垂れた。

「すまね、中に出しちまって…」

「…いえ、何の問題もありません」

 蘭丸は体をずらして布団の隣を空けた。源太郎はそこに寝転がる。

「あ…」

 蘭丸の首の下へ腕を滑らせ、引き寄せた。顔を間近で見つめあう。

「あの…」

「ん?」

「私、後ろからされるの苦手なのです。源太郎様の顔が見えないと、怖くて…」

「すまね、おら…」

「でも…」

 蘭丸は源太郎のあいた手を取り、指を絡ませた。

「手、握って下さって嬉しかったです。お陰で恐怖心はなくなりました」

「あ、だから途中から震えが止まったんだな」

 蘭丸はこくりと頷く。ただでさえ蘭丸には負担がかかる行為だ。極力優しく丁寧に心掛けよう。

「おら、鈍感だからこれから嫌なことや怖いことがあったら言って欲しい。お蘭も気持ち良くなってくれなきゃ意味ねえし」

「はい」

 蘭丸は源太郎の肩に頬をすり寄せた。甘えられるのが嬉しい。

「あと、して欲しいとこも。反応見てりゃだいたい分かるけど…」

「……」

 蘭丸は瞳を伏せてしまった。こっちの要望は難しいだろうか。ここまでの照れ屋では。

「あ、お蘭、一回しか出してないけど平気か?」

「源太郎様が落ち着いてるのなら平気です」

「ん?どういう意味だ?」

「いえ…」

 また赤面になる。可愛いのだが、これでは話が進まない。蘭丸を知りつくしていたなら兎も角、今は知り合って数日の状態だ。長い間の後、蘭丸は歯切れ悪く続けた。

「源太郎様は体力があるので、全力を出されては蘭が潰れてしまいます」

「そっか。じゃあ、潰さないぐらいにしてやるだ」

 源太郎は蘭丸の腹を指先でなぞり、生殖器の少し上の箇所でぴたりと止めた。

「ん…?」

「この辺、先っぽで擦ったらぎゅーってなって、すっげえ震えてた。ここがいいとこだな?」

「……」

 蘭丸は言葉を発せず口をぱくぱく開いた。

「正解だな?」

 源太郎は左で腕枕をしたまま、右手を下に移動させ、蘭丸の股下に手を潜らせた。

「ひゃっ」

「指で届くかな?」

 白く汚れた孔に指を埋め、抜き挿しを始めた。体液の残骸がぬぷぬぷと淫らな音を立てる。

「やあっ…」

 蘭丸が膝を立て足先を布団に擦り付け、源太郎の指を締め付けた。快楽に抗う顔が可愛い。源太郎は、口付けをして自ら舌を中へ押し込んだ。指と舌の粘膜の撫で付けの律動を合わせていると、蘭丸が呼吸を止めてしまい、慌てて唇を離す。

「お蘭…。他に、気持ちいいとこは?」

 蘭丸は涙目のまま顔を背けた。恥ずかしがっているだけなのだろうが、一見して反抗的な態度が新鮮で面白くなってしまう。

「ならいい、探すから」

 蘭丸の首筋に口付ける。

「ひゃっ!ああ痕は、着けては駄目ですよ?」

「なら、見えないとこにする」

 源太郎は被さるような体制になり、胸板に噛み付く。肉が薄くて歯は引っ掛からず、舌で再度なぞっていくと、左胸の乳首の近くに小さな傷痕を見付けた。ふっくりと盛り上がっていて、それほど古いものには見えない。

「ん」

 花弁のような傷痕に唇を当てると、他の皮膚よりも少しだけ熱が高い。源太郎は舌先でちろちろと舐めた。中の指が僅かにきつさが増す。舌をずらして先よりもくっきりと起った粒を口に含んだ。

「んん…」

 蘭丸が腰を浮かせ始めた。しならせた体は源太郎の指を分かりやすく強く強く締め付ける。今蘭丸の中にあるのが指であることが勿体ない。そんな思いが一瞬過ると、蘭丸が源太郎の股間に手を伸ばしてきた。触れられて腫れていたことに気付き、源太郎は顔を上げた。蘭丸は片手で顔を隠しながら告げる。

「こちらが良いです…」

 指を引き抜くと、きゅぽっと名残惜しそうな音を立てた。源太郎が体を起こして入る準備をしていると、蘭丸もむくりと起き上がる。

「次は蘭からです」

「え…」

 蘭丸は膝を立て、源太郎の腰に乗った。源太郎の屹立を後ろ手で掴み、位置を定める。

「んん…」

 腰を落として中に収めてゆく。手練れた動作に源太郎はなすがままにされ、ただ蘭丸に与えられる重みと感触を享受していた。

「ん」

 蘭丸に抱き付かれながら口付けをされる。気持ち良くてぼんやりしそうになるが、目的を忘れてはならない。唇を離した蘭丸は少しだけ余裕を取り戻したのか笑っていた。汗だくで、頬や髪に雫が滴り落ちた。

「綺麗だ。天女様みたいだな」

「…以前にも言われたことがあります」

 大人になっても同じ発想なのかと、源太郎は苦笑した。

「こげんことして、恥ずかしくないだか?」

「源太郎様が愛らしくて…」

「ふうん…」

 源太郎は蘭丸の首筋に顔を埋め喉笛に噛み付く。蘭丸が猫のような滑稽な悲鳴を上げ、身を捩らす。源太郎はもう一度口を開いて胸板にぱくりと噛み付き、舌先で丸い突起を擦る。

「ひっ」

 蘭丸の体がびくっと揺れ、ぎゅうっと締まる。やはり、乳首が弱いらしい。舌先で固くなった乳首を重点的に押し付けながら、もう片方を指で転がした。

「や、やあ…」

 蘭丸の体が落ちないように腰にしっかり腕を回し、乳首を吸い、弄ぶ。すっかり芯を持って硬くなると、源太郎は顔を上げ、今度は脇に手を入れて親指で押し潰した。

「ん、あっ」

 源太郎は蘭丸の内側の弱点を意識しながら、腰を揺すった。もともとあった収斂がさらに強く、小刻みになる。

「お蘭、乳首触ると、気持ち良いだな?」

「あっ、はいっ!」

「中、凄いだよ」

「源太郎様も…」

 また一際大きな波がやってきた。今回は蘭丸が先に呑まれ、源太郎の腕の中でくったりと崩れる。しかし、源太郎はまだ終わらない果てた後でも蘭丸は源太郎に絶えず刺激を与え、今度こそこの感触を少しでも長く、深く堪能したい。

「お蘭、捕まっていられるか?」

「はい…」

 蘭丸は源太郎の肩と腰に腕と脚を巻き付け、しがみつく。

「ああ、お蘭…」

 名を呼び、肌を味わいながら繰り返し、終わりが近付いて来た。蘭丸は源太郎の耳元で囁く。

「源太郎様、このまま、蘭に…」

「うん」

 蘭丸を身に収めたまま布団に雪崩れ込み、蘭丸の体を布団に押し付けて口を吸い、中に吐き出した。蘭丸の体内が自分の体液で満ちていく。

「お蘭…」

「源太郎様の、蘭の中に…」

「苦しくないか?」

「苦しいけれど、まだ欲しいです」

「おらもお蘭を欲しがってるみたいだな」

「嬉しい」

 蘭丸は源太郎の体を両手両足で抱きしめた。




 これは潰してしまったことになる。源太郎は眠る蘭丸の髪を撫でた。自分でも夢中でいつ蘭丸が力尽きたかは分からなかった。
 起き上がって眺めていると、不意に、投げ出された無造作な脚が佐吉のものと重なった。源太郎はこくりと息を飲む。蘭丸だって歓んでいた。少なくとも源太郎が覚えているまでは。しかし、行為後のこの状況を見知らぬ誰かに見たら、蘭丸に無体を働いたようにも受け取られかねない。
 どうであれ、行為後そのまま寝入ってしまった姿はこんなものだ。あの若い僧侶の物言いも態度も気に食わないが、佐吉は源太郎が思う程気の毒ではないのかも知れない。部屋は暖められていたし、僧侶の服で体を包まれていた。

「ん…」

 蘭丸が目を開いた。

「お早う、お蘭」

 源太郎は艶やかな蘭丸の髪を一房掴み、口付けた。

「夢ではないのですね」

 蘭丸が顔を綻ばせる。

「夢じゃないだよ」

「あまりにも幸せで…」

「そうだな、夢みたいに幸せだった。でも、現実だ」

「はい」

「あ、体平気か?おら、加減分かんなくなってて」

「私の方こそ、やめ時を見誤って山道を走る以上に激しいことをさせてしまいました。傷口は痛くありませんか?」

「おらも平気だよ」

「良かった」

 家の外で夕を知らせる鐘が鳴った。

「そろそろ夕餉の支度をしませんと」

「まだいい。お蘭とこうしてたい」

 源太郎は蘭丸を抱き寄せ、額に口付けた。改めて見ると、蘭丸の胸から下は吸い痕だらけになって、弄り倒した乳首は赤く腫れている。

「乳首痛そうだな。すまね」

「だ、大丈夫です」

「どれ」

「ひゃっ」

 源太郎が試しに触れてみると、案の定硬く熱を持っている。蘭丸は胸を両手で隠した。

「すまね、痛かったか?」

「いえ、でも、今は敏感になっているので…」

「腫れ、すぐに収まるかな」

「…多分、翌朝まで引かないと思います」

 これでは衣服の摩擦でさえ刺激になってしまうかも知れない。快楽の為に可哀相なことをした。

「次からは弄りすぎないように気をつける」

「本当に?」

「我慢出来たらな」

「我慢出来ないのは蘭の方かも知れません」

 照れた笑顔が可愛くて、たまらず源太郎は口付けた。





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