妄想、愉悦。





   


「蘭丸殿、準備は宜しいか?」

 その人物は用具の箱を置いた。申三と言う名の小姓だ。

「あの、夜叉丸殿では」

 小姓は、褥を共にする前に、身を受け入れやすくする為に準備をする。その相手は、蘭丸の世話係の夜叉丸の仕事の筈だ。

「夜叉丸殿は、急用でな…、俺では不服か?」

「滅相も御座いません。宜しくお願い致します」

 蘭丸は恭しく頭を下げる。急用とは何なのだろうと言う問題も意に介さず。しかし、相手が殆ど関わりのない先輩と言うのも、不安を大きくさせる要因だった。申三は蘭丸の隣に座る。

「厠へは行ったか?」

「はい」

「芋や豆は食べてないか?」

「はい」

 申三は淡々と質問する。普段、申三は蘭丸が挨拶をしても応えてはくれない。どことなく苦手だった。

「よし、四つん這いになって尻を出せ」

「は、はい…」

 物心ついてから、人に見せたことのない箇所を晒す。蘭丸は申三に背中を向け、着物の裾を捲った。申三の喉がごくりと鳴った。箱を開け、用具を出す音が聞こえた。気配も兆しもなく、引き裂かれたような痛みが襲った。

「やあああ!」

 蘭丸が痛みで悲鳴を上げると、申三が口を塞いだ。

「黙られよ、蘭丸殿。お館様はもっと大きいぞ?」

 申三が何の準備もせず、蘭丸の未通の其処に、太い張型を挿し込んだ。こじ開けられた肉花は震え、薄くなった襞は今にも破けてしまいそうだった。

「ひっ…」

 掌に蘭丸の熱い呼吸を受けて、申三は力任せに押し込む。

「んむぅぅう!」

 みっともない声に自分自身で驚いた。確か、教本ではこんな強引な開き方はしていない。この人は手解きが始めてなのだろうか?鈍感な蘭丸は本気でそう思っていた。

「堪えられよ、蘭丸殿」

 申三は蘭丸の口を解放し、蘭丸の顔の方にやってきた。蘭丸は、深く息をつきながら見上げた。申三はいつの間にか生まれたままの姿になっていた。

「……!」

 申三の中心はそそり立っていた。申三は蘭丸の前に座る。

「舐めてみろ」

 初めて見た。大人の男の本来の姿を。大きさも色も形も、自分とは全く違う。

「練習させてやる、やれ」

 申三は蘭丸の唇に切っ先を向けた。

「嫌です」

 蘭丸は顔を背けた。

「何!?」

 無表情だった申三の眉間に皺が寄る。

「森家の御子息ともなると、大きい口が叩けるのだな」

 申三は立ち上がり、後ろへ回った。挿し込まれた張型を強引に引っ張る。痛みが強くなり、蘭丸は気を失いそうになった。
 申三は体を被せてきた。

「泣くな、蘭丸殿。今度は優しくやる」

「う、うう…」

 痛みで勝手に涙が出て来た。蘭丸は見られまいと畳に顔を押し付けた。申三の手が襟の中に侵入し、唇を耳元に寄せられた。
 この者の目的は他にあると、蘭丸はやっと気付いた。しかし、拒みたくても体に力が入らず、胸元を弄られ、耳穴に舌を突っ込まれた。
 気持ち悪い。伽とは、こんなに辛いものなのか。蘭丸は涙を吸った畳を見詰めながら、想像を越える苦痛に絶望した。襖の向こうの騒々しさも気付かずに。

「申三殿!」

 襖を開けたのは蘭丸の世話係の夜叉丸だった。

「何をしている?」

「夜叉丸殿」

 驚き、焦った申三は蘭丸から身を離した。さらに驚いたことに、夜叉丸の後ろには、寝間着姿の信長がいた。

「も、申し訳ありませぬ、お館様!夜叉丸殿がお忙しいので、私めが代わりに…」

 申三の愚息が、あっと言う間に萎んでいく。素っ裸で何を弁解しても、後の祭りだった。信長は木彫りを打ち込まれた蘭丸を一瞥し、申三に短く言った。

「もう良い、下がれ」

「お館様…、私は決して…」

「下がれと申しておる」

 申三は口ごもり、着物を持って逃げていった。

「蘭丸殿、大丈夫か?」

「ああう!」

 夜叉丸が心配そうに蘭丸の背中に手を添え、張型を抜こうとするが、蘭丸は痛みで悲鳴を上げるばかりだった。

「お館様、抜けませぬ」

「塗り薬を持って参れ」

「はい」

 夜叉丸に指示を出し、信長は布団に座した。胡座をかく。

「お蘭」

「は、い…」

 蘭丸は羞恥で消えたくなった。こんな惨めな姿を晒し、けれど、痛みでどうにもならない。すると、信長が軽々と蘭丸の体を抱き上げ、横向きに膝の上に載せた。

「お、お館様…?」

「案ずるな、直ぐに終わる」

「あっ…!」

 信長が張型を掴み、開ききった蘭丸の後孔にそっと指を添えた。

「力を抜け」

 信長の声はとても優しかった。蘭丸は従い、体を全て信長に預けた。着物の下の信長の脚は筋肉で盛り上がっていた。蘭丸は信長の膝に手を添える。

「ん…!」

「痛むか?」

「いいえ…」

 指先で解すように薄い皮膚を揉まれる。本当はとても痛い。しかし、蘭丸は力まないように意識した。主にこんなことをさせていることに戸惑い、必要以上に手間をかけさせないように。

「…うっ」

 痛み以外に、くすぐったいような感覚が走る。すると、信長が張型をゆっくり回した。

「痛むか?」

「いいえ、大丈夫です」

 痛みを確認しながら聞いてくれる。ゆっくりではあるが、徐々に抜かれていく。

「お持ちいたしました」

 夜叉丸が陶の小さな壺を差し出した。

「置いておけ」

「はい」

 夜叉丸は信長に壺を差し出し、引き下がった。

「これは、万能な膏薬でな」

 壺の蓋が開けられ、信長が中身を掬った。指に載った塊を、患部に擦り込んだ。蘭丸は冷たさに体を震わせた。

「これで抜けやすくなる」

 再び張型に手を添え、ずるずると引く。

(この感じ…)

 蘭丸は不確かな感覚に襲われ、動揺した。先端の括れはゆっくり内壁を広げられるように、引き抜かれる。

「よう耐えたな」

 信長が蘭丸の頭を撫でた。

「ご迷惑を…」

 蘭丸は信長から離れようとするが、背を押され制された。

「手当てが終わっておらぬ」

「お館様、そのようなことは…、ひあ!」

 再びひんやりとした感触が蘭丸を襲い、蘭丸は苦痛とは違う悲鳴を漏らした。
 信長は手当てを終えると蘭丸を布団に横たえる。

「お館様、有り難うございます」

 信長はいつもの無表情に戻っていた。しかし、蘭丸は嬉しかった。こんなに気遣い、優しく接してくれる。信長に仕えて良かったと、出仕してから初めて思った。

「お蘭」

「あ…」

 信長の顔が近付き、一瞬唇同士が触れ合った。

「申三に何かされたか?」

「え…」

「これ以外にだ」

 これと言われて、木彫りの張型を指差した。蘭丸は首を横に振る。

「そうか」

 信長が僅かに口角を上げ、目を細めた。そして、また唇を寄せられる。蘭丸は目を閉じた。ちゅっ、ちゅっ、と音を立て、触れ合わされる。信長の唇は熱く、顎にぶつかる髭の感触は何ともくすぐったい。しかし、自分ばかりが受けている訳にもいかない。蘭丸は自らも口を尖らせた。

「ん」

 信長の舌が口内に侵入してきた。押し込まれた舌でこじ開けられ、尖った舌先であらゆる箇所を舐められる。

「ん…」

 息苦しさから、吐息混じりに声が漏れてしまう。鼻にかかって、甘えているような声になっていることに蘭丸は気付いてない。
 例えようのない感覚がこみ上げてきた。それは不快感とは違う。だが不確かで、受け入れるのにも勇気が要る。

「ぷはぁ…」

 唇を離されると、蘭丸は息を深く吐いた。見守る信長の目は優しい形をしている。顔がぽっと赤くなるのを感じた。

「お蘭の唇は甘いな」

 信長が蘭丸の唇の唾液を指先で拭いながら言った。

「唇に、味があるのでございますか?」

「ある。花の蜜のようだぞ」

「え?」

「信長の味はどうだ?」

「…覚えておりません」

 蘭丸は正直に答えた。初めての口吸い。あんなに深く長くされたのだから、分析している暇はあれど、余裕などない。

「今一度、するか?」

「は、はい…」

 蘭丸は目を閉じた。しかし、待っていても信長は触れてこない。蘭丸は目を開けた。

「せぬのか?」

 信長はからかうように言った。しろ、と言うことなのか。

「失礼、仕ります」

 蘭丸は首を上げて、信長にそっと唇を重ねる。
 口を僅かに開き、包み込んで啄む。拙い動きは、確実な経験のなさを語っていた。信長が蘭丸の体を仰向けにし、唇を吸った。

「ん、ふぅ…!」

 二度目の口付けは先より熱く、激しい。口を開き吸引され、歯がぶつかった。角度を変えてはまた吸われ、吐息ごと閉じ込められる。
 段々気が遠くなってきた。

「……」

 蘭丸は薄目を開けた。冷たい瞳が蘭丸を捉えていた。

「あ…」

 蘭丸は耐えられずに、首を逸らして唇を離してしまった。濃い唾液が糸のように垂れ、口を拭い、唾液を舐めとる。

「しょっぱいです」

「先に歯を磨いたからな、その塩だ」

 信長の唇の間から白い歯が覗いた。

「私も…、蘭も、磨きました。塩辛くは御座いませんか?」

 信長はくく、と笑った。手が体に伸びると、襟の中に手を突っ込まれた。

「お館様…」

 蘭丸は勇気を出して着物を自ら開いた。羞恥で心臓が飛び出してしまいそうだった。信長が心臓の辺りに手を置く。

「怖いか?」

「怖くなど、ありません」

「ほう」

 信長が体に舌を這わせた。ざらついた感触で、全身が泡立つような感覚が襲う。

「んっ…」

 蘭丸は堅く目を閉じ、敷き布団を握り締めて不思議な感覚に捕らわれないように抗う。

「今日はもうよい」

 信長が蘭丸を腕の中に包んだ。尻に手を伸ばす。

「お館様…」

「ここがまだ痛いであろう?」

「けれど、蘭のお役目は…」

「信長が良いと言っている」

「……」

 そう言われたら、何も返せなくなる。蘭丸は、自分の不甲斐なさを恥じた。
 信長は蘭丸の頭を抱いて、肩に押し付けた。

「乱法師」

「は、はい、お館様」

 乱法師と呼ばれ、戸惑う自分がいた。十三年間慣れ親しんだ名前なのに。

「やはり、可成に似ているな」

「先日は似てないと仰られたではありませんか」

「中身だ」

「中身?」

「そうだ」

「それは…、嬉しく思います」

「父を愛していたか?」

「はい。お館様に殉じた父は、私の誇りです」

「ほう…、汝は、信長の為に命を捨てるか?」

「勿論です。私は、お館様の為に存在するのですから、なので…」

「何だ?」

「…痛みなど、辛くはありません。お館様…」

「言うたな?」

 信長の目が光った。何と妖艶な目をするのだろうか。

「信長は優しくないぞ?」

「…蘭だって、弱くはありません。お館様」

 蘭丸は信長の袖を掴んだ。幼い蘭丸にとっては、これが精一杯の意思表示だった。
 どうしてこんなに必死なのだろう。小姓としての役目を果たしたいと言うだけではないのかも知れない。蘭丸は、信長の目をじっと見つめた。
 誘われるように、再び信長は唇を近付けた。

「…っ…」

 息が苦しいのに、何故受け入れ、求めてしまっているのだろうか。舌を絡め取られると、蘭丸は自らも巻き付けて、信長の口内へと忍ばせた。信長の手が薄い胸板へ伸びてゆく。

「良い顔をするな」

 唇を離すと信長が言った。顔つきのことまでは頭になかった。蘭丸の表情に、幾らか力が籠もる。すると、信長の手が蘭丸の胸板にある薄紅の色素に指を載せ、擦り付けた。

「ん…」

 くすぐったい。蘭丸の全身が総毛立った。

「芽が出たぞ」

「芽、でございますか?」

「これよ」

 突起と呼ぶには心許ない尖りが、小さな輪の中心に出来た。信長が指先で摘まんで力を入れると、細波が大波になり、痺れが全身に広がった。

「あ…!」

 蘭丸は自分の胸を見下ろした。今までに見たことないほど赤く膨らみ、信長の指で疼かされている。

「そうか、お蘭は乳首が好きか」

「わ、分かりませぬ、触れられたのが、初めてです故…」

 もう羞恥で信長の顔を見れない。蘭丸は顔を横に向けた。

「顔を隠すこと、許さぬ」

「は、はい…」

 蘭丸は顔を戻す。信長がもう片方を指先で触れると、むくむくと顔を出し、それを引っ張られた。

「い、痛っ」

「痛みは辛くないのであろう?」

「あ…」

 蘭丸は、痛みよりも押し寄せて来る波をどう受け止めればいいのか分からなかった。
 それでも、信長の指が波を大きくさせ、蘭丸は呑み込まれまいと体を強ばらせる。本当は怖い。自分の知らない何かを知って、それに溺れることが。

「乱法師、やはり怖いか?」

「…いいえ」

 信長が蘭丸の胸を口に含み、柔肌を吸った。

「ああ!」

 歯が皮膚に当たり、敏感な胸の頂きが絞り取られる。

(これは…!)

 噛まれた胸と同じくらい、半身の疼きが気になった。蘭丸は足を閉じて隠す。

「乱法師、何故、隠す。信長が信じられぬか?」

「そ、そんなことはございませぬ…」

「快楽を得るのが怖いか?」

「…お館様には適いません。その通りでございます」

 蘭丸は足を広げた。

「怖いです。けれど、お館様の手によって、溺れるならば…」

 蘭丸は信長の大きな手を取り、広げたばかりの其処へ導いた。

「ほ、本当は、痛いだけなのは辛いです」

 蘭丸はそれだけ言って口を閉じた。信長は自分をどう思っているのだろうか。あまり人の体を見たことはないから、基準が分からなかった。もしかすると、とても変わった、醜い形をしているのではないだろうか。

「ひぐっ」

 信長の大きな手が、幾らか反応を示した蘭丸の下肢を握った。まだ殆どの部分を衣で覆った、幼さの残る佇まいをしている。信長が縫合部を撫でると、新たな波が立つ。

「綺麗にしておるな」

 その言葉に、蘭丸は安心した。

「汚れた体のまま、お館様にお仕えする訳には参りません」

「信長の為に洗うたか」

「はい…、んっ」

 信長が掴んだ手を根元に下ろすと、初々しい内部が露わになった。与えられた刺激で、蘭丸の背は仰け反った。信長が手を上に戻し、衣を着せる。蘭丸は膝を閉じ、信長の手首を挟んだ。
 信長が手を止め、視線を合わせた。嫌な訳ではない。ただ、体にどうしても力が入ってしまう。蘭丸が信長を切なげに見つめると、信長は不敵に笑って小さな膝小僧を掴み、開いた。そして、再び手を根元まで下げる。

「んっ」

 引っ張られる痛みと、それ以上の感覚。これが快楽なのだろうか。晩生な性分の蘭丸は、幾ら教本で学んでも、そのものの意味は分からなかった。其処に触れるのも、洗う時や、用足しの時だけだった。

「あ!」

 信長は手の動きを素早くさせた。蘭丸は声を張らないように歯を食いしばる。波が来た。大きな、自分の総てを呑み喰らう波。背骨がしなり、息が上がり、蘭丸は慄いた。通り道に込み上げて来る。

「お、お館様、出てしまいます!手を離して下さい!」

「出せ」

「汚れてしまいます!厠へ…」

 信長は、蘭丸の耳朶を噛んだ。

「ひあ!」

(駄目、出てしまう…!)

 じわりと水が出た。しかし、波はまだ頂点に達していない。信長は手の上下運動を止め、指先を薄桃の先端へ載せ、指を小刻みに動かした。

「あ、やあー!」

 失禁してしまったと思った。しかし、その液体は濃度を保ち、出したかと思うと白く濁った。

「は、はあ、は…」

 体の力が抜け、信長の手の中のものが萎んだ。信長は白い液体を指に翳し、蘭丸に見せ付けた。

「濃いな…」

 信長は指を口に含む。細めた目が色っぽい。蘭丸は呆然とその姿を眺めた。

「お館様…」

 蘭丸は信長を見上げた。袖を掴んだ手を僅かに引き寄せる。

「どうした?」

 信長は顔を近付け、ぎりぎり触れ合わない所で言い放つ。分かっているはずなのに。蘭丸は目を閉じ、信長の首に細腕を巻き付けた。
 信長は拒まない。蘭丸は、唇を尖らせ、信長に口づけた。信長が蘭丸の口を包んだ。

(気持ちいい…)

 丁寧な舌の動きが、果てた蘭丸に再び熱を灯し始めた。体が疼く。でも、今はこの舌技に没頭したい。蘭丸は信長が奪いやすくなるように、自ら首の角度を変え、舌を伸ばした。信長は応え、蘭丸の小さな舌を絡め取る。

「満足か?」

 唇を離すと、脱力しきったままの蘭丸の額を撫でた。

「はい、お館様…、蘭も、お返ししたいです」

「ほう」

 蘭丸は前も合わさずに、起き上がり正座をする。

「口取りなら、学びました故…」

「誰で学んだのだ?」

「ほ、本で…」

「ほう」

 信長が同様に起き上がり、胡座をかいた。広がった寝間着の袂から、逞しい脚が覗く。
 信長は蘭丸の手首を取り、掌を自分の中心へ押し当てた。

「触れるのは初めてか?」

「はい…」

 薄い布越しに感じる熱と大きさ。まだそれ程には硬くはなっていないようだった。蘭丸は、とても片手には収まりそうもないそれを、静かに握った。

「直接、触れても宜しいですか?」

 信長は笑みで答えた。蘭丸は、そっと裾をめくりあげる。

「……」

 言葉が出なかった。形も大きさも、自分とは全く違う。蘭丸は先程自分を貫いた木彫りをちらりと見た。突き出され、完起ちした申三の一物とも全く違う。

(これが、いずれ自分の中に…?)

 蘭丸は思わず尻を窄めてしまった。傷がずきんと痛む。二周りは小さい張型さえあれほどの苦痛を与えられたのに、こんなものを体に収めたらどうなってしまうのだろうか。

「乱法師」

 怖じ気付いているのが分かる瞳で、信長を見上げた。

「信長は汝を傷付けることはせぬ」

「は、はい…」

 蘭丸はゆっくりと手を伸ばし、重みのあるそれを両手で持ち上げた。
 信長は優しい。こんなにも良くしてくれているのに、何を怯えることがあろうか。蘭丸は口をめいっぱい広げ、先端を含んだ。
 初めての味、信長の味。微かにしょっぱいが、信長も洗ってきたようで、特別な匂いはなかった。蘭丸は舌を蠢かせ、唾液を分泌させた。片手で支え、器用な利き手で根元の膨らみに触れた。大きく、質量もある。転がしながら、時折指先で揉んだ。
 蘭丸は責める箇所を変える度、信長を見上げた。しかし、信長の表情は殆ど変化がない。先端や、裏側を幾ら舐めても、僅かに硬くなるだけで、こちらも表情が乏しい。  蘭丸が必死に口を使い続けていると、信長は蘭丸の剥き出しの尻に手を添えた。

「…!」

 信長の指が塗り薬で湿った蘭丸の蕾に入り込んだ。

「舌が止まっておるぞ?」

 信長の言葉に、蘭丸は再度舌を動かす。しかし、ずっと器用な指が、蘭丸の体内で蠢いて、神経が後ろにばかり傾いてしまう。

「ひやあっ、お、お館様…!」

 蘭丸は口から離してしまった。手で掴んだまま、湧き上がる快楽に身悶え始めた。先の塗り薬が潤滑の役目を果たし、さほど痛みもなく指を出し入れされる。

「はあ、はあっ…」

 蘭丸は顔を信長の股間に埋め、熱い息を吐いた。信長からは見えないが、小さな分身を限界まで熱り立たせているのだろう。

「お館様…」

 蘭丸は信長を見上げた。快楽のせいで、瞳には涙が溜まっている。

(笑っていらっしゃる…?)

 視界がぼやけて顔が見えない。すると、指が奥の一点を押し込んだ。

「あ!」

 蘭丸は畳に二度目の熱を吐き出した。出し終わると、体に力が入らず、丸まったようにうずくまる。息は荒く、背は呼吸で激しく上下している。

「くく…」

 信長が小さく笑った。蘭丸は呼吸を整え、顔を上げる。達してからも、信長を片手に握っていることに気付いた。

「あ…」

 蘭丸はもう片手を添え、口に含んだ。
 いつの間にか、信長自身は硬く、角度をあげていた。蘭丸が果てているうちに。性技に溺れた蘭丸を見ていたらこうなったのか。主君の相当な性癖に気付くことなく、蘭丸は口を窄め、吸引しながら出し入れを繰り返した。

(やはり、大きい…)

 舌や顎が疲労してきた。しかし、まだだ。蘭丸は、ひたむきに顔を前後させる。口内で大きくなり、角度が上昇してきた。口に収まりきらない。じわりと水が広がった。そして、溶岩が飛沫を上げ、蘭丸の喉を突いた。

「ううっ」

 勢いに蘭丸は顔を引いてしまい、塊に近い体液を顔に受けた。

(成し遂げた…)

 生々しい匂いが広がる。口の中の液体を舐めると、酷い味だった。

「…よう出来たな」

 信長が蘭丸の顔を撫でた。自分の体液を、幼い顔に塗り広げる。

「お館様、気持ちようございましたか?」

 蘭丸は、役目を果たせたことが純粋に嬉しかった。信長は、目を細めて優しく笑って、小さな体を抱き上げ膝に載せた。

「褒美を取らせよう」

「褒美など…」

 蘭丸が返答しきる前に、信長に口を塞がれた。

「はふっ…」

 蘭丸が信長の口内で息を漏らした。蘭丸は、広い肩に手を添えて大人しく信長の舌を受け入れた。疲れた舌を解すように、舌先でさすられた。接吻一つにしても、色んな技巧がある。舌を使ったと思えば、今度は唇を甘く噛まれる。髭の感触が肌に馴染んでいた。
 唇を離すと、蘭丸の顔に付着していた精が信長の頬に移る。蘭丸は指先で拭った。

「褒美、しかと受け取りました」

「もう良いのか?」

「……」

 蘭丸は口を噤んだ。

「か、体が持ちませぬ…」

「愛い奴…」

 信長は手拭いで蘭丸の顔の汚れを拭き取った。蘭丸は用意されていた枕元に畳んである手拭いで、同じ様に信長の顔を拭き取る。互いに拭き合い、綺麗な体になって、布団に雪崩れ込んだ頃には、蘭丸には強烈な眠気が襲っていた。

「寝かさぬ」

 信長は蘭丸の体を組み敷く。

「あ、ああ…!」

 体と記憶に刷り込まれる、感触や匂い。蘭丸は、途轍もない疲労を抱えながらも、深く刻まれることを望んでいた。




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