参
蘭丸は、一人布団の中にいた。体が懈く、頭はまだぼんやりする。布団の空白に手を伸ばすと、既に冷たくなっていた。
(お館様…)
むくりと起き上がり、自分の体を眺めた。
「…!」
蘭丸は体を抱いた。淫らな体。白い肌には所々淡い赤の痣が散りばめられていた。一際、左胸の頂きが色濃く、薄紫に色付いていた。
蘭丸は布団を肩まで被った。体に刻まれた痛み、それを上回る強烈な悦。ざらついた舌、器用な指、低く通りの良い声、優しい形の目。
「……」
左胸の乳首に手を伸ばした。熱を持ち、硬くなっていた。摘んでみるとじんと疼いた。
「蘭丸殿」
「はい…!」
夜叉丸が障子の向こうから声を掛けてきた。蘭丸が返事をすると、静かに障子を引く。
「体はどうだ?」
「だ、大丈夫です」
蘭丸は布団に手を突っ込み、寝間着がないか探った。
「痛みはないか?」
寝間着を見つけるより前に、夜叉丸が背後に周り、剥き出しの肩に手を置いた。
「尻を出してごらん?」
「え…」
「傷を確かめる」
蘭丸は、おずおずと布団を捲り、全裸のままうずくまって腰を上げる。視診とは言え、まだこの羞恥には慣れない。
尻を両手で広げられ、指先が僅かに押し込まれる。
「…!」
蘭丸の体が、びくりと揺れ、夜叉丸の指を吸い取るように、蕾が閉まる。
「やはり、したのか?」
「…した?」
「お館様と、契ったのか?」
「いえ、それが…、指だけで御座います…」
蘭丸は体全体を赤く染めていた。夜叉丸は感心したように言った。
「流石、お館様だ。手当てをするから、動くでないよ」
「どういった、意味でしょう?」
夜叉丸が背後でかちゃりと音を立てた。薬の入れ物を開けているのだろう。
「つまりは…」
「っ…」
夜叉丸の指が冷たい軟膏を蕾に擦り込んだ。揉むように撫でられる。
「蘭丸殿は、もう目覚めたと言うことだ」
「…目覚めた?」
「もういいよ。まだ腫れてはいるけれど、大したことない。じきに治る」
夜叉丸の指が離れると、蘭丸は布団で肌を隠した。
「有り難う御座います、あの、目覚めたって…」
夜叉丸が手を伸ばし、背後から前に手を回す。
「夜叉丸殿…!」
「殿方を受け入れられるようになったことだ」
「お止め下さい…!」
左の乳首を摘まれ、蘭丸は体を強ばらせた。しっかり反応していても、顔は拒否を示している。夜叉丸は手を離し、聞き取れない程の声で呟いた。
「…の二の舞は御免だ」
「え?」
「朝餉の時間だ。早く、着替えておいで」
夜叉丸は蘭丸の肩に着物を掛けた。
「はい…」
袖を通して立ち上がると、ふらりとよろけてしまった。
「大丈夫か?」
「はい…、腰が少し…」
蘭丸が言うと、夜叉丸はくすりと綺麗な顔で笑った。
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