妄想、愉悦。





   

 あんなに楽しみにしていたのに。蘭丸はゆっくり障子を開けた。

「蘭丸に御座います」

「遅い」

 信長は布団に横たわっていた身を起こす。寝間着がはだけ、逞しい体が淫靡に映った。

「申し訳御座いません」

「まあ良い」

 信長は立ち上がり、跪いた蘭丸の腕を取り、窓辺に導いた。眩しさに、蘭丸は目を細めてしまう。

「今宵は、満月なのですね」

 窓から大きな月が部屋を照らす。広大な水平がきらきらと光り、大きな姿を映し出した。
 蘭丸は美しき姿にただ見とれた。そんな蘭丸を見ながら、信長は言った。

「これをお蘭に見せたくてな」

「…その為に、わざわざこの刻限に?」

 信長は蘭丸を見下ろしながら、静かに口角を上げた。蘭丸はたまらなくなった。理由なき贔屓などは困る。なのに、この気持ちがこんなにも嬉しい。素直に享受しても良いのだろうか、思い上がりではないのだろうか。蘭丸は、熱くなりかけた目頭を信長の胸に押し当てた。信長は蘭丸の髪を優しく撫で、顔を上げさせた。引き寄せあうかのように、二人は月に照らされながら唇を重ね合う。ついさっきまでこの唇が、別の者を愛でていたことを、蘭丸は知っている。

(今は、蘭だけを…)

 蘭丸は信長の舌を受け入れ、より求めるように逞しい肩に腕を回した。
 ふ、と蘭丸の鼻から息が抜けた。信長は唇を離す。蘭丸は顔を赤くさせたまま、信長を見詰めていた。信長は蘭丸の腰を抱え、布団の上に横たえる。

「信長が欲しいか?」

 信長は仰向けの蘭丸の胸に手を置き、問う。蘭丸はここで夜叉丸と重なった信長を思い出した。自分より大人で、魅力的な夜叉丸。そんな夜叉丸を抱いていたばかりなのに…。蘭丸が考えていると、信長は蘭丸の着物に手を滑り込ませ、弄る。

「ひゃっ!」

「欲しくないのだな?」

 素肌に触れられ、乳首が堅くなったのが分かった。しかし、信長は其処には触れず、指先で胸板をなぞるだけだった。

「……」

 もっと触れて欲しい。たった二回、体を触れられただけなのに、この体は快楽の味を知り、信長の愛技と雄を求めている。

「蘭に、くださりませ。あううっ」

 信長は幾らか乱暴に、蘭丸の乳首を摘んだ。

「うう…」

 堅さと大きさを増した乳首を指で強く挟まれる。蘭丸は敷布を握り締めた。

「大きゅうなったな、こっちもだ」

「あ!」

 片方を噛じられる。痛いのに、体の中心に込み上げる疼きが蘭丸を支配した。

「信長、様…」

 信長の顔は胸元にあった。見せつけるように、舌でなぞられ、押し付けられると頼り無げに乳首は輪の中に隠れてしまう。蘭丸は羞恥で目を固く閉じた。

「ん、んん…」

 蘭丸はもぞもぞと足を摺り合わせた。胸の責めだけで、どうにかなってしまいそうだった。
 信長は唾液に濡れた乳首を引っ張る。

「乳首だけでこうもなるとはな」

 信長は蘭丸の下半身に指を伸ばした。腰紐を取り、器用に袴と下帯を脱がしてしまう。露わになった蘭丸の、角度が分かるように掴んで、表面の皮膚をずらすように根元に下ろした。

「痛!」

「痛いのか、そうか」

 信長は上に戻す。延びきった衣が引きつられ、じんと痛みを誘い、中心への刺激を増長させた。

「駄目です、これ以上は」

「止めて良いのか?」

 信長は先走りで濡れた手を蘭丸に見せた。ぽたりと蘭丸の唇に雫が落ちた。少し塩辛い。

「蘭は、信長様と共に…」

「可愛いことを言う」

 信長は蘭丸の頬に唇を落とし、すぐに離れた。蘭丸が物足りなさを感じていると、信長は枕元にある筒状の容器を手に取り、中身に指を入れた。とぷんと重みのある水音がする。

「ん」

 とろりとした液を纏う信長の指が蘭丸の固い蕾を解す。蘭丸は声を立てないように唇を噛んだ。

「お蘭、力を抜け」

「力を抜いたら、出してしまいそうで…」

「出せば良かろう」

「蘭は、信長様と…!」

 まだ開ききらない蕾に指を突き刺され、腹側に向かって刺激を送られる。蘭丸は性急に、びゅくんと体液を放った。蘭丸は決まりの悪さに顔を歪ませ、震わせた。

「無理をせずとも良い」

「え?うあ!」

 信長が蘭丸の股間にぬるぬるとした手を這わせる。腹に掛かった白濁液を絡め合わせ、大きな掌で根元ごと幼い茎を掴み、摩擦した。

「あっ、あー!」

 滑りやすく、素早い上下運動を繰り返される。

「元通りよ」

 信長が手を離した。蘭丸は少し顔を上げ確認すると、見たことがない程に膨れ上がっていた。

「こんなになってしまうなんて…」

 信長がくっと笑い、今一度指を埋める。

「ん…」

 蘭丸は息を吐いた。吐息にのった声音に苦痛の色がない。

「信長様…」

 信長は蘭丸の足を開き、腰を前に進めた。

「あうう…!」

「耐えよ」

「はいっ…!」

 ずにゅ、ずにゅ、と、狭い入り口を押し開くように杭を打ち付けた。
 蘭丸の顔の前に信長の胸がある。蘭丸は背に腕を回した。

「良いな、お蘭の中は」

 そう言われて、蘭丸の気持ちが満ちていく。きつく、痛みを伴うけれど、前ほど辛くはない。

「信長様、動いても、大丈夫です…」

「……」

「蘭はまだ青いですが、信長様が満足していただければ…」

 恥ずかしい。それでも、蘭丸はこの気持ちを信長に伝えたかった。既に、蘭丸にとって信長は何者にも代え難い存在になっている。信長の為なら、受ける痛みさえも幸せだった。
 信長は蘭丸の背中に腕を滑り込ませると、繋がったまま起き上がった。座った形で繋がる。体の重みで中の密度が増し、蘭丸は体を仰け反らせた。

「蘭の中、信長様でいっぱいに…」

「くく…」

 信長は背を折って首を下げ、蘭丸の喉元に噛み付いた。

「んっ…」

 触れた髭の感触が肌を逆立たせる。信長が再び乳首を指で弾いた。

「や、だめ…!来る…!」

 蘭丸は信長の腹に白い熱を吐き出した。体が震え、息があがる。信長が蘭丸を楽にさせようとすると、蘭丸は力弱く信長にしがみついた。

「まだ、離さないで下さい…」

 蘭丸は信長に巻き付けた脚を、跨ぐようにして投げ、膝をつく。腰に力が入らず、上手くいかない。蘭丸は支えにするように信長の肩に手をのせる。
 信長は、この幼き小姓が何をしようとしているのか、静かに見守っていた。自主的に、主に快楽を与えんとするいじらしさ。信長は震える腰にそっと手を添え、真っ直ぐ整えた。

「手解き、感謝致しております…」

 蘭丸は息をつき、腰を浮かせた。括れまでを咥えたまま、信長の下肢が空気に触れ、蘭丸はまたぺたんと腰を落とした。

「んっ…」

 蘭丸は、まだこの衝撃に耐えれる程体は熟れていない。後孔の衝撃に体が引き裂かれそうに痛む。しかし、薄目を開けて主の顔を見たら、たまらなく幸せな気分になる。

(信長様…)

 信長の顔は僅かに色を変え、幾らかの揺らぎが見えた。蘭丸は、信長の新たな顔を見れてまた満ちて、腰への躍動が活発になる。
 繰り返し腰を落とし、信長を収めた時、根元の大きな膨らみがびくんと動いた。

「もう良い、抜け」

 信長は蘭丸の腰を掴んで上下運動を中断させた。

「嫌です、蘭の中に…」

 蘭丸は信長の肩に抱き付く。信長は蘭丸の耳元に唇を落とし、囁いた。

「汝は、強欲だ…」

「…そうです、蘭は、信長様で満たしたいのです…」

 信長様も、蘭で満たして下さい。蘭丸は言葉の続きを飲み込んだ。

「良かろう」

「え…」

 蘭丸は驚いて信長の顔を見上げた。信長は片方の目を歪めて笑い、蘭丸の唇を塞いだ。

「んー!」

 乱暴に唇を噛まれ、痛みから逃れようとすると舌を押し込まれる。信長の舌先が蘭丸の小さな舌を捉え、捲られて唾液を吸い取られた。
 じゅる、と信長は蘭丸の唾液を啜ると狂おしい程に抱き締めた。

「お蘭…!」

 体の下にある信長の袋が、蘭丸の尻を僅かに叩いた。蘭丸は信長を抱き返す。

「信長様…!あっ、あー!」

 体の中で受け取る信長の熱はより高く感じた。
 蘭丸は体の内側を波打たれ、脳天を突き抜けるような衝撃と歓びに、張り詰めていた糸が切れるかのように力つきた。信長の腕の中でぐたったりと何もない天井を見上げた。小さな肩や胸は浅い呼吸で上下していた。

「満ち足りたか、お蘭」

 信長が顔を覗き込むと、はっと焦点を合わせた。

「はい…、信長様は…」

「まだ、足りぬ」

「……!」

「次は何を見せてくれるのか?」

「え、えっと…」

 蘭丸は今まで紐解いた伽の教本を思い出した。

「では、口に収めまして…」

「いらぬ」

「蘭が、下手だからでしょうか?」

 信長はこん、と蘭丸の額を弾いた。力の抜けた蘭丸は後ろに倒れ込む。信長はその肩を布団に押し付ける。

「あっ」

 中で信長が腹側にある急所を圧迫した。信長は体を倒し、抜き挿しの為に腰を前後に揺すった。

「あう、痛い!」

「耐えよ」

 蘭丸の腰の動きとは比べ物にならない程、信長は激しい。ぶつかり合う皮膚が痛い。なのに、中の信長の猛りが蘭丸を擦り立て、痛みを超える快楽が支配した。

(信長様…)

 出したい。けれど、蘭丸の小袋は既に空だった。蘭丸は達しそうになって、声を止めた。
 信長が腰の動きをぴたりと止める。先端だけを呑み込んだ状態になる。

「お蘭、選ばせてやる。中か、肌か?」

 蘭丸は働かない脳で精一杯答えを探した。信長はどちらを求めているのだろうか。

「信長様が、望むままに…、うっ」

 信長が蘭丸の主張した乳首を指先で捻る。痛みよりも、信長を求める快楽の引き金となった。

「どちらが良い、言わぬか?」

 今度は唇を耳元に寄せ、囁いた。蘭丸はもう限界だった。

「蘭の中に、お願いします…!」

「良い」

「ん、ああー!」

 信長の二度目の熱。変わらずに熱く激しく蘭丸を内側から叩いた。もう、頭から指先まで届いてしまうくらい、信長の子種で満たされた気がした。
 長い長い放出を終えると、信長は自身を引き抜く。蘭丸の後孔からどくどくと白い穢れが流れ落ちる。

「布団が…」

「構わぬ」

 体を拭かなくては。蘭丸が体を離そうとすると、信長の手が蘭丸の肩をがっしり掴んでいた。

「信長様、足が、汚れてしまっております」

 蘭丸の蕾から垂れた白濁液は、信長の足に流れ落ちていた。それでも信長は解放せず、蘭丸の尻に手を伸ばした。

「う!」

 信長の指が侵入してきた。瑞々しい音が中で響く。

「信長様、蘭はもう…、抜いて下さい」

 蘭丸は、果てる度に桃源をさまよっていた。これ以上快楽を得て、意識を保つ自信がない。実際、今も瞼は重く、体に力が入らず、触れられてはそちらにばかり神経が傾いてしまう。

「出さぬと辛いぞ?」

「んっ」

 先程まで太い肉杭を埋めていた蘭丸の蕾は、信長の指を容易に受け入れた。細い代わりにずっと器用な指は、蘭丸の中で蠢き、淫らな水音を立てながら、内壁を柔らかく、されどじっくりと擦り付ける。

「あ、う…」

 信長の指に促された液体が流れ落ちる。信長の放った残骸は濃いようで、酷く粘着質な音がした。

「お蘭、兆しておるのか?」

 蘭丸はゆっくり首を横に振る。素直すぎる上を向いた分身が、信長の腹を押し付けていることに気付いてはいない。
 信長は指を曲げ、ちょうど第二回関節の辺りがある箇所を刺激した。

「うあああ!」

「そんな声が出るのか、元気ではないか」

 体をびくつかせ、後ろに倒れかけた蘭丸の背中を支え、指を抜く。信長は滑った二本指で、覇気を取り戻した幼い茎を摘んだ。

「それとも、辛いか?」

「……」

 蘭丸は答えを探した。信長は、まだ満ち足りていないのだろうか。あんなに激しく腰を突いて、体から放出したのに。しかし、同時に蘭丸の空になった体も幾らかの寂しさを味わっていた。

「信長様…」

 蘭丸がか細い声で主の名を呼ぶと、信長がこちらを向いた。蘭丸は唇を合わせ、そっと喰むように啄む。
 信長は、手指や腰でも蘭丸を悦ばせてくれたが、蘭丸は信長の接吻が一番好きと感じた。そんな信長に、覚えたばかりの口吸いで満足させられるとは思っていない。蘭丸は一回息を継ぎ、小さな舌を挿し込んだ。信長はその舌を絡め取り、吸い取る。一瞬にして、蘭丸を自分の土俵に引きずり込んでしまった。

「あむ、ん…」

 息が続かない。苦しいのに、気持ちいい。窒息してしまいそうになると、信長が唇を離した。

「汝の舌は、信長の中で溶けてしまいそうだな」

「……」

「どうした?」

 信長があの目をする。優しいのに淫靡で、力強い。蘭丸は見ていられなくなった。

「もう一度、蘭の中に…」

「一度だけか?」

「信長様の…、空っぽになるまで、何度でも」

 尻の下にある信長がむくむくと堅く、角度を上げ、蘭丸を僅かに押し上げた。促されるように腰を上げようとするが、力が入らずに、信長の肩に手を添えて寄りかかるように体を前へと傾けた。
 まどろっこしい動きに、信長は自ら蘭丸の尻を掴み、開いて持ち上げた。

「すみませ…、あっ、ううう…!」

 指で支えに開きながら押し込まれた信長の猛りは、極限状態にまで及んでいた。それだけ、自分を欲してくれているのだろうか。

「う、嬉し…」

 目尻から涙の粒が落ちる。見せないように蘭丸は信長の鎖骨に顔を押し付ける。

「信長を喰ろうて、嬉しいとは、淫らな花よな…」

「そ、そのような意味では…」

 信長が支えにしていた指を退かすと、蘭丸の尻が沈み込む。

「分かっておる、愛い奴よ」

 信長は蘭丸の髪を撫でた。この恐ろしく妖艶な主を満たす為に、次は何をしよう。腰を動かす力はもう残っていない。暫く鎖骨に口付けたまま巡らす。信長は蘭丸の耳に唇を落とす。

「お蘭…、信長に身を預けていれば良い。感じるがままに、な」

「はい…」

 信長は密着した顔を上げさせ、濡れた瞼に唇を落とす。蘭丸は目を閉じる。信長の顎髭が頬に当たる。ざらついていて、柔らかい肌に痛い。でも、離したくない。しかし、信長の唇は徐々に下がり、髭の感触も離れてしまった。
 蘭丸の体がびくりと揺れた。

「やはり、弱い…な」

「んぅ…」

 信長は蘭丸の乳首を口と舌で責める。こんなにちっぽけなものが、大きな波の引き金となる。蘭丸は背をしならせる。

「ああ、もう、もう、蘭は…!」

 信長は、口に含んだものを噛んだ。比例するように、蘭丸の中は心地良い締め付けを与えていた。





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