拾参
「源太郎…様…」
街を抜けた頃、源太郎の腕の中の蘭丸が掠れた小さな声を出した。
「どうして…?蘭は、一体…」
雨の中、源太郎に抱えられていることに気付いた蘭丸は、この状況を不思議がっていた。源太郎は笑顔を向けた。
「お蘭、疲れて眠ってただよ。おら、今日は二人でゆっくりしたいから、お蘭連れて帰ることにしただ。ごめんな」
「いえ…。私こそ、歩きますから…」
「いいだよ、まだ寝てな」
「けれど…」
「瞼、くっつきそうだよ」
蘭丸が徐に手を伸ばす。手首には薄く縄の痕が残っていて、冷たく細い指を源太郎の頬に当てる。
「どうした?」
「泣いているように見えて…」
蘭丸が微笑んだ。
「けれど、気のせいでした」
指先に雫はついていない。蘭丸は手を下げて、再び眠り始めた。
普段の倍近い時間をかけて帰宅する。源太郎は布団を敷いて、蘭丸を寝かせた。足先が濡れて冷たくなっていた。
源太郎は蘭丸を布団の上で抱きしめた。こんなことになったのも、自分の行いのせいだ。出会って間もない人間に蘭丸を預けるなんて軽率だった。しかし、後悔の念は何の意味も持たない。
「お蘭」
頬を軽く叩いて名を呼ぶ。蘭丸は目を開けた。
「お蘭」
「もう、着いたのですね…」
「そうだよ」
蘭丸が手を上げた。手首の縄の痕はなくなっていた。源太郎の髪をそっと撫でる。
「髪が濡れていますね。湯を沸かしてまいります」
「いいだよ」
「では、食事の支度を…」
「もう済んだよ?お蘭の握り飯、旨かっただ」
「そうですか。良かった…」
蘭丸は力なく、穏やかに微笑んだ。
「お蘭…」
唇を押し当てる。蘭丸の唇は、甘い花の香りがした。舌を挿し込み、蘭丸が歯を開くと、隙間に入って唾液を流し込む。蘭丸の喉がこくりと動いた。
「紅が…」
蘭丸は指で源太郎の唇を拭う。小さな指先には赤い塗料が付着していた。蘭丸の口紅も薄く崩れていて、源太郎も同じように拭き取った。鮮やかな桃色の唇を再び吸い込むと、蘭丸が源太郎の肩に細い腕を回した。雨音が唇同士の摩擦音をかき消す。
「お蘭が欲しいだ。いいか?」
「かようなこと、わざわざ仰らなくても…」
蘭丸は初々しく頬を染めていた。肩への力が弱まり、源太郎は半身を起こして、蘭丸の着物の襟を広げた。帯はとうに取られていた為、容易く蘭丸の肌は晒された。
「く…、んっ…!」
胸を掌で包み込み、首筋に歯を立てた。甘く噛んで吸い付くと、赤い痣が出来た。掌に小さな硬い感触が生まれた。ささやかに主張した乳首を軽く弾くと、蘭丸は小さな悲鳴を漏らした。
ほぼ平らだったが、源太郎の連日の責めで、確かな成長を見せている。既に、あの少年に嬲られているのかも知れないが。源太郎は悔しさに奥歯を噛んだ。清める為に口に含み、舌で転がす。口の中で、小さな乳首は更に主張し、硬くなってゆく。
「や、あっ…」
蘭丸の声が、どんどん大きくなる。もっと聞きたくて、源太郎は歯を立てた。
「っ、痛いです…」
源太郎は蘭丸の濡れた乳首を指で何度も弾きながら、もう片方を口に含んだ。
「ひやっ、あっ」
蘭丸が腿を擦り合わせている。源太郎は蘭丸の股間に手を当てた。ぬめりを帯びた割れ目の間にある最大の快楽源をそっと擦った。
「ふあっ?ああっ」
蘭丸の体が力み、襲いかかる大波に抗う。源太郎は舌や手指で更に蘭丸を追い詰める。
「あうううっ」
蘭丸の体が小刻みに震えた。数秒間、痙攣して、力が抜ける。
「どうだった?」
「どうにかなってしまったかと…」
蘭丸が呼吸を整えていると、源太郎は濡れた指を蘭丸に見せた。
「お蘭が気持ちいいのいっぱい出したから、白くなっただ」
源太郎はふやけた指を口に含む。
「や、な、舐めないで下さい」
「なしてだ?お蘭、舐められるの好きだろ?」
源太郎は蘭丸の脚を担ぐ。
「ま、待って下さい、今度は蘭が…」
蘭丸は起き上がって足を閉じた。
「蘭が……、舐めたいです」
源太郎を座らせて、着流しの帯を取って、一枚布を落とすと、筋肉質な肉体が現れる。蘭丸は足の間に入って、胸板に顔を埋めた。下帯の上に手を這わせ、形をなぞるように撫で、滑らかな舌先で乳首を舐め始めた。一瞬で、源太郎の肌に泡が立った。
「雨の味がする…」
囁く吐息さえくすぐったい。源太郎は蘭丸の肩を掴んだ。
「お蘭、もういいから…。出ちまうだよ」
「出して下さい」
「お蘭の中に、出したいだ」
「は、はい…」
蘭丸は丁寧に源太郎の下帯を解く。布に抑えられていた剛直が勢い良く現れ、先走りを飛ばした。
「す、凄い…」
蘭丸は上半身を後ろに傾けて、脚を大きく開いた。相変わらずの一本線が、蜜を垂らして、下の孔は、物欲しそうにぱくぱく口を開いて、分泌液を吸っていた。明らかに、こちらの方が性器としてのこなれを見せている。
源太郎が二枚貝のような合わせ目を開く。突起は腫れて、内壁は充血していた。ぬるぬると指を埋めると、蘭丸の体に力が入る。
「まだ、痛いか?」
「いいえ…」
「体、倒せばちっとは楽になるだよ」
蘭丸の体を布団に預け、指を抜いて、自身の先端をあてがう。
「そ、そちらですか?」
「駄目か?」
「いいえ、いいえ!ら、蘭はずっと…貰って頂きたくて…」
蘭丸は瞳を潤ませながら微笑んだ。
「じゃあ、いくだよ?」
「はい」
蘭丸は深呼吸をして、瞼を閉じた。源太郎は、小さな肉孔にゆっくりと挿し込んでいった。驚く程狭いが柔らかい。僅かな抵抗があり、しかしその守りは余りにも脆く、容易く壊れてしまう。
「く、ぅっ…」
「お蘭、息、止めないで、ゆっくり呼吸するだ」
「は、はっ…」
蘭丸は上手く返事ができず、息を荒げた。涙が流れ、小鼻がひくついている。
「痛いならやめるか?」
「嫌、止めないで…、あぐっ」
源太郎は腰を一気に進め、小さな蘭丸の中に収まった。ざらついた狭い壁が、源太郎を絞り上げる。
「お蘭、入ったよ、全部」
「本当に?」
「息、楽にして…」
蘭丸はゆっくり深呼吸した。その動きに合わせて、内部でも収縮運動している。圧力と感触で、気をやったら果ててしまいそうだ。
源太郎は蘭丸の腰を抑えつけ、挿入口の少し上の腫れた突起をこすりつけた。蘭丸の体が跳ね上がり、一際締め付けた。
「あっ、あうっ」
源太郎は突起を弄りながら、抜き差し運動を始めた。蘭丸は、痛みと快楽が入り混じって、それにあらがうように顔を歪めていた。
「か、可愛い…」
内側をくまなく擦りあい、蘭丸の内側が波打ち、ぎゅうっと絞り取られた。
「くっ」
源太郎は、蘭丸の中に沢山注いで、小さな体に凭れかかる。腰を浮かすと、白濁液が溢れた。
「お蘭の、凄いだ…」
「凄いって…?」
「全部、出ちまった」
蘭丸は、自分の腹に手を当てた。
「ここが熱いです」
「出来ちまうかもな」
「出来る…?」
「おら、お蘭に似た子がいい。男でも女でも可愛いだ」
源太郎は蘭丸の目尻に唇を落とした。
「まだ熱いな。まだ痛いか?」
「痛いですけど、同じくらい気持ち良かったです。それに、ずっと、幸せでした」
「そっか。じゃあ、今度はずっと気持ち良く、ずっとずっと幸せになれるだよ」
「はい」
蘭丸は頬を染めて俯いた。もじ、と体をよじる。
「どうした?」
「体が、まだ疼いてしまって…」
「ああ。乳首が真っ赤だ」
「源太郎様があんまり触れるから…」
「さくらんぼみてえだな」
「ひっ、駄目、潰しては…!」
蘭丸は胸元にある源太郎の手首を掴んだ。しかし、全く力が入っていない。力が出ないのか、抵抗する気がないのか。
「でもお蘭、こうすると気持ち良さそうにしてるだよ?。ほら、またすぐ硬くなっただ」
「…あっ」
「じゃあ、こっちはどうだ?」
源太郎は両足を抱え上げ、よく見えるように顔を近付けた。白濁液と共に赤い雫がある。源太郎は出血箇所を探した。顔を突っ込んで舐めると、自分の体液が口に入る。
「や、源太郎様…!」
「痛くないか?」
「痛くありません!早く!」
「早く?」
「下さりませ…」
「ああ」
早くも蘭丸は二回目を求めた。もうこっちの快楽を覚えたのか。そういった体にされたのか、もともと蘭丸の気質なのかは分からない。
源太郎は、自分の下腹部を見ていた。大量に出したせいで一度萎びたが、既に出し入れさせられるだけの硬さは戻っていた。
「んっ…!」
まだまだ締まりは強いが、先程より柔らかくなっていた。蘭丸も、それ程痛そうな素振りは見せなかった。ぐっと最後まで辿り着いてから、また腰を揺すった。やや上部を今度は小刻みに、本来の蘭丸の中の道を、確かめるように擦る。
「はうあっ」
「痛いか?」
「いえ、今…き、気持ち良、いところが…、あっ」
また、蘭丸の中がきゅうっとしまった。源太郎の熱がどんどん中に集まってくる。源太郎は見つけ出した蘭丸の新たな快楽源を刺激し続けた。蘭丸が喘ぐ度に媚肉を震わせる。
「う、あっ、ああー!」
一際長く痙攣して、蘭丸は力尽きた。
「お蘭、まだ終わらないだよ?」
「あ、あのっ…」
蘭丸は明らかに疲れを見せていたが、瞳では更なる快楽を求めていた。
源太郎は自身を抜いて、蘭丸を横向きに寝かせた。背後に並んで横たわり、後ろから穿つ。蘭丸の耳を口に含み、乳首を指で弄り、下腹部に手を添えて自分の体に押し付けながら、腰を揺すった。割れ目の上部に届いた指先で、敏感な突起を撫でると、蘭丸の体はうち震え、すぐに果てた。源太郎は、容赦なく再び蘭丸を追い詰める。
「お蘭の鼓動、早いな…」
鼓動を確かめていた手で、胸を揉んだ。
「痛っ…」
「痛くないだろ?お蘭の乳、毎日可愛がってたから柔らかくなってるだよ」
次は、力強く抜き差しを始めた。
「あ、ん…」
源太郎は両手で胸を揉みながら、何度も穿つ。蘭丸は、掌を源太郎の上に重ねた。指に力が入ってしまっても、もう蘭丸は痛がる素振りを見せなかった。
「あ、も…蘭は…」
またすぐに、蘭丸は果てた。源太郎は、同じ体制のまま抱き締める。
「源太郎様…」
「ん?」
「源太郎様は、気持ち良くはございませんか?蘭は、もう三度も…」
「四回だよ?」
「よ、四…」
「うん」
「けれど、源太郎様は一度きりです」
「最初、いっぱい出しちまったから、暫く出んかも」
「……」
また、蘭丸の中がきゅっと締まった。
源太郎は体を離して、体を起こして胡座をかく。
「ここ、座れ」
股座には太い柱が天を向いていた。蘭丸は、向き合った状態で跨いでゆっくり腰を下ろす。
「大丈夫だ、そのまましゃがんで」
「んっ…」
蘭丸は、根元を残した状態で太腿を震わせながら止まってしまった。
「どうした?」
「奥、痛いです…」
「このへんか?」
源太郎が下腹部を指さすと、蘭丸は頷いた。
「ほんとだ、行き止まりに当たってる」
「痛っ」
源太郎が内側からこつこつと叩く。蘭丸は痛がりながらも刺激で力が抜け、腰を落としてしまった。
「うう…」
蘭丸は源太郎の背中にすがりついていた。源太郎は、挿入口に近いもう一つの後ろの孔に指を添える。
「っ…!」
既にぬるぬると濡れていたせいで、容易に指が埋まる。
「や、そこ…!」
孔を寛げ、あっという間に三本指を咥えさせ、内側をなぞる。
「や、いやあっ!」
蘭丸はもっと強くすがりついた。息を上げ、体温が上昇し始める。源太郎は指で繰り返し抜き挿しを始めた。
「や、駄目、両方は…」
びくびくっと体と二つの穴が震えた。蘭丸は源太郎に極上の締め付けを与え、力尽きた。
「……また、蘭だけが…」
蘭丸は源太郎の胸に凭れながら呟いた。
「いや、おらも気持ちいい…」
「まだ、出してないです」
「出してもいいか?」
「はい、源太郎様…」
蘭丸は源太郎に唇を押し当てた。そのまま体を倒して、上に乗った蘭丸に唇を何度も甘く噛まれ、吸われ、舌で撫でられる。
「は…」
「ら、蘭の唇は…き、気持ち良いですか?」
「うん。桃源郷みたいだ」
「で、では…」
蘭丸は上体を起こした。下腹部に刺さる痛みで片目を閉じる。
「平気か?」
「平気です」
蘭丸は、腰を上下に打ち始めた。源太郎の位置から、小さな蘭丸の中に収まり、抜けていくのがよく見えた。相変わらず幼い佇まいで、背徳感に似た気持ちが加わって、更に気分が高揚する。
「おら、こんな趣味あったのか…」
源太郎の囁きは、蘭丸の耳に届いていなかった。蘭丸の熱い視線が定まらず、唇を微かに開き、何度も腰を打ち付けていた。源太郎は蘭丸の腰を掴んで動きを遮った。
「お蘭、腰、回してみろ」
「回す…?」
「そうだ、このまま」
「こ、こうですか?」
「ああ、いいど」
「…!」
蘭丸は、内側の新たなつぼに気付いて、表情を変えた。
「な、何だか…、むずむずします…」
「もっと、大きく回してみ?」
「やあっ…」
蘭丸の動きが鈍くなった。源太郎は、下から蘭丸を強く突いた。
「ひゃっ!あっ…、こ、擦れて…、ん…!」
達した蘭丸に何度も刺激されて、源太郎には既に熱が集まっていた。しかし、これを出したら全て終わってしまいそうな気がして、源太郎はぎりぎりまで耐える。
「や、やっぱ、もう、駄目だ、お蘭…」
「んっ」
しかし、源太郎はそれ程我慢強くはない。蘭丸の粘膜の痙攣が、源太郎を追い込んだ。
「うあっ」
「ああっ」
達した蘭丸は、糸が切れたように力が抜けて、源太郎に覆い被さってきた。まだ吐き出しきれない源太郎は、蘭丸の体を受け止められずにいた。
「ら、蘭の中にぃ…」
源太郎は蘭丸の髪を撫でた。
「おらの子、産んでくれるか?」
まだ、心の性は変わっていない蘭丸は、こんなことを言われてどう思うのだろうか。傷つくだろうか。
「は、はい…」
胸にある蘭丸の顔が熱い。
「有難う、その気持ちだけで、おら、すっげえ嬉しい」
源太郎は起き上がって、蘭丸を布団に横たえた。嵌め込んだ箇所は、肉が開き、桃色の内部が露出している。そして、夥しく流れる白濁液と、明らかに膨らんだ下腹。源太郎は優しくさすった。
「源太郎様、まだ、足りないのなら…」
「もう十分だよ」
蘭丸の隣で寝転んで、抱き寄せた。
「それとも、お蘭は足らないか?」
「いいえ、蘭は、十分すぎる程幸せです。こんな気分は、初めてです」
蘭丸は、源太郎を抱き返した。
「源太郎様、怒らないで下さいね。蘭は、源太郎様にずっと申し訳ない気持ちでいました」
「え?」
「源太郎様と出会った時、蘭の体は汚れていました。何度も、何人もの男から辱めを受けて、こんな体を捧げたことを…。源太郎様が蘭の大切にして下さる程、蘭は…」
「何言ってるだ、お蘭は綺麗だよ」
「ですが、過去は消えません。けれど、この体になって、蘭は、初めてを捧げることが出来ました。女になった時、あんなに嫌だったのに、今はとても幸せで、夢みたいで…」
感情が昂った蘭丸は泣き出してしまった。
「おらも、お蘭を幸せに出来て良かっただ。だから安心して男に戻れ」
「戻れって…」
「結局、おら、お前のことが好きなんだ。男でも女でもどっちでもいい。だから、申し訳ないとか、そんなこともう思わないでくれ」
「はい…」
「ずっと傍にいてくれ。お蘭」
「はい。ずっとお傍において下さい」
「絶対に離さないだよ」
源太郎は蘭丸の体を強く抱いた。そして、優しく口づける。何度も何度も、蘭丸の涙が止まるまで。
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