妄想、愉悦。


拾漆


  


 腹の虫が鳴る。結局、昼休みに家に帰ることも、昼食を摂ることも出来ずに帰宅した。風呂は沸かしてあるようで、風呂場から湯気が出ていた。

「源太郎様」

「わっ」

 鍵を差し込むと、背後から声をかけられた。振り返ると、蘭丸が気まずそうに笑っていた。

「驚かせて申し訳ありませんでした」

「いや、おらこそ、鍵かけてって…」

「今日も暑かったですね」

 蘭丸は源太郎の首に冷たい手拭いを当てた。鍵を挿し込んだ戸を開けて、中へ促す。どうやら、窓から出入りして行動したようだ。

「源太郎様、何かお気付きになられませんか?」

「へ?」

 蘭丸は源太郎の前に立った。

「蘭は、もとの体に戻りました」

「あ、そうか…」

 朝の時点で、蘭丸は男に戻っていた。しかし、源太郎は。

「なら、確かめてみるだ」

「ひあっ」

 股間を服の上から掴むと、蘭丸は女の時と変わらない悲鳴をあげた。

「お蘭、足閉じたら分からないだよ」

「だって、もう…」

 源太郎は蘭丸の肩を掴んで、土間の柱に寄りかからせた。しゃがんで蘭丸の股間の前に顔を近付けると、捲って裾の中に潜り込む。下帯はつけていなかった。

「足、上げて」

「え…」

「ここに寄っ掛かって」

「あっ」

 源太郎は蘭丸の膝裏を掴んで、片足を持ち上げた。

「可愛いふぐり」

「やっ…」

 反応し始めた中心を持ち上げて、小さな袋を口に含んだ。中身を舌の上で転がして、優しく吸うと、蘭丸の体が大きく震え出した。

「ぷはっ…。お蘭、ちゃんと立ってなきゃ、危ないだよ」

「す、すみません…」

 真面目な蘭丸は謝ってしまう。源太郎は、蘭丸の腰の帯を解いた。細い両手首を頭上の柱に掴ませて、柱ごと手を結び、固定する。痛くないように強くし過ぎず、落ちないように交差させて。

「これで大丈夫だ」

「源太郎様…、蘭はまだ…、湯浴みを…」

 蘭丸はもじ、と腰をくねらせた。口では諫めようとしても、体では全く抵抗しない。

「体、洗っただろ?髪、まだ濡れてる」

「それは一回水を被ったからで、また汗を沢山かきました」

「そうだか?」

 源太郎は襟を開いて、晒された腋を舐めた。

「や、あっ…」

「本当だ、塩辛い」

「んっ…」

 蘭丸が顔を上げ、目立たない喉笛が剥き出しになった。

「乳首、元に戻ったな」

「ひゃあっ」

 小粒な乳首を指先で弾くと、蘭丸の体が大きく跳ねて、腰を浮かせた。蘭丸は切なげに源太郎を見詰めた。

「源太郎様は…、前の胸の方が…お好きですか?」

「ん?」

「いえ、何でも…、んあっ!」

 源太郎は両の乳首をこね回した。熱を持ち、硬くなった豆粒を同色の輪の中にうずめ、放して弾く。摘んできゅっと潰す。

「可愛い乳首…」

「痛…」

 蘭丸の目頭に涙が浮かんだ。しかし、剥き出しの下腹部は既に上を向いて、雫を垂らしていた。源太郎は蘭丸の中心を掴み、もう片方の手で下の袋を揉みほぐした。

「ん…」

 顔を薄い胸にうずめて、乳首を優しく舌で撫でると、蘭丸の息は荒くなり、掴んでいた芯もぴくぴくと筋がくっきり浮き立った。

「んーっ…」

 掌で二つの袋を転がしながら、指を後ろに伸ばす。小さな窄まりは、熱く息づいていた。

「ひゃっ!」

 上に向いた蘭丸自身を上下に扱いた。蘭丸は、背を反らしながら源太郎に胸や下腹部を押し付けた。

「や、だ、だ、駄目…」

 源太郎は袋を弄んでいた先走りで濡れた手で蘭丸の顎を掴み、唇を吸った。蘭丸は源太郎に舌を差し出すが、呼吸がままならず苦しそうだった。

「ふぁ…、あー!」

 どくん、と手の中の芯が蠢いた。迸りが源太郎の手や、蘭丸の足先よりも遠い地面に零れた。

「あ、ああっ…」

 整った蘭丸の顔が快楽で蕩けていた。そして、吐き出し切ると、我に返り羞恥で俯いてしまった。視線の先の床に気付いて愕然としている。

「よく跳ばしたな。気持ち良かったか?」

 蘭丸は答えない。源太郎は白く汚れた手を蘭丸に見せた。生々しい匂いが鼻腔をくすぐる。

「それに濃い」

 源太郎は手の中のものを大きな音を立てて啜った。

「嫌、飲まないで下さい…!」

 塊のように濃い液は喉に絡まってなかなか奥に通らない。

「美味しいだよ」

 蘭丸は顔をあげてくれない。源太郎は、しゃがんで蘭丸の股間の前に顔を持って行った。白濁液が美しい脚を伝い落ちて、足首から指でなぞりながら掬い上げる。

「源太郎様…?やっ」

 会陰の後ろの息づく箇所を濡らした指でほぐす。一本はすぐに埋まった、もう一本ゆっくり埋める。

「源太郎様…、蘭はもう立っていられません、解いて下さい…」

「大丈夫だ、おらが、支えてやる」

 源太郎は立ち上がって、蘭丸の片足を担いだ。あまりの淫靡な姿に、ごくりと固唾を飲んだ。両腕を縛り上げられ、意味をなさない衣服の間から細い体がむき出しになっている。しなやかな脚は震えながら自身の体を支え、膝を持ち上げられたせいで尻の丸みや、呼吸する孔まで晒してしまっていた。そして、一度達した中心は白く汚れ、後孔の刺激で再び角度を上げ、桃色の先端が源太郎に向いていた。

「可愛いな」

 源太郎は、小さな桃のような先端を小動物を愛でるように撫でた。

「そ、そこはもう…」

「なら、後ろ、貰うだよ?」

「…!」

 源太郎は片手で下帯の前の布を取り払った。準備もいらない状態で、先がとろりと濡れている。蘭丸の目線は其処に釘付けになっていた。

「じゃあ、いくだよ」

 腰を落として入り口に先端をあてがい、一気に挿し込んだ。

「あああっ」

「くっ」

「源太郎様、すごい…」

「お蘭も、すっげえ締めてるだよ」

 源太郎は、蘭丸の脚を抱えながら柱に押し付けて、何度も突き上げる。蘭丸の痩せた体は入り込む度に勢いで浮いた。

「んあっ…」

「お蘭、駄目だ、出る…」

「だ、出して…、蘭の中に…」

 源太郎は蘭丸の腰を掴んだ。

「ふっ、うっ…!」

「源太郎様あ…っ」

 熱を送り込んで、逆流しないように腰をぴったりくっつけた。

「あっ…」

 蘭丸も二度目を放ち、源太郎の腹に撒き散らしていた。震える片足で何とか体を支えている。源太郎は、手首の帯を解いて、抱き寄せて自分の体に寄りかからせた。そして、一つになったまま土間にしゃがんだ。
 蘭丸は源太郎の腕の中で呼吸を調えていた。

「お帰り、お蘭」

「お帰り?」

「おのこのお蘭」

 源太郎の言葉を理解した蘭丸は、満面の笑みを見せて自由になった腕で源太郎を抱き締めた。

「ただいま帰りました、源太郎様」

「うん」

「源太郎様…」

「ん?」

「土の上に座っては、肌が汚れてしまいますよ」

「そか。じゃあ、立てるか?」

「はい」

 蘭丸はゆっくり膝をついて、腰を上げた。詮が抜け落ちると、白濁液が溢れて土の床に落ちた。

「いっぱい出しただな。風呂入ろう。洗ってやる」

「では、私が源太郎様を洗います」

「うん」

「源太郎様の…、まだ大きいんですね」

「うん」

 二人は浴室へ向かう。浴槽で何度も絡まり合って、風呂から上がった時は既に夕餉は冷めきっていた。





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