妄想、愉悦。





  


 遠くで雨の音がする。こんなに音が遠いのは、蘭丸に抱き寄せられているからだった。耳や、瞼が密着して汗ばんだ柔肌に包まれていた。

「……」

 源太郎は蘭丸の腕を退かして、顔を上げて耳を済ました。大きなどしゃ降りの雨音。今日は休みだと確信した源太郎は、もう一度寝転んで小さな胸に顔をうずめた。柔らかい。柔らかい?源太郎は目を開けた。そこには、ささやかな膨らみがあり、中心部分には淡い色付きがあった。指先でついてみると、指先が沈んだ。胸だ。しかも、この小ささは。恐らく年端もない少女。

「!!」

 この少女は一体、そして、蘭丸は何処に?源太郎は混乱して飛び起きた。布団の上には蘭丸が眠っている。ああ、少女は蘭丸だったのか、とほっとするもつかの間、腰を抜かしそうな程に驚愕する。

「……え…?」

 何故、急におなごの体になったのか。
 源太郎は、蘭丸の頬に触れてみる。変わらない寝顔だ。それから、仰向けに寝かせて首から肩を上から眺めていった。骨格が小さくなり、肉付きが幾分豊かになったようだ。まるで首から下を別の者に入れ替えでもしたかのようにも思えるが、昨夜つけた赤や紫のしみも同じ箇所に刻まれたままだった。
 仰向けになってほぼ平らになった胸。薄紅の輪の中心は殆ど盛り上がっておらず、乳腺が少し凹んでいた。更に、布団に隠れた腰に触れてみる。くびれが深くなった。薄布団越しで股を撫でるとあるべきものがない。
 ああ、やはり、女になっている。

「お蘭」

 源太郎は蘭丸の肩を揺すり、起こした。蘭丸は、小さくなった手で瞼を擦る。

「おはようございます…」

「ああ、おはよう」

「今、支度を…」

「いいだよ、今日は休みだから」

「本当に?」

「ああ」

「嬉しい」

 蘭丸は源太郎に抱き付いた。何か違和感を覚えたようで、顔を上げる。

「源太郎様…?何だか、大きくなられたような…」

「そんなことないだよ」

 源太郎は蘭丸を抱きしめた。長身で筋肉質な源太郎と、小柄で痩身な少女となってしまった蘭丸とでは大人と子供程の体格差ある。細さに柔らかさが相まって、力を込めたら折れてしまいそうだ。

「お前が縮んだだけだ」

「え?」

 源太郎は蘭丸の体を離して、手を伸ばして胸に触れた。

「分かるか?」

 掌で簡単に隠れてしまう小さな膨らみを包んで、力を込めすぎないように指を埋める。蘭丸は、なにがなんだか分からない、と言う顔をして、指が離れて元の形に戻った胸を凝視している。

「お蘭?」

 つん、ともう一度胸を突いた。

「こ、これは…」

 蘭丸は自分の掌を見つめた。小さく、細い指。そして、柔らかくなった胸に触れた。

「や、やだっ」

 蘭丸は布団を肩から被って肌を隠した。

「蘭の体は、一体…」

「おなごになっただ」

「おなごって…」

「ほら」

 源太郎はより骨が細くなった手首を取って、布団の上から平坦な股間の上に手を置いた。
 蘭丸の顔がどんどん青ざめていく。

「お蘭」

「源太郎様…、蘭は…どうしたら…」

 縋るような目、瞼の淵には涙が溜まっている。

「大丈夫だよ、今まで通り、おらのそばに居てくれたら」

 慰めたつもりだったが、蘭丸はよりいっそう傷付いた顔をしていた。
 蘭丸は、源太郎が可愛いと誉めれば頬を染めたりしていた。しかし、長年男にしか出来ない小姓としての役目を立派にこなしていた。男としての矜持は誰より強いのかも知れない。女の蘭丸を容易く受け入れては、それを否定しているとも捉えられる。

「あの、お蘭…」

 蘭丸は背を向け、脱いだままの寝間着を拾い、源太郎に肌を見せないように羽織った。帯を締めながら立ち上がる。

「混乱して…、頭を冷やして来ます」

「え?お、おい」

 蘭丸は走って行ってしまった。

「おい、お蘭!」

 源太郎は草履も履かずに追い掛けた。外はどしゃ降り、蘭丸の後ろ姿は既に小さくなっていた。

「お蘭!」

 女になっても足が速く、距離が縮まらない。

「いで!」

 足の裏に鋭い痛みを感じ、源太郎は躓いて転んでしまった。柔らかな泥の大地に顔から突っ込む。

「源太郎様!」

 泥だらけの顔を上げると、折れそうな程に細い足首が見えた。足の形はさらに小さくなり、草履もぶかぶかになっている。

「大丈夫ですか!?」

 蘭丸はしゃがんで源太郎の体を起こした。顔を近付けて足の裏の泥を払う。ぽろん、と尖った小石が落ちた。

「足に傷はないようですね」

 蘭丸は安堵の溜め息を漏らした。

「肩をお貸し致します故、戻りましょう?」

 源太郎はその言葉に安堵の溜め息を漏らした。

「立てますか?」

「ああ、平気だ」

 柔らかい泥の上に転んだのだから、体に特に痛みはない。蘭丸は源太郎の足に自分の草履を履かせた。蘭丸には大きな草履が、源太郎には小さくて、踵が余ってしまう。

「さ、私の肩に」

 いざ隣に立つと、身長差が開きすぎて却って辛い体制になった。しかも、足の痛みは殆ど残っていない。真剣な蘭丸はそんなことにも気付かない様子だった。前へ進もうとする蘭丸の腰を掴んで、横に抱き上げる。

「おっと…」

 予想外の軽さに、後ろに体が傾いて、ふらつきながら体制を立て直す。

「こっちのが早いだ」

 源太郎はさっさと家へ戻って浴室へ向かった。
 蘭丸は残り湯で源太郎の泥を流した。

「何も着けずに飛び出すなんて…お怪我をしなくて本当に良かった」

 蘭丸の格好の方がよほど危険だと源太郎は思った。体が縮んだせいで着物の胸元ははだけ、雨に濡れたせいで衣服の意味をなさぬ程に透け、胸の頂の色付きまでくっきり映っていた。もし、男に遭遇したら…考えただけで恐ろしい。

「源太郎様、泥を落とします故…!」

 蘭丸が何かに気付いて、顔を真っ赤にしながら背けた。自らの下腹部に目を落とすと、しっかり起き上がっていた。よりによってこんな時に。

「す、すまね、自分で洗うから、もう戻っていいだよ」

「でも…」

 蘭丸がちらりとこちらを見た。見慣れてる筈なのに、反応は相変わらず初々しくて、可愛い…などと思っていたら、余計に下腹部に熱が集まってくる。

「ほっとけば収まるから」

「源太郎様の、こんなに…」

 蘭丸は源太郎の眼前にきて、小さな指で起ち上がった先端を掴んだ。

「お嫌でなければ、膝を開いて下さい」

 嫌なわけがない。源太郎は無言で膝を開けた。蘭丸の女体を見た故の欲情なのに、蘭丸は嫌ではないのだろうか。考えていたら、滑らかな舌が、指が、源太郎を刺激する。

「凄い…。もう、こんなに…」

 脈打ち、筋を立て、限界まで肥えていた。蘭丸は先端を口に含み、片手で幹を磨きながら、もう片方の手で袋を握る。

「駄目だ、でるっ…!」

「んうっ!」

 体液が溢れ、口から離してしまった。それでもまだ止まらずに、蘭丸の顔や髪や胸に白い塊が降り注ぐ。

「あ、すまね」

「ん…っく」

 口の中のものを、辛そうに飲み込んでいた。蘭丸は息を吐いて、白濁液が付着した顔で源太郎を見上げた。

「昨夜、あんなにしたのに、とても濃いですね」

 これだけ出しても源太郎の昂りは抑えられなかった。

「おらも、お蘭におんなじことしたい」

「え?」

 源太郎は裾に手を入れ、太腿を撫で上げた。蘭丸はその手に自分の手を重ね、遮る。

「だ、駄目です!いえ、あの…」

「どうしても駄目か?」

「まだ、蘭の体が、本当に女に変わったかも分からないですし…」

「おらが確かめる」

「わっ」

 源太郎は蘭丸を浴槽の蓋に乗せ、小さな膝頭を握った。蘭丸は力を込めて、抗う。

「そげん嫌か?」

「いいえ、まだ、心の準備が…」

「じゃ、寝そべって、見えないように、目、瞑ってればいいだ」

「……」

 蘭丸は従い、板に背を預け、顔を手で隠しながら力を抜いた。
 源太郎は膝を左右に開き、屈んで、裾をめくりあげる。蘭丸の下半身全てが晒され、肌は震えていた。恐らく、緊張から。

「……」

 蘭丸のその箇所は面積も肉付きもささやかで、真ん中に真っ直ぐな線があるのみで源太郎は言葉が出なかった。余りに無垢で、性行為を為すための場所とは思いがたい佇まい。思わず、幼少期に手伝った妹のおしめ替えを思い出してしまった。以前、源太郎と懇意になった相手は今の蘭丸より若かったが、それでももっとこなれた外観をしていた。果たして内部はどうなっているのか。

「あっ…」

 直接両手で触れれると、蘭丸は小さな悲鳴を漏らした。肉を捲るとぴちゃ、と粘着質な音がした。
 蘭丸の内側はしっかり濡れていた。本来より赤味が増した左右対称の内部粘膜がきらきら光る。恐らく、先の口取りで蘭丸自身も昂っていたのだろう。衣を纏った小さな小さな突起も膨らんでいるように見える。

「源太郎様?」

「え?」

「どうしたのですか?蘭のは、おかしいのでしょうか?」

 源太郎が無言でずっと見ているものだから、不安になった蘭丸から声をかけた。

「おかしくないだよ。皺も捩れもなくて、色も綺麗だ。お豆も小さくて可愛い」

「豆…?」

「これのことだよ」

「はう!」

 上部の突起に包皮の上から触れると、蘭丸は予想以上の反応を見せた。

「気持ちいいか?」

「んんっ…!」

 触れて力を込めずに擦っていると、どんどん泉が湧いてくる。そして匂いが濃くなり、源太郎の欲求を強くさせた。
 源太郎は衣をずらして、直接突起を舐めあげた。塩味が強く、それだけ感じているのかと思った。

「駄目、源太郎様…!」

 太腿に頭を挟まれないように抑えながら、突起を唇で挟んで舌を擦り当てていると、蘭丸が力んだ。粘膜が震えている。源太郎は、突起を吸い込んだ。

「駄目!」

 蘭丸は起き上がって、源太郎を押しとばした。じわ、と足の間から液が夥しく流れる。

「止まらない…、だから、駄目だと…」

 蘭丸は真っ赤な顔を両手で隠した。誇りの高い蘭丸のことだから、失態に傷付いているのだろうが、その姿を見て、源太郎の股間の張りは増すばかりだった。源太郎はぬるま湯を蘭丸の下半身にかける。

「ごめん…。でも、可愛い」

「あっ」

 源太郎は蘭丸の両手を剥がした。紅潮し、眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げて、瞳は濡れていた。
 たまらず、唇を吸う。小ささも柔らかさも変わらない。改めて、蘭丸への愛おしさを実感した。

「や、あっ…」

 小さな胸に触れると、蘭丸は唇を離して声を上げた。見た目だけでなく、感触さえも硬く、青さを感じさせる。源太郎は凹んだ乳腺に指をなぞらせ、中心部分を指でつまみ上げる。

「乳首、小さいな」

「え…?」

 源太郎の指で形づけられ、僅かに尖った。蘭丸の目線が胸元にいくと、源太郎はもう片方も同じようにして、指で転がし、甘く噛む。ちゅ、と吸うと、蘭丸の腰がびくっと浮いた。
 女になってもここが気持ちいいのか。源太郎の手指で、淡い色付きは赤味を増し、唾液に濡れた乳首は少しだけ膨らんでいた。
 蘭丸が、潤んだ目で見上げていた。欲している時の合図。源太郎は、蘭丸の口を吸った。蘭丸は、源太郎の首に細い腕を巻き付けた。

「ん」

 源太郎は、下半身に手を伸ばして割れ目をなぞった。外側にまで粘液が溢れていた。源太郎は、そっと包皮の上から突起をこすり、人差し指でぬめりを纏った割れ目の中を撫でた。窪みを探し当て、指を添える。

「っ!」

 拒むように力が入り、それでも少し滑らせれば中に指がするりと埋まった。

「くぅ…っ」

 蘭丸の呼吸がままならず、唇を解放すると、蘭丸の目尻に涙が光っているのに気付いた。

「ごめん…、痛いよな?もう、止めるか?」

 蘭丸は首を左右に振る。

「続けて…、うっ」

 指が根本まで埋まる。ざらついた内側の感触は、やはり直腸とは異なる。源太郎は、指の腹で何度か内側を撫でた。

「ああ…、私達、一つになれたのですか?」

「違うだよ、まだ指だけだ」

 指を静かに抜いて、蘭丸の目の前に持って行く。濡れた指がきらきら光っている。

「お蘭が出しただよ」

「…!」

 蘭丸は顔を隠してしまった。源太郎が前髪を撫で、目尻に唇を落とすと、蘭丸が顔を覆った手を伸ばす。源太郎の太く肥えたものに触れる。

「源太郎様、あの、こちらは、大丈夫なのですか…?」

 源太郎は少し考えて頷いた。こんなものを、あんな小さな場所に埋めるのは、あまりにも暴力的行為に思えた。

「そげん痛かったら、今はまだいいだよ」

 源太郎は蘭丸の体を起こして、子供を誉めるように頭を撫でる。

「で、では…、此方を…」

 蘭丸は立ち上がって、後ろを向いた。濡れて貼り付いた裾を捲る。まだまだ女性としては小さいが、それでも昨夜までよりは豊かになった尻を出した。源太郎は窄まりを指先で触れた。すぐそばの孔から垂れた体液で濡れていて、そっと指を進めると、滑りのせいで容易く埋まった。広げる為に指を増やし、慣らしていく。

「ん、んんっ」

 蘭丸の反応も、吸い付きも変わらない。源太郎は自分が蓋に腰掛けて、背を向けた蘭丸を足の間に立たせた。

「ゆっくり、座るだよ」

「はい…」

 腰を支え、位置を定める。蘭丸の後孔に源太郎の先端が触れ、そっと腰を落としてゆく。

「んんっ…」

 蘭丸の尻が触れ、重みで沈んで密着した。改めて、腕の中にいる少女が蘭丸だと実感した。一つになって余韻を噛みしめたくても、心地よさにすぐに達してしまいそうだ。

「お蘭、どうだ?女でも、尻の中がいいか?」

「…!」

「おなごになっても、お蘭の中はいいだ。ふぐりの感触がないのが不思議だけど」

「……蘭も、少し、違います…。奥が、とても…」

「奥?ここか?」

 一度、大きく腰を揺すってみる。蘭丸の体が浮いて、また着地した時に大きな悲鳴を上げた。

「ひゃあっ」

 源太郎は蘭丸の腰に腕を巻き付けて、やや前方に、腰を打ち上げた。

「あ、あっ、あんっ…!」

 蘭丸の内側がどんどん狭くなって、源太郎を圧迫していく。源太郎は我を忘れて、蘭丸の胸を撫で回した。

「あ、あっ!」

 掌に堅い感触があった。さっきまで平らだった乳首が主張している。指の腹で擦っていると、また凹んで隠れてしまった。源太郎は胸を掴んで揉みしだいた。

「痛っ!」

 はっと我に返る。源太郎は手を離した。

「乳、痛かっただな。すまないだ、強く揉みすぎた」

「い、いえ…」

「こんな小さい乳は初めてで、力加減が分からん」

「え?」

「強くするつもりはなかっただ」

「蘭の胸は、小さいのですか?」

「ああ、小さい」

「……」

 蘭丸は自分の胸を凝視しながら、両手で寄せあげる。ちょっとやそっとでは左右の薄べったい肉はくっつかない。

「…源太郎様は、大きい方がお好きなのですね」

「そんなことないだよ。小さいのも、可愛い」

「だって、今までの方は、大き…」

「乳で選んだりしないだよ。それに、お蘭は小さい方が似合ってるだ。これでいい」

 源太郎が触れようとすると、蘭丸は自分の胸を隠してしまった。

「もう、痛くしないだよ?」

「いえ…、胸はもう結構です」

 蘭丸は源太郎の手を取り、下腹部へ導いた。

「此方を…」

「此処だな?」

 源太郎は縦線を何度かなぞって、上部の膨らみに触れた。また蘭丸の締まりが強くなる。腕の中の蘭丸が震え出した。

「んっ!」

 びくびく揺れ、足先を伸ばしている。強く強く締め付けて、力が弱まった。蘭丸は源太郎に背中を預けて、呼吸を整えている。

「あ!」

 源太郎がまた指を滑らせていると、蘭丸が腕を掴んで制した。

「どうした?嫌か?」

「嫌な訳では、でも、蘭はまた…」

「いっちゃえばいいだよ」

「あ、ああー!」

 再度蘭丸の体が震え、中が締まる。源太郎は、更に刺激を与える為に腰を揺すった。

「あ、駄目!」

 更なる絶頂を途切れることなく与えられ、蘭丸は叫ぶ。そして、何度も叫んでいるうちに言葉が曖昧になり、声もかすれてきた。源太郎の熱も更に昂る。

「お蘭…!」

 源太郎は、蘭丸の中で果てた。互いの体を痙攣させながら、源太郎の精が蘭丸の内側を満たしてゆく。

「はあ…」

 長い吐精が終わり、力が抜けると、蘭丸の体がぐらりと前へ倒れた。

「おっ…と」

 すぐに引き寄せる。蘭丸は力尽きていた。どうやら、刺激を与えすぎて失神したらしい。

「どうすっかな…」

 女になった蘭丸を抱えたまま、源太郎は途方に暮れていた。







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