しあわせという檻の中で_3

 彼の奥さんとして、夜も一緒に過ごすようになって3ヶ月が過ぎた。相変わらず外出は出来ないけど、こういうことをしたいと希望を伝えると配慮してくれるから、そこまでの不便は感じない。
 ……それより、夜のおつとめが加わったことで私の体力がちょっとやばい。
 具体的に言うなら、寝不足とか、足腰の震えとか。あの日ほぼ勢いだけで一線を超えてから、蘭さんは私を寝室に連れ込むことが増えた。もちろん、今日は無理だと断ればそれ以上深追いはしない。
 でもひとたび「いいですよ」と言うと朝まで寝かせてもらえない。今日も眠い……。
 欠伸をしながらリビングの掃除に取り掛かる。天井の灯りに溜まった埃を払うため、踏み台に乗ってカバーを外す。その瞬間ふらついて、私は倒れた。
 あ、まずい。頭打った……。

 次に目を覚ますと、自室のベッドの上だった。視線だけ動かすと彼の姿が目に入る。不安そうな顔が一瞬で安心に包まれた。そして小さく「よかった……」と聞こえた。
「蘭さん……いつからここに? まだお仕事中ですよね?」
「そんなモン部下に任せときゃいーんだよ」
「ええ……」
「オマエが怪我したら、オレしか気付いてやれないだろ。仕事はどうとでもなる」
「……そういえばベッドまで運んでくださったんですね。ありがとうございます。少し休んだら仕事に戻ります」
 まだ頭は痛むけど、堪えられる程度だ。でも蘭は顔を顰める。
「頭打ってんだぞ。今日はもう仕事とか考えんな」
 それともオレがつきっきりでいなきゃダメか? と私の顔を覗き込みながら言う。
「や、ち、近いですよ蘭さん……」
「わざと近づいてんの。オマエがどっか行ったりしねェよーにさ」
「どこにもいきませんよ……蘭さんの隣が一番落ち着くんですから」
 そんな言葉がぽろっと口から出ると、彼は驚いたように目を見開いたのち、ふにゃりと表情を崩した。あれ、なんだか意外。そういう言葉、言われ慣れてると思ったのに。

※ちなみに蘭がナマエの異変にすぐ気づけたのは、家中に監視カメラを仕込んでいるからである。
脱走しても気づけるように、という理由で取り付けたのだが、ナマエは全く逃げようとしない。
なのでただ働く姿を見て癒されたり、今回みたいに駆けつけたりするためのツールと化している。


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