君の行方を教えておくれ・4
直ぐに運転手に前の扉を開けさせ、避難誘導をする。
雪崩れ込むように乗客たちは必死にバスから避難した。それに続いてバスから飛び出すと、背後から「コナン君!?百合ちゃん!?」という聞いた事のある声がして振り返る。
佐藤刑事たちがいた。
「犯人たちが仕掛けた爆弾が、あと二十秒足らずで爆発するんだ!!」
「刑事さん達も危ない、早くそこから逃げないと!!」
「何ですって!?」
しかしそこからは流石佐藤刑事、素早く他の刑事に指示を飛ばした。
早く逃げなければと子供達を誘導していると、走っている最中に歩美が周囲を見渡した。
そこで気づく。…哀がいない。
「江戸川君!!灰原さんが!」
「な…!まさか!!」
「あ、コナン君!!梁川さん!!」
直ぐにコナンとUターンしてバスに向かう。
哀はあのバスの中にいる。きっとこのまま戻っても事情聴取の際に組織の者と鉢合わせになるだろう、そうすれば皆殺されてしまうから、それならばこのまま自分が死んだ方がいいと思ったのだ。
自分が死ねば、皆と組織の接点も消えるから。
(志保、馬鹿か…!何のために明美がキミを守った!!)
友人の形見の愚行に歯を食いしばる。
「ボウヤ、あのバスの中にあった消火器でフロントガラスを割ってくれ。私はあの子を回収する」
「っ分かった!」
「それと、私が工作をしてあの子が事情聴取を受けなくとも済むようにするから。キミも口裏を合わせてくれ。…あの子に説教を頼んだよ、キミが言ってあげた方があの子もきっと納得する」
あと十秒もない、バスに突入する。
真っ直ぐに哀の方へ向かうと、やはり彼女はそこで一人座っていた。
背後で窓ガラスの割れる音がする中、顔を上げた哀の手を掴んで引っ張り出す。
そのままロクに抵抗も出来ない哀とコナンの元に駆け寄り、コナンに自分のパーカーを直ぐに被せて抱き抱え、頭から割れた窓ガラスに突っ込んだ。
二人がガラスで傷つかないよう、特に頭を守りながら。
割れたガラスが腕や足に刺さっていくのを感じながら、直ぐに受け身を取る。
百合達の身体が道路に投げ出されたその数秒後、バスが爆発した。くそ、眼鏡は無事だが帽子が外れた。
「ぐ、ぅ…!!」
爆風で身体が浮く。そのまま数メートル道路を引き摺って、3人の身体は何とか止まった。
「馬鹿野郎お前、自分が無防備になってどうすんだ…!」
「は、それでも君一人でするよりは怪我は少ないぜ。…ガラスで身体を切るくらい、私にはなんて事もない」
哀は少なからず擦り傷や小さな切り傷を負っていた。
彼女の足に自分の血を塗り付ける。自然な傷だと思わせるように。
そんな中警察の車がこちらへ向かってきていた。車は直ぐに止まり、中から高木刑事が飛び出してくる。
「コナンくん!梁川さん!?」
「コナーン!!百合〜!!!」
あっちから元太たちも駆け寄ってくる。あまり大きく名前を呼ばないでくれ。
「この子怪我してるんだ!博士や皆と一緒に、病院に連れてって!」
「事情聴取は私と江戸川君で受けるから!高木刑事!」
「え!?あ、ああ…」
勢いで押す形で了承させると、直ぐに哀を高木刑事の車に押し込んだ。
その際にコナンに説教は任せた。何を言ったのかはあえて聞かないでおいてやろう。何を言ったかは、大体わかるが。
高木刑事の車が病院に向かったのを確認して、ようやく肩の力を抜いた。
「…お前は大怪我してっけどいいのかよ」
「ん?いや、特には。自分で何とか出来る範囲だ。キミが怪我をしている方が気がかりだよ」
「…流石プロって感心すりゃあいいのか?俺は」
「ご自由に」
「Hey!クールキッズ!」
こ、この声は…!
サッとコナンの背後に隠れた。その予想通り、こちらにジョディがやってくる。
コナンが「は!?」と声を上げたが、悪い。ボウヤ、このまま頼む。
視線で訴えると、コナンは疑問ながらに了承してくれた。助かる。
「クールガール!アナタのお名前は?」
「…、…梁川、百合…」
「Oh、百合!…どうしたんデスか?」
「あ、えっと梁川さん、すっごくシャイだから…!あの時は緊急だったから咄嗟に一目気にせずできたらしいんだけど…」
些か不安の残る言い訳だがこっちは何もできないのが悔しい。
顔が見えないようにぴったりとコナンの背中に張り付く。
ジョディはそれよりもどうやってコナンが第3の犯人を見つけることが出来たのかが気になるらしく、コナンを質問攻めにしていた。
真相を聞いてるとやはりこの子、FBIに欲しいなと思えてくる。あの少ない判断材料で、よくそこまで見抜いたものだ。
暫くしない内に、事情聴取の準備が出来たのか刑事たちがバスを用意して戻ってきた。
「あ、僕達も行かなきゃ。いこ、梁川さん」
「うん」
「もー、大丈夫だよ。怖い人たちは刑事さん達が連れてってくれたから」
そんなコナンの役者っぷりに感心しつつ背中にひっつきながらバスの元に行こうとすると、突如背後から腕を持ち上げられた。
ずっとジョディに気を取られていて気が付かず、咄嗟に腕を振り払おうとしたものの痛みが勝って上手く力も入らず、失敗に終わる。
腕を掴んだのは新出だった。
「ほら、血塗れじゃないか君!上手く隠しているけど、右足と脇腹も怪我をしているね?服に血が染みてきている。それと左太もも、ガラスが刺さっているじゃないか!」
「い、いた、」
「それと確かキミ、頭も怪我していたね?見せてご覧」
「、あ」
新出に顔をそう強くないはずの力で取られて、晒された。
どくん、と心臓が強く響く。息が詰まる。
「…、……!」
ジョディの顔は見えないが、彼女の息が鳴ったのを、よく出来た耳は聞いてしまった。
見られたのだ。顔を。
殉職したはずの娘に瓜二つの顔を。
「ほら、こんなに血を流して。すぐに処置しなさい、キミも病院に行くんだ。刑事さんには言っておくから。コナンくんも、腕に怪我をしているね?ちゃんと治療してから事情聴取を受けるんだよ、いいね」
「…、わ、わかった…」
ここを一刻も早く離れたい。1秒でも長くこの顔をジョディに見せたくない。
新出に連れられてその場を離れた。それだけは、彼に感謝した。
「…ジョディせんせ、行こ?……ジョディ先生?」
「………、っ、ああ、そうデスネ!行きましょ、クールキッド」
ジョディがずっと百合の後ろ姿を、まるで亡霊を見たような目で見ていた事に、コナンは静かに目を細めた。
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