あんなことがあった翌日、普通に俺達は学校に行っていた。
だが現在真昼間、俺と遊作はLINKVRAINSにハノイの騎士が出たという情報を得て早退をキメた。
見事な不良男子高生である。
殆どまともに受けている授業がないというのに好成績を維持している俺はえらい。

「ただいま〜!」
『アレッ随分とお早いお帰りでないンブッッ』
「LINKVRAINSに行くぞ」

イイコにお留守番していたアイをディスクごと鷲掴んで隠し部屋に入る。
一見年季の入ったこの部屋にはLINKVRAINSログイン用の隠し部屋があるのだ。
俺も車椅子ごと部屋に入る。

「「デッキセット!IN TO THE VRAINS!!」」



LINKVRAINSにログインを果たし、この前と同じように空に投げ出される。
いつもの如くPlaymakerとなった遊作を抱えて俺は緩やかに近くのビルの屋上に着地を果たす。
一日空けてのログインだったが、荒廃していたLINKVRAINSは元の姿を取り戻しつつあった。

「まあまあ復旧進んでんなあ」
「お前は今日デュエルは控えろよ。まだダメージが癒えてないだろう」
「言われずとも今日はサポートに回るさ」

増援が来なければな、という含みを持たせる。
手っ取り早く片付ける為に周囲一帯でサーチをかけると、すぐそばに反応があった。
そちらに視線を向けると、やはりというべきか、早速お目当ての姿があった。特徴的な白いローブに知らず黒い感情が滲み出そうになる。

「来たかPlaymaker、Laughingpixy」
「………!」

その姿はれっきとしたハノイの騎士だ。
だが、俺のサーチに引っかかった反応はまるでハノイと異なる。

『なんか感じるものでもあった?』
「感じる、というか。…随分とまあよく作りこまれたアバターだけどさ、アレはハズレだな」
「ああ。アイツはハノイの騎士じゃない」
『俺もそう思う』

満場一致の意見に、ハノイを装った奴は豪快に笑いだした。
その足元からゆっくりと被っていたアバターエフェクトがはがされていく。
やはり、というか。該当アカウント名からするに、恐らくあの「男」は。

「お前達をおびき出す為に、ハノイを利用させてもらった!―――俺はGO鬼塚、本物のヒーローがヒーロー気取りの化けの皮を剥がしに来たぜ!」

完全にエフェクトが剥がれ、俺達がいつもディスプレイで見ている姿のGO鬼塚が現れた。
これはまあ、高らかな宣戦布告だな。
アイが早速GO鬼塚を検索し始めた。カリスマデュエリストランキングは堂々の第一位だ、直ぐに引っかかる。
Playmakerの雰囲気が急速に興味を失くし始めた感じになって来た。

「興味ない。帰るぞpixy」
『あっ帰っちゃうんだ』
「!待て」

Praymakerがログアウトの準備を始めて踵を返した直後。
俺が呼び止めたその瞬間、空から巨大な鉄格子が現れ、LINKVRAINSの一画ごと俺達を閉じ込めた。

「これは―――」
『気をつけろ、あれはLINKVRAINSからのログアウトを妨害するプログラムだ!』

振り返れば、GO鬼塚が不敵な笑みを湛えていた。
おびき出せばその時点で奴の独壇場だったというわけだ。
しかし俺がログイン直前に調べた限りではあんな大掛かりなプログラムを探知できなかった。
外部からの妨害―――ではない。

「気が付いたか?このプログラムは、お前達が俺を倒した場合にのみ解除される」
「随分と大掛かりなプログラムだが…俺が探知できなかったところを見ると外部の仕業じゃないな。GO鬼塚、アンタSOLテクノロジーの刺客か?」
「ハッカーにそんな事を教える筋合いはない」
「どうするPlaymaker?」
「……俺が出る。お前は解析を頼む」
「あいよ、任された。頑張れよ」

草薙から通信が入っている。
俺は草薙の中継役になるべく彼らから距離を取り、近くの見晴らしのいいビルへと移った。
Playmaker側にも通信を繋ぎ、音声をONにする。

「草薙さん、わかったか?」
《SOLテクノロジーのプログラムだな》
「やっぱりか。邪魔なプログラムの排除は出来そうか?」
《相当厄介だぜ。時間はかかりそうだ。お前の方からも頼む》
「了解。何かわかったら言ってくれ、俺も何かわかったら連絡する」
《おう。遊作を頼んだぜ》

草薙に中継が繋がっている移動カメラにウインクを届けて通信を切った。
さて、今この地点から中継をするのも可能だが、プログラムの解析には些か不向きな場所だ。
どうするかなと考えて、脳裏にハノイの騎士達が乗っていたLINKVRAINS内で実体化したモンスターたちの事を思い出す。

(できるかもしれないな、アレ)

俺はトロイメア・ユニコーンのカードデータを一時的に不正アカウントとして抽出し、簡易的なアバターを作成した。
肉体を得たユニコーンは俺を背に乗せると一鳴きし、空へと駆け上がった。
上空からは既にスピードデュエルを始めているPlaymakerとGO鬼塚が良く見える。

「おお、特等席!」
『ブルル……』

絶好の中継ポイントを得た俺は、草薙の中継役も兼ねて高みの見物と洒落込むことにした。




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