暫く彼らのデュエルを観察しているが、実にGO鬼塚のデュエルは見ていて楽しいものだった。
わざと自身を不利な状況に追い込ませてからの、一発逆転劇を彼は得意としている。
そしてそのプレイングは彼を一流のエンターティナーだと認めるには十分すぎた。
「どうだいアイ、ハノイの騎士以外とのデュエルは」
『理解不能!なんでわざわざ無駄なプレイングをするんだ?人間は時折理解が出来ない!』
「AIからしたら『無駄』でも、人間からしたられっきとしたパフォーマンスなのさ」
『pixyちゃんはどちらかといえば俺寄りの感覚なんじゃないの?』
「まあそうだなあ。でもこれはこれで面白いなとは思うぜ?俺はやらないし出来ないけどさ」
これらのプレイングを『無駄』と捉えるか『余興』と捉えるかの違いだ。
人間は強く娯楽を求める。一発逆転劇なんて、子供達が大好きな話だ。
きっとGO鬼塚はヒーローはヒーローでも、「子供達の為のヒーロー」なんだろう。
《夜鷹!プログラムが完成した!》
「早いな!俺の力は要らなかったか?」
《いや、座標の役割を頼みたい!》
「座標か。じゃあ俺の非正規アカウントを使い捨てて抜け穴の座標に使う」
《了解!》
(―――だが、遊作のあの様子…素直にログアウトするかね?)
一度決めた事は曲げない男だ。
嵌められた形でのデュエルとはいえ、一度受けた勝負を投げ出すような真似をするだろうか。
(……まあ、一応は作っといてやるか。アイが気の毒だし)
そう思考を落ち着けると、抜け穴の座標へとユニコーンを走らせる。
スピードデュエルでやってきたPlaymaker達の頭上へと落ち着くと、座標を固定して草薙に合図を送った。
その数秒後、デュエルをしている彼らの数メートル先に抜け穴が出現する。
「Playmaker!ログアウトするならその抜け穴を使え!」
「!!Laughingpixy…!!」
彼らの頭上から声をかける。
GO鬼塚は俺をギッと睨みつけた。そりゃあ折角楽しくなってきたデュエルを無駄にされそうになってるんだからなあ。
Playmakerは抜け穴へ方向を変えた。だんだん抜け穴へと近づいて行って、俺もそれに従って彼の後ろにつく。
彼は抜け穴に入る――――――直前に、急な方向転換で抜け穴を、よけた。
「やっぱりかぁ」
《なっ何してるんだ遊作!?》
至る所から阿鼻叫喚の嵐だ。
思った通りの行動にやっぱりか、と俺は苦笑いを零す。
暫くPlaymakerの後ろにぴったりとくっついていたのを、彼の頭上へと移った。
『なにスルーしてんだよ!?』
「デュエルを受けた以上、逃げる事は出来ない!」
『うう、人間は時に意味不明な事をする〜!どういうつもりだ、Playmakerサマ!?』
「……俺がデュエルを続けるのには、三つの理由がある!」
確かに、彼とのデュエルを中途半端に終わらせておくには、彼は勿体なすぎる。
「一つ。奴は自分のあらゆる技術とタクティクスを使い、観客や、敵である俺を楽しませようとしている」
『お前を楽しませる!?わざわざ自分のピンチを作ってか!?非合理過ぎる…!』
「どんな時でも、どんな相手でも、自分のスタイルを貫き通す…そのデュエルこそが、奴の信念だ。奴が本当のプライドを持つ一流のデュエリストである証だ」
『本気かぁ?アイツのデュエルが一流だなんて』
GO鬼塚のデュエルは、「楽しい」のだ。
自分を敢えてピンチに追い込み一気に逆転して見せる豪胆さ、その裏で綿密にタクティクスを組む計算高さ。
デュエリストから見れば間違いなく彼は一流のデュエリストであり、それ以外から見れば彼は一流のエンターティナーだ。
「二つ!奴には、絶対にこのデュエルに勝とうという信念がある」
『楽しませることと必ず勝つことは矛盾している』
「そうだ。だがその矛盾が融合する時、決して合理性からでは導き出せない境地が見えてくる!奴はそれを見ている」
デュエリストだからこその精神性だ。
AIには理解が難しいだろう。0と1の二進数で思考をする存在である彼らには、0.5の存在などわかるまい。
「三つ!その結果、俺は奴のデュエルを受けて立ちたくなった!奴を、奴以上のデュエルで倒す!それが、デュエリストとしての俺の流儀だ!」
『理解不能!理解不能〜!』
アイは目を回してしまった。
だが俺は、彼の回答に百点満点をつけたくなった。
嬉しそうに微笑む俺を見上げて、Playmakerは少しだけ居心地の悪そうな顔をした。
「だが、お前まで残る必要はなかっただろう。ここは危険だ」
「水臭いこと言うなよ。一緒にログインしたんだ、出る時も一緒だ」
「……」
「それに、ここに残って最後までデュエルを受けて立つのがデュエリストとしてのお前の流儀なら、最後までお前のやりたい事を見届けるのが兄としての俺の流儀だ。存分に暴れてこい!」
バシ、と背中を引っ叩いて発破をかけると俺は再び上空へと退避した。
不謹慎だろうが、GO鬼塚に「アンタも頑張れよ!」と発破をかける。
これからどんなタクティクスを見せてくれる?Playmakerも楽しみにしているんだ、俺だって楽しみなのさ。
『楽しさ』をデュエルで見出すなんて、……いつ振りだろうなあ。
(すげえな、カリスマデュエリストってやつは)
アンタも間違いなく一流だ、と内心拍手しながら俺は先ほどの上空地点までやってきた。
彼らはデュエルを再開している。
特等席で彼らのエンターテイメントを見せてもらおう。
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