「――――俺を連れてこいだって?」

ハノイの騎士の言葉に耳を疑った。
Playmakerを連れてこい、というのならばまだ納得できた。
だが、俺はアイ…イグニスも所有していない。所有しているPlaymakerの周りをうろちょろしているハッカーという認識が、彼らにとっては正しい筈だ。
何故?

「Playmakerに対する人質のつもりか?」
「そこまで貴様に教える義理はない。ただ「連れてこい」とのご命令だ」
「ハッ、そう言われてノコノコついて行くとでも思っているのか」

俺はデュエルディスクを構えてぎろりとハノイの騎士を睨みつけた。
そう簡単に行ってたまるか。
一か八かであちらに潜り込めば情報を盗み出せるかもしれないが、過去の経験がその選択肢を断固として封じた。
ハノイの騎士は笑みを深めてデュエルディスクを構えた。

「大人しく来てくれるとは思っていない。故に、私は貴様をデュエルで拘束し、力尽くでも連れて行く」
「やれるもんならやってみな!」
「フン、ではスピードデュエルと行こう。我らの天使がPlaymakerを引き付けている間にな」
「戯言を…!」

やはりブルーエンジェルのデッキのハノイの気配は間違っていなかった。
解析は後回しになりそうだが、確信は持てた。アレはハノイの電脳ウイルス。
恐らく昨日ハノイから送られた刺客が彼女に仕込んだものだ。
ハノイはPlaymakerを明確に敵そして障害として認識し始めているのだろう。俺にこんな刺客が送られてきたのがいい証拠だ。
だが奴らの目的は俺でもPlaymakerでもなく、アイのはず。
奴に俺の拉致を命じた奴は、一体俺に何を見出している?

俺とハノイの騎士はDボードに飛び乗ってデータストームの上に落ち着いた。

「すぐにカタをつけてやる…!」
「私は私の任務を果たす!」


「「スピード・デュエル!!」」


***


一方、現実世界ではブルーエンジェルとPlaymakerのデュエルが中継されて大騒ぎだった。
草薙は店の対応に追われながらもディスプレイを見て冷や汗をかく。
なんせ昨日まで「俺はハノイの騎士以外とは戦わない」と豪語していた遊作が気が付いたら自分の目の届かない所でデュエルをおっぱじめていたのだ。

(何してるんだ遊作…!?今頃授業中だろうが!夜鷹は何をやって…!)

《おおっと!?Playmakerとブルーエンジェルとのデュエルの一方で、なんとなんと、ハノイの騎士が出現したァ!!》
「!?」

思わず草薙が頭を上げた。
Playmaker達のデュエルの実況をしていた実況者が驚愕に声をひっくり返している。見物客もどよめいていた。
大きなディスプレイにはPlaymakerとブルーエンジェルのデュエルが映っており、サイドディスプレイにはハノイの騎士とLaughingpixyが映っていた。

《これはこれは、どっちのデュエルを見たらいいんだァー!?一体何がどうなっている!?ハノイの騎士とLaughingpixyのデュエル、こちらも目が離せないぞ!!目が足りない〜!!》

(どうなってる!?遊作、夜鷹…!)


***


『やばいぜPlaymaker様!』
「黙ってろ、デュエルの邪魔だ!」
『違うんだって!!今度こそ本物のハノイの騎士が来たんだって!!』
「なんだと!?」

ブルーエンジェルとのデュエル中だったPlaymakerはアイの報告に思わず手を止める。
アイの報告を聞いていたブルーエンジェルも思わずPlaymakerを見た。

「今どこに…!」
『一直線にLaughingpixyの所に向かった!腹立つけどアイツら、俺達の諍いを利用してpixy様にちょっかいかけに来たんだ!』
「pixyが…?何故…アイツはまさか、」
『予想通り、ハノイの騎士を相手取ってスピードデュエル中だ!』
「チッ…!」

ここからはビル群の所為で彼らが見えない。
このスピードデュエルを早く終わらせなければならない。
彼が負けるとは思わない。彼のデュエルタクティクスは卓越したものだ、モンスター効果に精通している彼なら効果を利用してソリティアだってできる。

(それなのに…なんだ、この嫌な予感は…)

根拠のない不安に意思が揺らされそうになるのをぐっとこらえる。
どう足掻いても、まずはブルーエンジェルとのデュエルを片付けなければ始まらない。
デュエルを中断する訳にはいかない。こちらもハノイの案件だ。

(夜鷹……絶対に無茶はするな…!)




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