まさか、こんなことになろうとは。
俺は早速独断でLINKVRAINSにログインするという軽い反抗が齎した結果を睨みたくなる。
ついさっきまで俺は怒りに任せてLINKVRAINSを全力で横断していたのだが、目の前にブルーエンジェルが現れて俺の通路を塞いでいる。
ブルーエンジェルは正に名の如く天使のような笑顔を俺に向けた。

「あら!偶然ねLaughingpixy!」
「どちら様だ?」
「何、私の事忘れちゃったワケ?」
「忘れたも何も初対面だろう。俺の記憶が正しければ、ブルーエンジェルにそんな大人の色気なんてなかったと思うけど?」
「………あら、お上手ね。随分早く見破られちゃった」

ブルーエンジェル、を騙る何者かは一転して薄く微笑みを浮かべる。
財前葵はまだ昏睡状態のはずだ。ならばブルーエンジェルがここにいるのはおかしい。

「Playmakerは一緒じゃないのね。貴方達いつもコンビで行動してたけど、喧嘩でもしたのかしら?」
「貴方には関係ないな。でも、彼は今は此処にいないよ。彼に何かお便りでもあったのなら残念だったね、『ゴーストガール』」
「…本当、一流のハッカーっていうのは事実のようね。いつ気づいたの?」
「ついさっきかな」

ブルーエンジェルを騙る者、もといゴーストガールは感心したように目を少し見開いた。
それは皮肉ではなく素直な賞賛だろう。彼女ほどの電脳トレジャーハンターに賞賛されるのは名誉な事だ。状況が状況なだけに素直に喜べないのが現状だが。
彼女の発言とブルーエンジェルに成りすましている様子からして、目的はPlaymakerといったところだろう。
そのアバターはPlaymakerを呼び出す為か。タイミングがいいんだか悪いんだかわからないな。

「そっか、貴方が来たからPlaymakerもいると思ったんだけど…でもラッキーかも。私、実は貴方にとても興味があるの」
「?Playmakerの相方としてか?」
「ううん。この前のハノイの騎士とのデュエルでの貴方の様子が気になったの。それで貴方がサイコデュエリストなのかこっそり調べてたんだけど…貴方とのデュエルは痛みが伴うって、本当かしら?」
「音声データは破損してたはずなんだけどな」
「おかげで苦労したわ」

女狐め、と目を細める。
自分でも把握できていない自分の事を掘り出されるのは案外気分が悪いものだなと内心顔を顰めたくなる。
ゴーストガールは如何にも興味がある、と言いたげな表情だがその内心彼女は仕事にストイックだという事は知っている。

「あまり相手を挑発しない方がいいぞゴーストガール」
「もう、気が短いのね。それともご機嫌斜めなのかしら」
「今は後者かな。というか、質問が多いぜ。俺に用はないならそこを退いてくれ、仕事があるんだろう?」
「仕事もあるけど…でも折角貴方に会えたんだし、そもそも貴方に全く用がないというわけでもないのよ。当初と予定は違うけどね?」
「…………俺に、Playmakerを吊る餌になってくれって仕事なら断るぜ」
「あらバレてるのね。でも残念、もう下準備は終わってるの」
「…?…!まさか、」
「立派な餌になってね、pixyくん」

ゴーストガールはニッコリ笑って、懐から徐にバラを取り出し、俺に投げた。
バラが地面に落ちた途端花びらが突如おどろおどろしい巨大な腕に変化し、俺の身体を鷲掴んだ。
こいつ、強力なプロテクトが掛かっている。しかもスキャンが反応しなかった。
SOLテクノロジーのプログラムで間違いない。という事は。

「ゴーストガール、まさかSOLテクノロジーの…ッ!!」
「そこから先は私に聞かなくても「彼」が話してくれるわよ〜」

彼女が最高の笑顔でウインクをしたのが見えたのを最後に、俺の身体は腕に引っ張り込まれてLINKVRAINSのプロテクトエリアに引きずり込まれた。



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