彼らのスピードデュエルが始まっているのか、LINKVRAINSが騒がしい。
リボルバーはPlaymakerとのスピードデュエルの為だけにLINKVRAINSを半壊させ地獄のような姿へと変えてしまった。
LINKVRAINSを破壊するなど造作もないと豪語していたのは真実だろう。
ゴーストガールは俺に回復プログラムをくれると、リボルバー達を追うためデータストームに乗って消えて行った。
彼女に草薙と通信が繋がるカメラを渡したから、草薙にも映像データが向かうはずだ。
俺はカメラを彼女に渡した為、音声だけ傍受させてもらう事にする。
聞いている限り、リボルバーのデュエルタクティクスは俺達が今まで戦ってきたハノイの騎士とは一線を画している。
あのクラッキング・ドラゴンの真の使い手だと言っていた。
ならば、より強力なモンスターが出てくる。
何とか立ち上がれるまで回復が追い付くと、破壊された壁から町を見下ろせる場所まで移動した。
「…リボルバーはやっぱりクラッキング・ドラゴンを召喚したか」
「だがPlaymakerも連続でリンク召喚をしている。クラッキングドラゴンの効果による弊害は少ない。…堅実な出だしだ」
リボルバーはクラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚する為に使用したドラゴノイド・トークンを召喚した際のコストでLPが1000減っている。
Playmakerもリンクモンスターを召喚する為のソリティアでクラッキング・ドラゴンの効果ダメージによるLPの減りもあるが、一撃で殺される事はなくなった。
だが効果ダメージのリスクは減ってもクラッキング・ドラゴンの攻撃力は3000。Playmakerの召喚したデコード・トーカーの攻撃力は届かない。
そこで、彼は相手の効果で自分のフィールド上に召喚されていたドラゴノイド・トークンをリリースし、コンデンサー・デスストーカーを召喚。
その効果でデコード・トーカーの攻撃力を上げ、真正面から捻じ伏せに行った。
Playmakerは一枚カードを伏せるとバトル宣言し、デコード・トーカーでクラッキング・ドラゴンを叩き斬る。
除去もなく、クラッキング・ドラゴンは破壊された。
(…いや、リボルバーの戦略も堅い。リボルバーにはより強力なモンスターがいる筈だ、クラッキング・ドラゴン如きに使うには勿体ない)
お互いのLPは既に半分を切っていた。
だが、ここからでも感じるリボルバーの並々ならぬ気迫、殺気。ビリビリと肌を刺すかのような強さに痛みすら感じる程(このネットワークの気配を感じる力を、アイは『リンクセンス』と呼んでいた)。
何かが来る。アイはどうも安心し始めているようだが、リボルバーは決して甘くはない。
リボルバーのターンが開始されると、彼はモンスター効果を利用してフィールド上にドラゴン族モンスターを一気に三体召喚し、リンク召喚でリンク2のドラゴン族モンスターを召喚。
リンクモンスターの効果で、墓地のクラッキング・ドラゴンを復活させた。
このターンクラッキング・ドラゴンは攻撃できないが、リボルバーは決して無駄な事をするような男じゃない。
奴は何をするつもりだと、思考を研ぎ澄ませる。その最中に、リボルバーの気迫にかぶさるように、何かの気配が頭の中を蠢く感覚がした。
「…ッ!、なんだ、この気配は…!?」
「Laughingpixy?どうした!?」
「……、リボルバーは、……何を、するつもりだ…?嫌な予感がする!」
ビリビリと感じる気迫。LINKVRAINSから、何かを感じる。
俺がスキルを使うときに必ず感じる―――――『モンスターの鼓動』だ。それも、今までのより規模が大きい。
まさか、リボルバーは――――俺がその思考に行きついた時だ。通信の向こうで、アイが『馬鹿な!!そのスキルは俺独自のプログラムだぞ!!』と怒鳴っていた。
リボルバーは、スキルを使ったのだ。
(『Storm Access』…!!)
だが、アイは言っていた。Storm Accessはアイ独自のプログラムだと。
ハノイの騎士がアイを研究し、独自にそのプログラムを模倣したというのならば、まだ納得がいった。
――――だが、それでは。俺がStorm Accessを持っている事に、説明がつかない。
リボルバーと同じようにデータストームを操る能力。アイ独自のプログラムであるはずのスキル。ハノイの騎士が俺の身柄を狙う理由。
俺が失った記憶に、何かがあるのか?
10年前の俺にもLulzSecにも、今の俺が知らない何かがあるのか?
ハノイの騎士は、俺の知らない俺の事を何か知っているのか?
(俺は一体、『何』なんだ?)
答えは全く出ない。考えがまとまらない。
リボルバーがスキルで引いたリンク4モンスターの気迫も相俟って、身体は軋み、頭が割れそうだ。
ゴーストガールから渡された回復プログラムのインストールが止まり、エラーが出始める。
「回復プログラムが…何が起こっている!?」
「……、リボルバーの、ドラゴンが、『痛い』…!」
俺のアバターが悲鳴を上げている。
いや、アバターだけではなく、これは俺自身へのダメージだ。
LINKVRAINSのデュエルで召喚されたモンスターのエネルギーに当てられて本物のダメージを負うなんて、あり得ない。
だが現に回復プログラムはエラーを吐き出し不調を訴え、俺のアバターの損傷が増す。
こんなの、本当に俺はサイコデュエリストみたいじゃないか。
リボルバーはドラゴノイド・トークンをリンク召喚したリンク4のトポロジック・ボマー・ドラゴンのリンク先に特殊召喚し、トポロジック・ボマー・ドラゴンの効果で互いのメインモンスターゾーンのモンスターを全て破壊してしまった。
これによってデコード・トーカーの攻撃力は下がり、元通りになってしまう。トポロジック・ボマー・ドラゴンの攻撃力は3000、デコード・トーカーの攻撃力は2300。
トポロジック・ボマー・ドラゴンの攻撃でデコード・トーカーが破壊されてしまう。
(まだ、まだ立て直せるはずだ!まだ…!)
だがトポロジック・ボマー・ドラゴンの効果はまだ存在した。
――――相手モンスターを攻撃した後、相手モンスターの元々の攻撃力分のダメージを、相手に与える。
PlaymakerのLPは、削りに削られ300。デコード・トーカーの攻撃力は2300。
《――――お前の負けだ、Playmaker!》
通信の先で、リボルバーの声が嫌に、ハッキリと聞こえた気がした。
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