――――お前の負けだ、Playmaker。
リボルバーの声が、嫌に鮮明に聞こえてくる。
(いや、遊作ならば手を打っている…逆転のカウンター罠を!例えば――――)
《カウンター罠『リンク・リスタート』発動!!》
自分がダメージを受けるモンスター効果が発動した時、その効果を無効にする。
更に墓地のこのカードを除外して、墓地のリンクモンスター一体を特殊召喚する効果により、デコード・トーカーを再び場に呼び寄せた。
効果によるダメージを無効にした上に場を持ち直した。
リボルバーはそのままターンを終了し、エンドフェイズに永続魔法『ドラゴノイド・ジェネレーター』の効果でPlaymakerの場にドラゴノイド・トークンを一体特殊召喚する。
(何とか乗り切った…だがこのターンで決めなければ確実にとどめを刺される!)
決め手はスキル『Storm Access』だ。
ここに強力なデータストームは吹いていないが、強力なモンスターの鼓動を感じる事は出来る。
データストームが起きれば、そのモンスターは間違いなくPlaymakerの手に渡る。だが、その為には巨大なデータストームを起こさなければならない。
ならば使用しなければならないのは、アイの力だ。
(…だが、条件とタイミングが揃いすぎている)
まるで、それを促すような流れだ。
リボルバーが先駆けてStorm Accessを使ったのも思考に拍車をかける。
だがその思考に、一瞬ノイズが走った。回復プログラムのインストールエラーがずっと脳内で響き渡っていた。
俺の中の何かが、プログラムを拒んでいる。今までこんなこと一度もなかった。
だが困るんだ、これが働いてくれないと現実世界で死にかける羽目になる。
「!」
その時、風の流れと質が変わった気がした。
頭の中で鼓動が聞こえる。とんでもなく強力なモンスターの気配だ。まさか、アイは力を使ったのか。
間違いない、それが逆転の切り札になる。
勝機が見えた、その時だった。
《私は罠発動、『リモート・リボーン』!》
《このタイミングで罠だと!?》
リボルバーはPlaymakerが切り札を召喚する直前に罠を発動した。
『トポロジック・ボマー・ドラゴン』のリンク先にPlaymakerの墓地にいる『コンデンサー・デスストーカー』を特殊召喚させ、『トポロジック・ボマー・ドラゴン』の効果を発動。
お互いのメインモンスターゾーンのモンスターを全て破壊し、その際に破壊された『コンデンサー・デスストーカー』の効果でお互いのプレイヤーは800のダメージを受ける。
リボルバーはPlaymakerに切り札を使わせる前に相打ちに持って行った。
(何のつもりだ?逃げる様子では……!)
その時、突然LINKVRAINSの上空が輝きだした。
その輝きに吸い込まれるようにデータストームが渦を巻き、Playmakerとリボルバーの姿がデータストームに消えていく。
音声も切れてしまった。
リボルバーは端からこれが狙いだったのだ。どんな策士だ。
「どうなっている!?彼らは…!!」
「…リボルバーは端からこれが狙いだ。俺達の目の届かない所で決着をつけるつもりらしい」
「くそ…っ!ゴーストガール!彼らを追うんだ!」
《無茶言わないで!もう姿も見えない!》
ゴーストガールの音声もノイズが混じっている。
確かにこのデータストームの規模では、ゴーストガールでは追えない。
「……俺が今からそっちに向かう」
「なんだと?」
「俺があのデータストームに僅かだが抜け穴を作る。そこを通れば中に入れるはずだ」
「だがその身体で…!」
「Playmakerも命を懸けて戦っている。出来る事をせずリスクを恐れるなんて真似はしたくないんでね」
俺はそう言い残してDボードに乗り、データストームに向かった。
回復プログラムとアバターの保護機能が警告アラートを鳴らすのも無視して中心部へと向かうと、付近でゴーストガールがずっとバランスを取っているのが見えた。
すげえなあのバランス能力。見習っていきたいところだ。
「ゴーストガール!」
「Laughingpixy!?貴方どうして…!それにそのアバター…」
「皆身体だのアバターだのって鏡見るの怖いな!俺の身体はいい、今からデータストームに抜け穴を作る!―――聞こえるか!」
《おう、聞こえるぞ!デリート寸前じゃないか、また無茶をしたな!?》
「これは不可抗力だ!説教は後で聞くから、このデータストームの解析を頼む!」
草薙に繋がったのは幸いだ。
説教が飛んできそうなのを跳ね除け、こちらでも解析を始める。
《これはハノイのプログラムだ、良くできてる。だが急いで作ったのかデータにムラがあるな》
「じゃあ、彼女のディスクを起点にして抜け穴を作ってくれ。頼めるか?」
《わかった。お前はそこの姉ちゃんの誘導を頼む!》
「任された!」
草薙の仕事は早く、ものの数分で解析を終えて抜け穴を作って見せた。
ゴーストガールがその光景に目を見開く。
「ここから入れる!来い!」
「この壁に抜け穴を作るなんて良い腕してるわ!こんな状況じゃなかったらプログラム談義に花を咲かせたいところね」
「それは楽しそう * …あ *** れ?」
「…Laughingpixy?…!?ちょっと、貴方身体が…!」
《!?おい、夜鷹!?バイタル反応が、切れかけ、て―――――》
声が、聞こえない。
彼らの声や、俺の声自身も。目の前がノイズに包まれていく。
俺達が放り出されたのは不思議な空間で、その中心に座していた光の檻の中にリボルバーとPlaymakerの姿があったのを見た。
そしてゴーストガールが、血相を変えて俺に手を伸ばしているのが見える。
今の俺に何が起こっている?
目の前がノイズに覆われて見えなくなる直前に、あの光の檻から放たれる粒子が、俺の前で散ったのが見えた。
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