《……、愚かだな、Playmaker……真実も何も知らず、SOLテクノロジーに手を貸すとは!!!!》
《俺がすべきことはただ一つ。ハノイの騎士、お前達を叩き潰し全てを知る事だ!!!》

リボルバーがPlaymakerの気迫に押され一歩下がる。
怒りに呑まれようとPlaymakerは冷静さを欠かない。

《俺は墓地の『パラレルポート・アーマー』の効果発動!!このカードは墓地にあるこのカードと墓地のリンクモンスター二体を除外することで発動できる!自分フィールドのリンクモンスター一体は、このターン二度のバトルができる!!!》
《なんだと!?》
《『ファイアウォール・ドラゴン』の攻撃ッ!!》
『ヴァレルロードは破壊できないが、ダメージは受けてもらうぜ!!』

ヴァレルロードに命中した攻撃で、リボルバーは吹き飛んだ。
Playmakerが勝った。

(……ありがとう、遊作)

戦ってくれて。勝ってくれて。
俺はお前に、一体どれだけの礼をすればいいんだろう。何ができるだろう。

《さあ、お前の持っている情報を渡してもらうぞ!!》
『俺が食ってやる!!》

アイがディスクから飛び出し、リボルバーの右腕を食いちぎった。
続いて全身を喰らおうと飛び掛かった時、リボルバーが俺達の前に現れた時のように稲妻がアイとリボルバーの間を貫いた。
リボルバーの身体が浮かび上がり、空に昇っていく。
ハノイの騎士達の仕業か。

『逃げる気か!!』
《約束は守る。除去プログラムだ、受け取れ!》

リボルバーがPlaymakerにカード型のデータを投げる。
データはディスクに収まり、無事にインストールされたようだ。彼の性格からして偽物というのはあるまい。

《Playmaker。今日は私の風は吹かなかったようだ…だが!お前がそのAIとLaughingpixyを手にしている限り、このデュエルは始まりに過ぎない!》
《待て!何故pixyを狙う!!お前達の目的は何だ!!》
《……いずれ、わかる》

リボルバーの姿が完全に消える直前、奴と目が合った。
俺はどんな顔したらいいかもわからなくて、きつく顔を顰める。
完全に奴の姿が消えて、俺はこの怒りや憎しみの遣り所を失った。
…だが、ハノイの尻尾は掴んだ。


「……終わったみたいだな。Playmaker!」
「…?!pixy!」
『アレッpixy様居たの!?』
「途中から観戦と分析をさせてもらってたよ。本当にお疲れ様、ありがとう」

ゴーストガールに少し待ってもらうようお願いし、Playmakerの所に向かう。
俺の言葉に、Playmakerは先ほどのきつい表情から一転、どこかむず痒そうな顔になった。
草薙や他の奴らにはハッキリ受け答えできるのになあ。

「…俺はやるべきことをやっただけだ」
「それでも、だ。…本当に、ありがとう。お前は俺の自慢だ」

額をコツンとぶつけて摺り寄せる。
ちゃんと生きている。ちゃんと勝った。何も失っていない。

「……ああ。でも、今度からはあんな真似は絶対にやめてくれ」
「あんな真似?」
「財前晃に尋問を受けていた時、お前は嘘を吐いて俺を庇っただろう」

あの時か。あの時は、ああでもしないと共倒れしそうだったし。
それに。

「約束しただろ。10年前、兄ちゃんは絶対に、今度こそお前を守るからねって」
「……、……それでも、…お前まで、失うって思ったら…」
「…うん」
「……どうにか、なりそうだったんだ」

俺を抱き寄せる手は震えている。
デュエル中はあんなにピンと張り詰めていたのに。
本当に堂々と、良く戦っていたのに。

「お前は、俺が弱いと思う?」
「そんな事はない。pixyは強い」
「じゃあ俺の事、信じられない?俺はお前の事をずっと信じていたし、信じて来た。お前は違うのか?」
「そんなはず…!」
「じゃあ、」

目を合わせる。ペリドットとマゼンダが交じり合う。

「お前の背中を俺に預けてくれ」
「!」
「俺達は守る事にも守られる事にもきっと向いてない。だから今回みたいなことが起きた。…でも、あれはどっちも間違ってて、どっちも正しいんだと思う」

お互い守りたくて、守られたくないなんて気持ちが間違いなはずがない。
俺達は家族だ。血は繋がっていない、ただのとある事件の被害者同士で、事件以前の記憶もない者同士の。
脆い絆だと知っている。事件の事がなければただの赤の他人として永遠に知り合う事すらなかった俺達。
それでも、家族なんだ。今は。

「俺はお前の背中を預かる。俺はお前に背中を預ける。俺達は、一緒に戦っているんだろ」
「…ああ」
「アイを巡る戦いは、確かにお前じゃないと意味がない。今アイを持っているのはお前だからだ。でも、俺の事は俺が解決する。これは、俺自身の問題だ」
「……」
「そんな顔するな。俺は、お前の傍から消えたりしない。…最後までずっと一緒だ」
「…約束、破るなよ。破ったらお前を軟禁してでも傍に置くからな」
「あれっお前そんなにヤンデレの素質あった?」
『エッ怖!』

可愛い弟の眼は残念ながら本気だ。
これは弟を犯罪者にさせないことが目下の使命だな。いや、ハッカーの時点でもう犯罪者なんだけどさ。

「…とにかく、だ。まずは一旦戻ろう、ゴーストガールを待たせてる。除去プログラムをブルーエンジェルに使わないとな」
「そうだな」
『疲れた〜〜〜〜〜〜』

俺はゴーストガールに合図を送ると、その場から一旦ログアウトし、ブルーエンジェルと財前晃の待つ教会へとログインした。
そしてPlaymakerがブルーエンジェルに除去プログラムを使用し、彼女のアバターが消えてログアウトした事を確認し次第、俺達もその場からログアウトした。
色々と詮索される前に逃げるが勝ちだからな。



「――――、―――ッ、ぐ、ぁあああ…ッ!!」

現実世界に戻ってきた瞬間俺を出迎えたのは全身を貫く強烈な疲労感と激痛だった。
回復プログラムを使っても完全にフラッシュバックを消す事は難しかったみたいだ。車椅子から転げ落ち、のた打ち回りながら激痛が少しでも去る事を祈る。
いつもならこんなに痛くはないのだが、今回は流石に無理が祟ったようだ。

(…、でも、財前葵はこれで目を醒ますはずだ…)

彼女は本来ならハノイの騎士と何の関係もない筈なのだから。
一向に引かない激痛をやり過ごす為に思考を回す。痛みには強いんだ、昔から。

(…きっと遊作は草薙さんの所にいる。安否確認のメールが来てないって事は疲れて寝てしまってるだろうから、迎えに行って、それから、………それから、)

痛みに耐える時は、考える事を止めるな。
何か考えろ。考えろ。考えろ。

(……、遊作、頑張ったから、好きなもの、作ってやろうかな…なにが、いいか………)

必死に思考を回す。痛みが少しでも引くまで。
大丈夫だ、この痛みは俺を殺すものじゃない。あの子の方がずっと痛かったはずだ。
あんなボロボロになってまで頑張っていたんだ。

…耐えられない痛みじゃない。あの時の終わらない苦痛に比べたらずっと。

(草薙さんにメールを送って…遊作を、迎えに行くからって、伝えて……)

痛みが引いたら、メールを送ろう。そして遊作を迎えに行かなければ。
そう考えればこの苦痛も全部乗り切れる気がして、知らず噛み締めた歯の間から洩れる苦悶の声を耐えるべく、目を閉じた。




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