風に揉まれる。厚い風の壁が俺の身体を切り刻む。
音声をONにしても酷いノイズであちらの声が聞こえない。Playmakerの安否は不明だ。
熱い、痛い、苦しい。

そうだ。俺にとってのデュエルは、いつだって痛くて苦しいものなんだ。

凄まじい風の中で、それ自体が暴力に等しい嘶きを聞く。
――――何かが、このデータストームの中にいる?
その途端、草薙の話を思い出した。データストームの中には、未知のモンスターが生きていると。

「……、いるのか、?……そこに、誰かが」
《―――――、――――――――》
「………いるんだな、そこに…!」

新しい世界が、広がっているといったな。
ただの噂か。それでもいい。今このデータストームの中にモンスターがいる。

「手を、―――貸してくれないか」

データストームの中の、何処にいるかもわからない誰かに手を伸ばす。
すると、掌に凄まじいエネルギーが集まり始めた。熱が、苦痛が掌から波濤のように全身に広がっていく。
まるで身体が掌から細かく引き裂かれるが如き痛みだった。
それでも、手の中に集まっているエネルギーは圧縮を繰り返し、徐々に徐々にカードの形に代わっていくのが見えた。

いつだって、デュエルは苦痛だった。それは変わらない。
でも、そこで逃げちゃダメなんだ。
約束したから。

(俺は、遊作を…守るんだ。だから、絶対にもう、負けないって…!!)

誓ったのだ。
だから、俺は諦めるわけにはいかない。
今更この苦痛など知った事じゃない。

「―――引き裂きたければ引き裂くがいい!!来い!!俺の下へ!!」


―――――『Storm Access』!!!



そう叫んだ時、掌が何かを掴んだ。
そしてその『何か』が高らかに嘶いて、データストームを真っ二つに切り裂いて見せた。


俺はボードを手繰り寄せて再び飛び乗り、データストームから元の通路へと飛び出す。
後ろからついてきていたハノイの騎士は驚愕に仮面の奥の眼を見開いた。

「馬鹿な!!どうやってこのデータストームを…!」
「ここで折れてたまるかよ…!俺のターン、ドロー!!」

ドローをしたカードに、俺の勝ち筋が見えた。
天空へ手を伸ばす。あのアローヘッドが現れて、俺の身体はそこへモンスターたちと吸い込まれていく。

「アローヘッド確認!召喚条件はカード名の異なるモンスター二体以上!俺は『星杯戦士アラウム』と『神聖なる球体』の二体をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!―――リンク召喚!」

アローヘッドが強い輝きを放ち、その中からあのデータストームの中から聞こえて来た嘶きが聞こえる。
さあ、どうか応えてくれ。俺を呼んだモンスターよ。

「現れろ!リンク3、『トロイメア・ユニコーン』!!」
「トロイメア、…だと……!?」

ユニコーンはLINKVRAINSの天を突かんばかりの嘶きを上げる。
天空から疾風のように俺の下へとかけて来て、俺の前へとその姿を現した。―――美しい、ユニコーンだった。

「俺は『トロイメア・ユニコーン』の効果発動!このモンスターがリンク召喚に成功した場合、手札を一枚捨てる事でフィールド上のカード一枚を選択し、手札に戻す事が出来る…!」
「なんだと!?」
「俺が選ぶのはお前のクラッキング・ドラゴンだ!!」

クラッキング・ドラゴンが苦痛の雄叫びを上げたかと思うとその身体に罅が入り、全身が砕け落ちて行く。
ハノイの騎士の顔色が変わっていく。その伏せカードは万が一破壊された時の為の蘇生カードだろう。
バウンス効果だから蘇生も出来ず、一から召喚が必要だ。
だがこれでは終われない。

「更に俺は手札から、永続魔法『ブリリアント・フュージョン』を発動!このカードは発動時に自分のデッキから「ジェムナイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてEXデッキから融合召喚する!俺はデッキにある『ジェムナイト・ガネット』二体と『ジェムナイト・ラズリー』を融合!融合召喚!!―――現れよ!輝きの淑女、『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』!!」

これで俺のフィールド上にはリンク3の『トロイメア・ユニコーン』と『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』というモンスターを召喚できた。
しかしブリリアント・ダイヤの攻撃力・守備力共に0だ。

「―――まだだ!俺は『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』に装備魔法『巨大化』を装備!自分のLPが相手のLPよりも少ない時、装備モンスターの攻撃力は、『元々の攻撃力』の二倍となる!!」
「…………、ブリリアント・ダイヤの元々の、攻撃力は………さ、3400…」
「フ、その通り!『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』の攻撃力は、6800となる!!」

攻撃力6800という途方もない数値に、ハノイの騎士の顔色は無くなっていく。

「バトル!!―――『トロイメア・ユニコーン』で、ダイレクトアタック!!」
「ぐっぅう…!!」

ハノイの騎士のLPが満タンの4000から1800へと減っていく。
攻撃を終えて退いたユニコーンの背後に、『巨大化』を装備したブリリアント・ダイヤが白金の剣を携え、切っ先を奴へと向けた。

「ぁ、嘘だ…!クソ、そんなはずでは…!私には最強のカードが、クラッキング・ドラゴンが…!!」
「バトル。――――往け、『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』!ダイレクトアタックだ!」

彼女の剣がハノイの騎士の身体を貫いた。
彼はライフを削り取られ、ボードから転落し地へと落ちて行く。
それを冷え切った眼で見つめながら、充実した勝利の実感を胸に抱いた。

「お前にデュエリストを名乗る資格はない」

そう吐き捨てて、俺はPlaymakerの応援に行くべくボードを走らせた。




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