データストームに乗ってPlaymakerの位置情報を改めて探った。
彼のアカウントとパスが通っている為、彼の位置はGPSでわかる。反応はすぐそばにあり、その姿はすぐに見つかった。
それと同時にあちらも俺が来た事に気付いたのか直ぐに目が合った。
彼の冷ややかな視線が確かな安堵に緩んだのを見た。

「良かった、両方無事だった!異常はあるか?」
「特にない。お前の方こそ身体は大丈夫か」
「俺も問題ナシ!だいぶ疲れたけどな」

Playmakerの頭を軽く撫でて寄せる。
その一瞬の仕草だけで察したPlaymakerは俺の頭を軽く寄せて、互いの額をコツンと軽くぶつけ合う。
吐息、目線、鼓動、温度。生存確認の合図。

「今日も勝った。俺達は生きてる」
「ああ。今日も勝った。ちゃんと生きてる」

俺達が『俺達』になった時からのルーティン。
互いのマゼンダとライムグリーンの眼をしっかりと交わしてから俺達は離れる。
そんな時、『あ〜〜〜』とPlaymakerのディスクから何とも言えない音程の声音が聞こえてきた。

『お取込み中悪いけど早くログアウトした方がよさそうだぜお二方〜〜』

AIの忠告直後、二方向から近づいて来るアバターが確認できた。

「見つけたぞPlaymakerとLaughingpixy!さあ、この俺とデュエルで勝負だ!」
「随分と派手な事をやってくれるわね!さあ、観念なさい!」

アカウントを特定、GO鬼塚とブルーエンジェルだ。
何だかあちらはこちらを殺る気満々らしい。随分と殺気立ってくれちゃって。
寧ろ俺達は此処を救った側の人間なんだが。

「準備は出来てるぞ、Playmaker」
「…悪いがお前達に興味はない。行くぞpixy」
「あいよ」

俺達は素早くデータストームに飛び乗ると、そのままログアウトをした。
その過程でログを抹消する。一切の痕跡を絶つためだ。



意識が浮上する。ずっと底にいた意識が表面化し、突如それは『現実』として俺の意識を殴りつけた。
突如身体に重力が一気にかかるようなこの感覚はいつまで経っても慣れない。
ダイブは非常に肉体に負担がかかる。
まるで長時間潜水をしていたような気分だ。身体が揺れている感覚がする。

「ぁ、ぐ……!!」
「!夜鷹!」

直後、両足に電流を流されたような痛みと熱と痺れが走り、膝から崩れ落ちる。
遊作が俺の足をさする。熱が引かず額に汗が浮く。

『えっ何?結構ダメージ受けてた!?』
「黙ってろ!草薙さん、水をくれ!」
「おう!」

遊作は俺の通学鞄を引っ張ってくると、いつも俺が小物をいれている所から鎮痛剤を出した。
二錠出すと俺の口に入れ、草薙から渡された水を飲ませてくれる。

「20分もしたら効いて来る。それまで気張ってくれ」
「悪い、…いきみ過ぎた、かなぁ」
「慣れない戦闘でダメージが蓄積してたんだろう。自分で座れるか?」
「……っ、すまん、頼む」
「わかった、掴まってろ」

遊作に抱えられて車椅子まで運ばれた。
情けない話だと目を伏せたら遊作は首を横に振って「気にするな」と言ってくれた。

「っ…AI君は無事?ダメージはないな」
『お陰様でピンピン〜!そっちはだいじょぶ?その身体で無茶すんね〜!』
「草薙さん、コイツをミュートにしてくれ。五月蠅い」

遊作はモニターに向かい合いながら真顔で舌打ちした。
どうも俺は現実世界に戻ってから暫く気を失っていたようで、その間遊作と草薙はAIのプログラムの解析を始めていたようだった。

「いや遊作、今日はここまでにして一旦お前達は帰るといい」
「だが…」
「夜鷹は勿論お前にだってダメージは蓄積してるんだ、身体に負担がかかってる。それにもう遅い。今日はゆっくり休んで、明日早朝から解析の続きをした方がいい」
「……悪い、俺の足の所為で…」
「お前は悪くないさ夜鷹。お前はちゃんと夕飯を作って遊作に食わせるのが今日のミッションだ」

草薙のウインクに笑みが浮かんでくる。
そうだ、とりあえず必須のミッションはクリアしたんだ。夕飯だって仕込んであるから、遊作を休ませなければ。
遊作は何とも言えない扱われ方に何とも言えない表情をしていたものの、大人しく帰る準備を始めていた。

「『帰ろう』、遊作。俺達の『家』に」
「…ああ、そうだな」

遊作は随分と早くに大人っぽくなってしまって、その無理を覆い隠してしまう。
彼は、昔からずっと寂しがりだ。それは今だって変わってない。
寂しさを感じる事は、弱さじゃない。遊作の頭を寄せて撫でてやる。「やめろ」って言いながらも本気で振り解かないのが可愛い所だ。
その目にいつだって安堵が浮かんでいる事を、俺だけがちゃんとわかってる。



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