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轟は託されると、静かに病室の扉を閉めて鍵をかけた。
つかつかとこちらへ歩いて、先程憶田が座っていた椅子に腰かける。

「……なんで、…面会謝絶の、はずじゃ」
「お前が目を醒ましたって聞いてここに来た。…あの医師が取り計らってくれて、通してもらった」

零仔は俯いていた。
轟の顔をまともに見られるはずもなかったし、今の自分を見てほしくなかった。
こんなにぼろぼろの自分を、見てほしくはなかった。

「…全部、聞いた。お前のこと」
「…っ」
「あの時、お前がどんだけしんどい思いしてたか、10年も経って漸く知った。お前に何があったのかも、この前知った」
「…じゃあどうして、ここに来たの」

情けなくも震えていた。
恐怖や、緊張やそれ以外が身体の自由を奪っていった。

「私が、人を殺した人間だって知った上で、なんで来たの」
「お前と話をしたかった」
「私は、………会いたくなかった」
「零仔、」
「こんなざまで、会いたくなかった…!」

もうどんな面下げて向き合えばいい?
彼はヒーローを志す者、一方此方は人殺しだ。
ずっと見て見ぬふりをしてきた、逃亡犯より質の悪い。

「俺は、ずっとお前に会いたかった。…後悔してたんだ、お前の手を取ってやれなかった事を」
「そんなこと、……貴方が悔いる事じゃない」
「でもあの時のお前は一瞬でも俺に手を伸ばしてただろ」

明確に助けを求めた。その後手を伸ばす事をやめても、あの一瞬だけは確かに轟に縋ろうとしていたはずだった。
その手を取れなかったことをずっと悔いていたのだと。

「…もう、手を取れねえ人間にはなりたくねえ。だからお前に会いに来た」
「……帰って」
「!」
「…帰って。私は、貴方に会いたくないの」

向き合えない。向き合えない。
冷たく突き放す。嫌われたっていい。
彼の心を、自分なんかに裂いていい筈がない。

「…零仔、顔上げろ」
「…嫌」
「顔を見せろ」
「……嫌」
「っ、お前、」

轟が椅子から立ち上がり、ベッドまで歩み寄り、頬に触れようとした。


バシッ


「………、」

「…っ、わたしに、」


振り払った手がじんじんと痛む。
滲むような痛み、胸の痛みが、目尻を熱くした。


「わたしに、さわらないで…!」




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