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訓練四日目。
今日も今日とて個性の訓練をしている。
現在はTDLの天井付近で気流を作り、疑似的な空の状態を作成して雪を降らせているところだ。
「やっぱり、冷やす方がいいわね…得意なのかも…」
「やってるね、栂野少女!」
「キャッ!?」
「おお、ごめん」
女の子らしい悲鳴を上げることに成功した。もう親父とは言わせねえ。
オールマイトは気配を消すのが上手いな。
いや、零仔も熱中していたから周囲への注意が無かったのもあるが。
「必殺技はどうだ?」
「あー…必殺技、と言いますか。空気中の水分を凍らせて吹雪を作ったり、そこから相手の身体を凍結させる…といった風に固まっては来てます」
「ほうほう。熱の方はどうかな?」
「熱は、やっぱりちょっと危険性が高いので…中々…」
「フム…」
オールマイトは思案タイムに入った。
だがすぐに何かを思ったのか、いつもの表情に戻る。
いつも思う事だが、オールマイトは考えてから結論に至るのがとても早い。。頭の回転がとても早いのだろう。
思考に柔軟性があるのはとてもいい事だ。見習いたい。
「栂野少女、君は化学得意?」
「え?科学ですか?まあ、成績は悪くはないですけど…」
突拍子もない問いのように思うが、オールマイトは何かに至ったのだろうか。
「では物の温度はどうやって上がる?」
「…物質の原子・分子が振動するんでしたっけ」
「そう、逆に物を冷やす時は原子・分子の振動は小さくなる。君の得意な『絶対零度』状態は、それらの運動が完全に止まっている状態だ」
確かに。
個性とは超能力に近しい科学だ。
無から有は生まれないように、例えどれだけ無茶苦茶な個性でも必ず原理というものは存在する。
故に、その個性には各々『反動』がある事も。
「君は温度を自在に操作できる。つまり、元を言えば君の個性は正式には『温度操作』ではなく、分子の振動に重点を置いた分子操作、という事になる」
「分子操作、ですか……意識した事すらなかったです」
「まあその様子だと、分子振動操作が君の極端な「得意分野」だったのだろうね。だがそれ以外も出来ている様子、今君は現に雪雲を作ってこの室内に雪を降らせている」
オールマイトは天井を見上げた。
天井には厚い雲があり、そこから絶え間なく水分の多い雪が降り注いでいる。
更に気圧差を生じさせて風を吹かせば、吹雪を作ることだってできる。
「温度操作というのは分子操作において、言ってしまえば最も『雑』で『大雑把』なものだ。細かい操作ができれば君の範囲はぐっと広がる」
「……もしかしたら、温度の操作まで行かない範囲の分子操作なら…私の体温調節ができなくなるっていう反動も、解消するんじゃ…?」
「かもしれないな!」
「…!!」
視界が開けた気がした。
ずっと橋のかからなかった川の上に、細くだが渡しがかかった気分だ。
何かが変わるかもしれない。
「表情が晴れたな、少女!」
「はい!ありがとうございました、活路が開けた気がします!」
「うん、それにしてもこの雲とか雪とかすごいな!メッチャここ寒いな!」
「あ、オールマイト半袖ですし。風邪ひきますよ」
「今はスッゲー羨ましいなその個性…」
オールマイトの周囲の空気を少し温めた。
寒いのが解消されたのか、オールマイトが身体を丸めていたのをスッと姿勢を正した。
(…ん?)
空気。温度差。
分子操作。温められた空気――――
「……!」
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