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一時間後。


「……うん、こんなもんね!」


出来たかもしれない。
すごいものが。

これにより、殺傷能力のない攻撃手段と、今まで課題だった機動力、そして今まで温度操作で必ずと言っていい程ついてきて回っていた反動が解消された。

これで一気に飛躍する。
それ自体に汎用性がある上に、これができるなら他の事だって試せばできるかもしれない。

……やってみるか。移動。

(これはテスト。テスト…)

緊張するが、それを振り切って集中する。
掌で、まず超局所的に空気の層を作り、圧縮する。
圧縮した空気の中の温度を一気に上げて――――

(放つ!!)


次の瞬間、身体が押し出されるような感覚と共に零仔の視界が一気に切り替わった。
足元にあの足場がない。


「うおおお!!!???なんかスゲー音したと思ったら栂野飛んでるーーー!!!?」


上鳴の声がすごく下方から聞こえる。
それどころか、一番上の方に練習場を作っている轟や爆豪さえ遥か下だ。
すごい!人がゴミのようだ!!

(って感心してる場合じゃない、このままだと地面とアバンチュール…!!)

打ち出された身体は疾うに推進力を失くし、落下を始めている。
地面と激突まであと2秒もない。それよりも早く再び掌の上に空気の球を作り、放つ。
再び身体が打ち出された。

それを何度も何度も繰り返す事で爆発的な加速を得られる。ご覧の通り空だって飛べる。

温度の操作と分子の操作を綿密に行う事で可能な空気の爆弾だ。
圧縮された熱された空気が破裂する事で、身体が一気に打ち出され、それで空を飛ぶ。
空気なので攻撃力こそあるが、それ自体に殺傷能力はない。
しかも空気のある場所にならどこでも作れるため、実質飛び道具としても扱える。

断続的な小さな爆発を緩衝材にして地面に着地した。
テストは成功だ。
上鳴と切島が駆け寄ってくる。二人とも目が輝いていた。

「すっげーじゃん栂野!!爆豪みたいな動きだったな!!」
「正直に話すと彼を参考にしたわ」
「ああ!!!?パクってんじゃねーぞロン毛!!!」
「参考にしたって言ったでしょ!!!!!」
「何気に仲良いよなお前らって」

切島、それは本気で言っているのか?だとしたら君はすごい。
それにしても、あの動きを入学当初からやっているのを考えると爆豪は本当にセンスの塊だ。

(追いつかなきゃね…)

彼のように『天才』にはなれないけれど、凡人には凡人なりの矜持がある。
もっとたくさん考えて努力をしなければ追いつけない。

「さて私は練習場に戻るから、切島くんと上鳴くんは離れた方がいいわよ」
「え?何で?」
「私のコレ、爆豪くんのと違って空気の爆弾だから、衝撃波凄すぎて多分貴方達吹っ飛ばされちゃうわ」
「マジかよ…」

そう言われて割と遠くに離れてくれた。
皆と奥にいる事を確認して、掌の再び空気の爆弾を作り、破裂させる。
凄まじい爆発音と衝撃波と共に身体が打ち出された。まるでミサイルのようだ。
地面にはその衝撃を物語るようにくっきりとクレーターが刻まれている。しかしその一発で綺麗に練習場まで到着できた。

「すっげえのが出来たな」
「でしょ?まだあるのよ」
「マジか」
「マジよ」
「は、負けてらんねえな」

上から轟が素直に驚いたような声をあげる。
彼も試行錯誤はしているようで、両腕から炎と氷が噴き出していた。
今はライバル。互いに鎬を削り合う仲だ。

(一緒に夢を追うって、こんなにも楽しいのね)

儘ならないのも、それが形になった時の歓びも。
だから、もしもその夢に手を掛ける日が来たら――――その瞬間の歓びは一体、どれほどのものなんだろう。

まだまだやる事はたくさんある。
無駄に使える時間はない。

そう意気込んで、今度は別の新技の試行錯誤に意識を集中させた。




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