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そんなこんなで訓練を重ね――――


ヒーロー仮免許取得試験、当日。




零仔達を乗せたバスがやっと止まった。

「降りろ到着だ。試験会場、国立多古場競技場」

全員迅速にバスから下車した。
零仔も迅速に下車する。零仔とてA組、相澤軍隊の一人だ。

「緊張して来たァ」
「多古場でやるんだ」
「試験て何やるんだろうハー仮免取れっかなァ」
「峰田、取れるかじゃない取ってこい」

相澤の言葉に峰田に気合が注入されたようだ。
本当に軍隊みたいだな、ここ。
しかし緊張は皆に広がって行っている。ここで賑やかし役上鳴が、「いつもの一発決めて行こーぜ!」と円陣を組むことを提案して来た。
そこに切島も乗っかれば、皆の空気も引き締まるというもの。
乗れるもんには乗っとくか、と零仔も参戦する事にした。


「せーのっ、『Plus……』」


『Ultra』!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「!!?」


ボッ、と風が吹くような声の圧力に押し出される。
こ、この微妙に耳元で聞き馴染みのある声…!!


「勝手に余所様の円陣へ加わるのは良くないよ、イナサ」
「ああ、しまった!!どうも大変!!失礼!!致しましたァ!!!」

(((ヒィイ!!!)))

胸を無駄に張り、腰に手を当て、そして仕上げは地面に向かって強力な『お辞儀』。
締めはその音だ。絶対血が出てんだろそのデコ。
なんて一回一回の動作を過剰に大切にした『お辞儀』なんだ。最早威嚇にも思える。こんな相手に圧を与える『お辞儀』見た事ない。絶対子供に真似させちゃダメだぞ全国のお母さん。

「何だこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」
「飯田と切島を足して二乗したような…!!」

なんて正しい例えなんだ瀬呂。
そうだ、この飯田と切島を足して二乗したような奴を、零仔は知っている。
集合し始めた他校の生徒は、その制服を見てざわつき始めた。

「『東の雄英』、『西の士傑』」
「数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵するほどの難関校――――『士傑高校』!!」

士傑高校。零仔とてその名を知っている。
有名ヒーローの中で、雄英と同じくして士傑出身者は多くいる。
此のトップ校同士の集いだ、他の学校がざわつかないはずがない。
そしてまだ地面に頭をめり込ませたままのミスター・前のめり、勢いよく頭を上げた!血!!

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分雄英高校大好きっス!!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!!!よろしくお願いします!!!!」
「う、おお…」

思わず漏れてしまったドン引き声にミスター・前のめりが反応した。
ギュルン!!と効果音が聞こえる気がするようなキレのある方向転換で零仔を捉えた。
正直言って怖い。そうだ、彼こんな人だった。

「おお栂野!!とっても久しぶりだ!!元気そうで何よりだ!!!!」
「電話の二割増しで五月蠅い気がする…士傑の制服すごくあの…似合ってるね…夜嵐くん…」
「ありがとう!!!!栂野も雄英の制服とても似合っているな!!!!!!」
「すごく大声量のお褒めありがとうね………あと、血…夜嵐くん、血……」
「血!?平気だ!!好きだ、血!!」
「そ、そう……」

気圧されている。手を取られて豪快な握手、腕がちぎれそうだ。
そして背後の皆(特に轟)の視線がものすごく痛い…!!

「…夜嵐イナサ。ありゃあ強いぞ。昨年度、つまりお前らの年の推薦入試。トップの成績で合格したにも拘らず何故か入学を辞退した男だ」
「え!?じゃあ一年!?」
「あー、だから栂野とも知り合いなのか。栂野も推薦だしな」

解説してんじゃねえよ。腕ちぎれかけてんだよ。
すると士傑のすごい毛深い(というか最早全身が毛。モリゾーみたい)人が夜嵐を連れて行ってくれた。
試験前に肩が死ぬところだったぞ。おま。

「雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴るってよくわかんねえな」
「ねー…変なの。栂野知り合いっていうかほぼ友達みたいな感じだったけどなんか知らない?」
「あー…うーん、それが私にも分からないの。聞いても教えてくれなかったけど、譲れない何かがあったらしいわ」
「ほーん…」

肩を回して調子を戻しながら知っている事は答える。
友人とはいえライバルだ。知っている情報は共有すべきだろう。ほぼ有利なものは何も持ってはいないが…

「…彼は、すごく強いわ。本当に。…特訓前の私なら手も足も出なかったでしょうね」

彼の個性の前では、どんなに温度を操作しようがブチ当てられたらそこで終わりだ。
だが今は違う。



「でも『今』は対等よ。絶対目にもの見せてやるわ」




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